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3-17

内政回です。

ベルナンド ディークニクト


 第一王子との戦いから数日後、体も回復した俺はベルナンドで施設工事を行っていた。

 特に海上の交易を担う港の整備は急務だった。

 俺は、クローリーと内務官たちを集めて対策について話し合った。


「まず第一に、しゅんせつ工事だ。河からの流入があるから、下の土砂が溜まらない様に土を掘りだす」

「掘り出すのは構いませんが、どうやってそれを行うのですか?」


 俺が方針を出すと、クローリーが方法を聞いてきた。

 確かにしゅんせつ工事は、言うは易し行うは難しと言える工事である。


「その方法だが、流石に港を閉鎖するわけにはいかない。だからといって、川から流入する土を放置しては港が埋まってしまう。ここまでは良いな?」


 俺が辺りを見回すと全員が頷いた。


「でだ、その土をどうにかしなければならないのだが、その為には適時しゅんせつを行うしかない。これまでの方法はどうしていた?」


 俺が尋ねると、一人の内務官が資料に目を落としながら説明を始めた。


「これまでですと、船から管をつないだヘルメットを被って下におろして、土を袋に入れさせて回収していました」

「それで、1日どれくらい掘れた?」

「一日ですと、潜る者の体力にもよりますが……、土嚢ですと十数袋くらいですね」


 そう言いながら見せてきた土嚢は、だいたい30キロ入る米袋くらいの大きさだった。

 それが十数袋、一日300キロとちょっとくらいというところか。


「流石にそれだと追いつかないんじゃないか?」

「そうですね。確かに追いつきません。以前は年に2回ほど大規模なしゅんせつを行ってどうにかしていましたが……」

「大規模とはどれくらいだ?」

「人数にして、延べ1万人ほどですね。この街で働く成人の男で全てを集めて、小舟に分乗して作業をさせました」

「それでどれくらいの袋がいっぱいになった?」

「その時の1回のしゅんせつで約1000を超える袋が満杯になったと記憶しております」


 その辺は資料が無いのか……。

 まぁ、資料を作るように指示を出し始めたのはここ最近だ。

 以前はそこまで細かく資料を作っていなかったからな。


「そうなると、大規模なしゅんせつをしないといけないな。特にここを奪うときに多数の船を沈めたから、その残骸も撤去しなければならない」


 そう、現状港の半分が沈没船によって塞がれているのだ。

 幸い、もう半分が大丈夫なのでなんとかなっているが、このままだと収益は下がっていってしまう。


「まずは、街全体に触れ回ってくれ。あと、少量ではあるが報酬も考えておいてくれ。それがあるとないでは大きく変わるだろうからな」

「報酬ですか? どれくらいを設定したらよろしいですか?」

「大体は、銅10枚くらいでどうだ? 万の人間が集まっても大丈夫か計算してくれ。使える分を超えるようなら、調整をしてできるなら、5枚以上は払えるようにしてほしい」


 銅10枚だと、こちらの価値で大体安宿1泊と食事一回分くらいの価値になる。

 まぁちょっと安いが、今回は港の機能回復を目的にしているから、その辺りは理解を期待するしかない。

 そう思って、高札を掲げ、街中に触れ回った。



 工事当日、港はこれまで見たことも無いような人で溢れかえっていた。


「クローリー、これいったい何人居るんだ?」

「えっと、こちらは全て受付を済ませた人たちですね。人数が、集計段階で1万とんで、4百人ほど居ますね」

「えっと、受付ってまだやってる状態か?」

「そうですね、随時行っていて……、今来た途中集計で既に1万5千人を突破しましたね」


 いやいやいや、それなりに来るって予想はしてたけど集まり過ぎだろう。


「クローリー、何が原因でこんなに集まったんだ?」


 俺がそう彼に問いかけると、彼は俺の方を見て呆れていた。

 いや、そんな目をしないでくれ、俺も何となく予想がついているから。


「やはり、給金の件か?」

「まさしくその通りですね。基本的に労役に給金はありませんからね。しかも、頑張れば後日に成果が一番の者に追加報酬を払うとなれば、恐らくこれ以上集まるでしょう。まぁ、何はともあれ、開始前の注意と挨拶をお願いします」


 そう言って、クローリーはコルクで作った耳栓をした。

 俺の近くで拡声魔法を聞くと、耳が痛くなるからだそうだ。

 俺は咳ばらいをしてから、口元に魔力を集中させた。


「さて、本日集まってもらった諸君! これより港に沈没している船の残骸を回収してもらおうと思う。小型船に乗船してもらうのだが、定員は4名までとする。その4名でチームとなり、沈没船の回収を行ってくれ。成果が高かったチームには、後日報酬を用意する予定なので張り切ってくれ。ただし、これから説明する注意事項は守る事」


 俺がそう言うと、後ろから木の板が掲げられた。


「1つ、4人一組となったら全員で帰ってくること。2つ、他のチームの妨害をしたものは、即刻報酬取り上げ今回の作業を中止させる。以上の2点を守って頑張ってくれ! では、係の誘導に従って移動を開始せよ」


 俺がそう言うと、係が一斉に集団に駆けつけ、指示を出し始めるのだった。


次回更新予定は8月13日です。

今後もご後援よろしくお願いいたします。

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