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2-4

キングスレー クゾー


 何やら領主が儂の周りで画策している様だ。

 恐らく儂の蹴落としを考えているのだろう。


「さてはて、どうしたものか……。奴の近くには面倒な奴が多い」


 特にアーネットとかいう奴は、あの巨体に見合うだけの武勇を持っているとか。

 領主を暗殺などで排除しようにも奴が居ては、こちらのリスクが大きすぎる。

 

「どこかに暗殺を請け負ってくれる奴らは……」


 そこまで考えた儂の脳裏に、一つの団体が思い浮かんだ。

 政治の世界とは表裏一体。

 裏社会の人物の名や名声も聞こえてくるもので、特に使い勝手のいい奴らを思い出したのだ。


「確か、金を払えば何でも請負、失敗もほぼないという。賭けてみる価値はあるな……」


 そう考えるや否や、儂は奴らへと手紙をしたため従者に持って行かせた。

 数日後、返事と一緒に従者が奴らを連れてきた。

 そう、シルバーフォックスという裏社会きってのやり手を。


「遠いところをご足労願ってすまなかった。儂の名前はクゾー。この地の内務官長をしている」


 儂が最大限の敬意を示すために名を名乗り、奴らに勿体ないくらいの笑顔をくれてやる。

 そうして、奴らを部屋へと案内して驚いた。

 確かにシルバーフォックスの紋をつけた者たちなのだが、全員が狐人族なのだ。

 また、亜人かと儂は内心悪態を吐いたが、そんな事はおくびにも見せずに話を続けた。


「今回君たちに願うのは、領主の暗殺だ。奴がこの地に来てから儂ら宮仕えはどんどん追い込まれておる。領主をやってくれたのなら、褒美はたくさん用意すると約束しよう」

「……言い値って事で良いのか?」


 それまで一切何もしゃべらなかった狐人族の女が声を出した。


「あぁ、構わん。仕事を完遂してくれたのなら、しっかりと払おう」

「……相手の実力は?」

「戦場では無双の勇者が隣に侍っておる。奴自身は残念ながら分からんが、そこまで腕っぷしがあるようには見えんよ」


 儂がそういうと、狐人族の女は話にならないとばかりに首を振ってきた。

 そして、他の狐人族の奴らも失笑交じりにこちらを見ているのだ。


「な、何がおかしい!?」


 咄嗟に儂は、奴らに対して大きな声を出して立とうとした。

 それと同時に儂は、後悔した。

 奴らの一人が一気に距離を詰め、儂の喉元に刃を突き付けたのだ。

 刃渡りは、約10㎝程度の小さい物だが、冷たい感覚が恐ろしい。


「ひぃ……」


 儂の喉からひねり出すような何とも言えない声が出た。

 それを見ながら、狐人族の女は冷淡に儂に向かって言ってきた。


「敵の実力すら知らないでよくもまぁ、依頼してきたな。まぁ、こっちとしては前金も貰っているから断らんがな。あと私たちに命令や異論を唱えるな。私たちの流儀でやらせてもらう。良いな?」


 彼女がそういうのと同時に、儂は首を小さく縦に動かした。

 如何せん、刃物が怖いのだ。

 そんな儂の様子を見て満足したのか、彼女は頷いた。


「よろしい、離してやりなビリー」


 そう言われて、狐人族の男は刃物をしまった。

 全く、恐ろしい奴らだ。

 だが、心強くもある。


「で、ではお主らに任せる。ただし、失敗したら礼金の話は無しだぞ!」

「お前はアホか? 失敗したらその時点でお前も首をくくる事になるんだよ」


 全く可愛げのない!

 あのシャロミーとかいうエルフも可愛げなかったが、こいつはより輪をかけて可愛げがない!


「……エイラ族長、そろそろ」

「うむ、そうじゃな」


 狐人族の男に言われ、エイラは頷き部屋を出て行くのだった。

 そして、儂はそれをただ茫然と眺めていた。


「ふぅ……。これだから亜人は礼儀知らずで困る」


 そう呟きながらも、暗い笑みが漏れ出るのだった。




キングスレー エイラ


 口のくさい依頼主の話では、どうやら対象は城の中にいるらしい。

 敵の情報は、事前に渡された資料でエルフとあった。

 そして、その傍に侍っている者が、厄介だとも。

 

「このアーネットとかいう勇者は相手にしない様にしよう。恐らく寝室までは一緒に居ないだろうからな」

「男色の気があったらどうしますか?」

「そん時は、一人になるまで潜むしかあるまい」


 当たり前の話だが、依頼を今日受けて今日達成するなんて事は不可能である。

 暗殺とは、繊細な作業の積み重ねで行うものだ。

 それに軽々と暗殺を達成したとして、その後の脱出路などを考えて無ければ意味が無い。

 我々は矢ではないのだ。

 行った道を戻らねばならない。

 生き残らねばならないのだ。


「一応だが、相手の実力を見定めてからにしよう。まずは城の屋根裏などに潜み、情報収集だ」

「はっ!」


 私が基本方針を達すると、連れてきた4名が各自の判断で動き出した。

 後は、私自身も城への侵入路を見つけて入り込むだけだ。

 1日目は特に変化が無かった。

 何分慣れた者たちを連れてきたので、やることが無いのだ。

 城への侵入路も存外早く見つける事ができた。

 まぁ、警備がかなり薄いという好条件があったからなのだが。


「ビリーそちらはどうだ?」

「エイラ様、やはり傍に侍っているエルフは危ないですな。誠の武勇の達人です」


 ビリーが素直に言うのを聞いて、私は驚いた。

 何故なら、このビリーも私に一段劣るとはいえ、一族の実力者なのだ。

 その彼が、かなり警戒している。

 それだけ恐ろしい相手という事だろう。


「エイラ族長。奴には手を出さない方が良いと俺は思う」

「他ならぬビリーの見立てだ。他の奴らにも通達しておけ」

「はっ!」


 恐ろしい……か。

 確かに侍っている奴も実力者だろうが、それを平然と使いこなす奴もまた、私には恐ろしい。

 弱肉強食が当たり前の部族で、自分より強い奴を従えるのは勇気がいるのだから。

 奴からは特に何も感じないが、恐らく相当な手練れなのだろう。


次回更新予定は6月21日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。m(__)m

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