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3-23

ドロシー宅 ディークニクト


 外で立ち話もという事で、俺達はドロシーの家に案内された。

 外観は長い年月放置された朽ちた見た目だったが、内部は保存魔法をかけていたのか、綺麗なままだった。


「ちょっと、そこの女エルフ! 靴は脱いでから上がってよね!」

「え? く、靴を脱ぐのか!?」


 まぁ純和風の建物だから当然なのだが、エルフとして育っていたシャロがそんなルールを知るわけもない。

 ちなみに俺は、しれっと靴を脱いで上がっている。

 そんな俺の様子を見て、シャロは少し恨みがましい視線を送ってきた。


「全く、田舎のエルフはこんなことも知らないのね」

「な、何よ! そんな事知らないわよ! こっちはいっつも靴履いて生活してるんだから……」


 若干言葉尻が弱くなったが、確かにそうだ。

 常識が違うのだから、ある程度仕方ない。

 そんなやり取りもありながらも、俺達は居間に通された。

 かつて俺が、イグサで作ってもらった畳が敷き詰められた部屋。

 木のテーブル。

 当時は貴重な紙を使って作られた障子。

 どれもが懐かしい。

 恐らく彼女は、ずっとこの家の中を守るために住んでいたのだろう。


「で? 話があるそうだが何の用かしら?」

「実はドロシーさんに……」

「ドロシーで良いわ」

「では、ドロシーにお願いがあってきたんだ。俺のところに来て欲しい」


 俺がそう言うと、彼女は瞑目して持ってきていたお茶をすすった。


「……そうね、条件を先に聞こうかしら?」

「条件は、君の好きな研究施設を作るというのはどうだろう? そしてその施設の長として活躍してもらいたい」

「その代わりに戦えと?」

「あぁ、そこは申し訳ないがお願いしたい」


 俺がそう言うと、再び彼女は瞑目してお茶をすすった。

 どれくらいの時間が経っただろう。

 ゆっくりと目を見開いて、おもむろに話しだした。


「研究施設、途方もない金額になるわよ?」

「今すぐ全てを揃えるのは難しいが、徐々に施設、設備共に揃えていくことは約束する。研究過程で出たものを貰えると、こちらとしては楽なんだけど。どうかな?」

「相変わらず馬鹿正直ね。まぁ良いでしょう」

「それじゃ……」

「ただし、できる限り私は戦わない。今回以降は、最悪の場合でしか手を貸さない。それでいいかしら?」


 とりあえず、目の前の危機を回避できるならありがたい話だ。

 俺は、その条件を快諾した。


「まぁ、契約成立って所ね。後で書面に書いてもらうから。あぁあともう一つ、今日は荷造りがあるからゆっくりとしていきなさい」


 そう言うと、彼女は部屋を出て行った。

 部屋で二人だけになったのと同時に、シャロが小声で訪ねてきた。


「ねぇ、本当にあの魔女にそんな価値あるの?」

「シャロ、彼女の力は知ってるだろ? 世界で五指に入る実力がある。それにさっき結界魔法なんて離れ技を一瞬でかけたじゃないか。十分すぎるよ」

「それは、そうだけど……。あとあのドロシーって人と知り合いなの?」

「えっと、まぁ、昔ちょっとね」

「ふ~~~~ん」


 あ、完全に疑ってかかっている目だ。

 ただ、前世の話なんてしてないから分からないだろうし、何とも言えないからな。


「まぁ良いわ。とりあえず、ドロシーは仲間になったって事よね?」

「あぁ、そうなるね。後は、彼女が欲する研究施設を徐々にでも整えないとな」

「どれくらいの金額になりそうなの?」


 興味本位で聞いてきたシャロに、俺がだいたいの予算を伝えると、彼女は絶句していた。

 まぁそうだろう。

 キングスレーにある城と同規模の物を、2つは建てられる金額なのだから。


「かなり高い買い物ね……」

「必要経費という事でクローリーには言っておこう」

「あいつ、また頭抱えるわよ」


 そんな話をしていると、ドロシーが準備を整えたのか戻ってきた。


「今から料理をするから、そこの女エルフ手伝いなさい」

「シャロミーって名前があるんですけど?」

「分かったわ、女エルフ」

「分かってないよね!?」


 なんやかんやと言いながら、シャロはドロシーと一緒に食事の用意をしに行った。




 その後、3人で料理を楽しみ就寝前となった時、ドロシーが俺に話があると言ってきた。


「で、話というのは?」

「どうして記憶を持ったまま転生したのか、何が起こったのかを知りたいのよ」

「何が起こったって何のことだ?」


 俺がそう言うと、彼女は俺の方を睨んできた。


「あの後よ! あんたが前世で王城へと連れて行かれた後のこと!」

「あぁ、その時の事か。正直あまりいい話ではないぞ?」

「えぇ、構わないわ。あの時代に一緒に生きていた者として知っておくべきことだから」


 彼女にそう言われて、俺はポツポツと過去の事を、前世の事を思い出しながら話し始めた。


次回更新予定は8月25日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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