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3-2

エルフの森近郊 ディークニクト


 何日かかったか分からないが、ようやくエルフの森近郊に移送された。

 これからエルフの森へと入るのだろう。

 迷いの霧は、エルフが通っても発動するので事前に矢を打ち上げる習わしがある。

 矢には必ず赤い布を巻き、真上に打ち上げるて合図を送る。

 すると、合図を受けた見張りが魔法を一度止めて、入れるようにするのだ。


「エルフの森の近くか。クローリーが攻めてきてからもうすぐ半年くらいか。意外と早いもんだったな」


 そう呟きながらも、悠久と言って差し支えないくらい長い寿命なので、あまり気になる日数でもない。

 俺がそんなことを考えていると、護送車の外から声をかけられた


「ディークニクト、これよりエルフの森へ入る。お前にはしばらくの間エルフの里で謹慎を命じられるだろう」

「しばらくってどれくらいですか?」

「恐らく50年ほどだろう。なに、一瞬だ」


 出たよ、エルフの時間感覚の無さ!

 50年も待ったら、せっかくここまでやってきた事が全てパァになってしまう!


「それは、長老たちが言ってたのですか?」

「いや、長老の一人が私に言ってきた事だ。だから今後もしかすると変わるかもしれないな」


 うわぁ~、一番最悪な話じゃないか。

 恐らくイアン先生が、一番穏健な長老から聞いてそれなのだろう。

 という事は、下手すると永久に閉じ込められる可能性すら出てきた。


「イアン先生、ここらで俺が逃げたって事にして護送止めませんか?」

「逃げても居ない奴を逃げたとは報告できないな」


 うぅ、やはり堅物だ。

 強行突破ならできると思うんだが、如何せんイアン先生には借りがある。

 流石にここで強行突破しては、イアン先生に仇で返すことにしかならい。


 かつて、この里に一人の里長が居た。

 閉鎖的なエルフの社会にあって、開明的で外の世界に非常に興味を持った人だった。

 その人は、俺達次世代の教育にも真剣に取り組んでいた。

 その一つが、軍事訓練だ。

 若い世代を中心に、いつ敵が来ても良いように弓術以外に戦略戦術を身につけさせようとしていた。

 ただ、そのやり方はかなり極端で急進的だったのもあり、長老から批判が相次いだ。

 そして、前任の里長は長老たちによって亡き者にされた。

 もちろん、確たる証拠なんて無い。

 漠然とした状況証拠でしかないが、彼らが殺したと俺達は思っていた。

 そして、次に危なかったのは、俺達次世代だった。

 前任の里長の教えは、俺たちの世代に浸透していた。

 その為、長老たちは俺達を危険視しており、何か起こった瞬間消そうと考えていたようだ。

 そして、そんな時に俺達を教える事になったのが、イアン先生だ。

 彼は前任の里長の教えを部分、部分で継承しながらも、俺達が間違いを起こさない様に言い含めていた。

 もちろん、俺達も馬鹿では無いので、危ない橋は渡らない様にしながら力をつけていた。

 まぁ、そんなに賢い連中ばかりでは無いから、イアン先生が居なければ恐らく暴走していた奴が居てもおかしくなかったのには変わりない。

 そういう意味で、イアン先生は俺たちの恩人なのだ。


「さて、ディークニクト。里に着いたので降りろ」


 俺が考え事をしていると、イアン先生が外のカギを外して扉を開けてきた。

 護送車から出た俺が見たのは、いつも通りのエルフの里の風景だった。

 木々の上に建てられた家々、少し離れた場所にある畑、そして木々から出る濃い空気。

 どれをとっても懐かしい。

 そして、そんな景色の中俺は手と足に枷をはめられた。


「……イアン先生? これでは罪人にしか見えないんですが」

「査問会からの要望でな、終わるまで拘束を解くことはできない」

「要するに俺を罪人として裁くという事ですか?」


 イアン先生は首を縦に振って肯定してきた。

 これは、結果ありきの査問会かもしれないな。

 いや、元から査問会の形をとった単なるリンチだな。


「ディークニクト、行くぞ」


 イアン先生はそう言って、俺の手を拘束している鎖を持って歩き始めた。

 全く、いい気分じゃないな。

 しかもこの鎖、ご丁寧に魔封じまで施してやがる。

 ここまでするかよ……。

 そんな事を考えながらも、俺は査問会が開かれる場所へと入って行った。




エルフの里 ビリー


「ディークニクト殿が連れて行かれるのと同時に、拙者も入ってみたが……。エルフの民とは、また不便な場所に家をつくる種族なのだな」

 

 なにせ、拙者の目の前に広がっているのは、ツリーハウスと呼ばれる木の枝を利用して建てられた家だ。

 ただ、普通の家とは違い階段がどこにも無いのだ。

 

「確かにエルフの種族魔法である風が使えれば大丈夫だろうが、子どもなどのまだ魔法が使えない子は運ばれるしかないとは……」


 やはり考え方の違いというものをまざまざと見せつけられる。

 拙者たち狐人族は、子どもの時から激しい生存競争の中に放り込まれ、力無い者は死に絶えるだけだった。

 水は無く、食料も乏しく、仕事は暗殺くらいしか無く、失敗すれば我らの責任で誰かが死ぬ。

 それが狐人族の世界だった。

 それに対してエルフは、水は豊かにあり食料も豊富、親が子の面倒を見る余裕すらあるという。

 理不尽なくらい差があると言っていいだろう。


「さて、主たるディークニクト殿からの依頼は、主を守れだけだったな」


 拙者は、主が連れて行かれる先を気配を消しながら追うのだった。


次回更新予定は7月11日予定です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。m(__)m

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