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2-20

リザルト回です。

あと、第三部に次から入ります。


ベルナンド ディークニクト


 ロードスの拠点を制圧した俺達は、その足で港へと向かった。

 ケインとガスの二人が、足止めと物資補給の邪魔をする為に船底に穴をあけていたはずだった。

 しかし、俺達が到着した時には航行不能となった補給艦1隻、駆逐艦2隻と小型走舸が10隻ほど残骸を浮かしているだけだった。


「シーブックは逃げたか」


 どうやら、街の様子を遠目に見て判断したようだ。

 しかし、そう考えるとかなり早い段階で見限ったことになる。


「シーブックは元々海賊ですからね。海には魔物も多いですから、不利を悟ったら即離脱が基本です」

「魔動力があってもか?」

「えぇ、あれはあくまで帆船の補助でしかないですからね。残念ながらあれ単体では長距離航海は不可能ですよ」

「なるほど」


 俺が納得していると、クリスティーが不思議そうに俺の方を見ていた。

 

「ん? どうかしたのか?」

「あ、いえ、魔動力もあまりご存じないのに、船の構造にはそれなりに理解があるように見えたので、少し不思議だなっと思いまして」

「魔動力は、残念ながら俺達の里には無いものだったからな。……ってこれじゃ答えになってないか」


 俺が、どう言えば良いだろうと悩んでいるとクリスティーが「僭越ながら」と前置きをして説明を始めてくれた。


「魔動力とは、言葉通り魔力を動力、動く力に変える装置の事です。我が社の河川用の船も魔動力で河を上ります」

「聞く限りでは結構便利な物だな」


 俺が相槌を打つと、クリスティーも頷きながら「ですが」と続けた。


「この魔動力、実はとんでもなく燃費が悪いんです。ここから河を上ってベルナンドまで行くにしても、乗組員15人全員の魔力を交代で注ぎ続けてやっとなんです。ちなみに船は乗組員10人を想定している物での話です」

「そう聞くと、かなり燃費効率が悪いんだな」

「えぇ、ですが魔動力は一瞬の加速力という意味では、帆船の数倍の速度があります。特に停泊してからの最高速度までの加速は、かなり差ができます」

「なるほど、魔動力は加速装置なんだな」

「えぇ、魔動力の認識としては間違っていないです。まぁ魔動力は風が無い時や、帆が張れない時に使う補助装置でもありますけどね」

「なるほど」


 確かに、向かい風の時に離脱しなければならないなら、魔動力は便利という訳だ。

 だが、これだけの動力を出せる装置なんだから、他の物にも応用されていてもおかしくはないはず。

 そう思って、俺がクリスティーに尋ねると、彼女は若干困ったような顔をしながら話始めた。


「……実は、魔動力の開発者であるマジッククラフトマイスター、通称MCMなんですがこの魔動力を製造はしてくれるのですが、船以外への設置方法を教えてくれないそうなんです」

「それこそ研究者が必死に解明したりしそうだがな」

「そこもMCMに禁止されてまして、解体しようものなら即爆発する様に仕掛けられているみたいなんです。おかげで、過去数百年くらいで何百という爆破事故が起きているんです」

「意外と物騒だな、その仕組みは、……って数百年? 誰が作っているんだい?」

「えっと、確か勇者シマヅと一緒に戦ったと言われる、ロッジーナ様だったような」


 魔女ロッジーナかよ!

 俺がここに転送された時に、見つけてくれた奴だ。

 あいつまだ生きていたのか。

 

「ちなみにロッジーナってのは、まだ生きているのか?」

「そんなの分からないですよ。最高機密らしいので、私が知っているのも噂話程度です。というかここまでの情報も亡き父が収集していたのもが大半です」

「なるほど、いや参考になったよ。ありがとう」


 俺が何気なくお礼を言うと、彼女は少しはにかんだような笑顔を見せながら恐縮していた。

 そんな彼女を眺めているのもいいのだが、後処理が残っている。

 戦利品は、ロードスのため込んでいた財産をと思ったのだがそちらは一切無くなっていた。

 おそらく捕虜が言っていた、怪しい目をした男が持って行ったのだろう。

 それ以外の物も、食料品が主で正直日持ちしない物がほとんどだった。

 恐らくシーブックのアルメダがロードスの資金にならない様にと苦肉の策で行ったのだろう。

 ちなみに、ロードスとシーブックの両商会の倉庫にはそれなりの物資があったので、こちらは接収しておいた。

 まぁ大半はこれからここを治めるエイラたちシルバーフォックスと、クリスティーたちリバー社の建て直し資金や手付金といった形になる。

 ちなみに、この山の様な物資を前にした時、エイラは目を輝かせながら、


「ディークニクト殿! こ、こんなに貰って良いのか!」


 と大興奮していた。

 流石に全部は渡せないが、半分くらい置いていくと言ったら、小躍りしていたくらいだ。

 最初会った時は憮然とした表情で、あまり喜怒哀楽の無いタイプかと思っていたのだが、結構見ていて面白いくらい表情は豊かだ。

 それに、最近は耳を隠すように被っていたフードも脱いでいることが多い。

 もちろん、任務の時には目立つからと被って行動しているが。


「さて、後は湾港の整備をして、少しでも水深の深い場所に港を建設して……」


 俺が、今後の港運用や整備の計画を立てようと考えていると、一頭の早馬が駆け込んでくるのが見えた。


「ディークニクト様! ディークニクト様はどちらにいらっしゃいますか!?」

「俺はこっちに居るぞ!」


 何か急報があったのだろうかと傍によると、使者は俺に一通の手紙を差し出してきた。


「エルフの里からの呼び出し状とのことです。至急キングスレーにお戻りください」


 里からの呼び出し状……、あまり良い予感はしなかったが、俺は最低限の人員を配置してベルナンドを後にするのだった。


次回更新予定は、7月5日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。m(__)m

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