2-13
本日2度目の更新。2‐12 が本日最初の更新分です。
まだの方はお戻りください。
キングスレー ディークニクト
さて、エイラたちからの報告がある程度入ってきた。
敵は、どうやら街の中でのゲリラ戦を展開するつもりらしい。
「さて、どうしたものか。要所要所に兵を配置してこちらを消耗させようという狙いが見えるな」
地図上に見えるのは、建物の配置図と敵の防衛ラインの線だ。
残念ながら、敵の戦力配置まではまだ分からない。
ただ、見ただけでざっと20か所はあるので、厄介だということだけは分かる。
「カレド、この要塞と化した街を君ならどう攻める?」
俺は、目の前で一緒に作戦を考えているカレドに話を振った。
「……そうですね、この一見無秩序に見えるルートをどこかでまとめられないですか?」
「まとめる?」
「えぇ、例えば、数的有利はこちらにあるので、二つの部隊に分けてしまって、合流地点を決めてそこまで一気に攻めあがる。とか」
ふむ、なるほど確かにそれは有効かも知れない。
だが、気になる点があると言えばあるのだ。
「確かにそれだと敵の拠点は潰せる。だが、代わりにオーガが出てきたときの対処はどうるすんだ?」
「そこなんですよね。どうしても相手のオーガが怖いんですよね……」
カレドはそう言って、一瞬無言になったかと思うと、俺の方をじっと見てきた。
おいおい、まさかと思うが……。
「ディーに一隊、アーネットに一隊ならチャンスがあるのでは?」
「おいおい、それだと俺の部隊を動かす奴が居ないぞ。アーネットはまだ別の奴を指揮官にするから良いけど」
「そうなったら、部隊には遠巻きに見てもらうか、周りの敵をやってもらいましょう」
俺が至極真っ当な理由で反論すると、カレドはこれでもかというほどにこやかな笑顔で無茶を言ってきた。
いや、確かに現状多少落ちるとはいえ、アーネットに匹敵するのは俺くらいだ。
キールの爺さんが居てくれたら楽だったが、生憎爺さんはセレス王女の元に戻った。
まぁ貸出期間が終わったと思えばいいのだが、おかげで武芸達者が少ないのだ。
「あ~あ、キールの爺さんがいてくれたらな~」
「まぁそこら辺は仕方ないですよ。ウォルクリフにもロンドマリーを守護してもらっていますからね」
正直、ウォルはそこまで武芸に関しては期待していない。
軍の指揮能力に関しては、うちの若手を差し置いて、最も果敢で最も手堅い指揮をしてくれるので、安心できる。
その辺りは、適材適所というものがあるから仕方ない。
「それじゃ、ディーが一隊。別動隊にアーネットを入れて編成しましょう。部隊を分けるという愚策ですが、今回は致し方ないですしね。」
「うぅ……、お前楽しんでるだろ?」
俺が恨めしそうな眼を向けながらカレドに文句を言うと、彼はニコニコとしながら「いつもの仕返しです」と言ってきた。
確かに無茶振りもしているが、辛いぞこっちは。
「あと考えておかなければならないのは、オーガの数ですね」
「そう易々と何体も出てきてほしくないな。あれは一体狩るのも大変だ。それこそアーネットくらいの力があれば力で対抗できるんだが……」
オーガは鋼の肉体を持っている反面、その大きすぎる体ゆえに動きが鈍重なのだ。
まぁ、大抵の奴はオーガの力に屈して、体が消し飛んでしまう。
「一体ならどうにか対処できるが、複数体同時に来られると、流石に俺でもきついぞ」
「……一体ならどうにかなるって時点で貴方も大概ですよね。普通のエルフはオーガを相手にするのに5人以上で戦うのが基本ですよ」
む、まるで俺がエルフじゃないみたいな事を言われてしまった。
エルフじゃないというのは、アーネットの事を言うと思っていたのだがな。
「まぁ、体つきがおかしいですからね。アーネットは見た目に分かるくらい隆起した筋肉がありますし、ディーは一見普通でも筋肉がおかしいですからね」
「そりゃ、毎日魔法を使ってトレーニングしてるからな」
俺が毎日やっているのは、筋力トレーニングとして全身の筋肉に微量の電気を流しているのだ。
前世の時に見た低周波パッドのお手軽版と言ったものだ。
ついでに空気量を調整したり、加圧して結構無茶なトレーニングを毎日していた。
そのおかげもあって、全身の筋肉がピンク色という未知の領域に入ったのだ。
「全く、ピンク色って何ですか? 前にディーが開いていた勉強会では、体の筋肉は基本的に赤筋か白筋の混合だって言っていたのに。自分はピンク色ですって」
「ピンク色の筋肉はな、無駄を極力排さないと出来上がらないんだ。まぁそれだけやってもアーネットには力比べで勝てなかったけどな」
「まぁ彼の場合は、身体強化の魔法で体に結構無茶なトレーニングさせてましたからね」
俺達の話が若干作戦からそれていたところに、エイラたちからの報告が入ってきた。
「ディークニクト殿。ベルナンドの報告が入りました」
そう言って差し出された紙に書かれていたのは、敵の増援の情報だった。
俺はその情報を読み切ると、カレドにも読むように差し出した。
「……オーガの増援!? 何ですかこれ! 誤情報じゃないでしょうね!?」
「叫びたいのも否定したいのも分かるが、彼女たちからの情報だ。信頼に値するだろう」
俺がそういうと、カレドはゆっくりと天を仰いだ。
何せその紙に書いてあったのは、「オーガ5体の増援を確認。合計で6体以上居る可能性が高くなった」とあるのだ。
「こうなると作戦を考え直さないとな……」
「そうですね、隊を分けることが危なくなりましたからね」
俺達は細く真っ直ぐな道を見ながら、悩むのだった。
今後もご後援よろしくお願いいたしますm(__)m




