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1-21

リザルト回

※一部文章ミスを修正 東→西に変更。

 旭日が東の空を明るく照らし出したころ、両軍の戦いが終焉を迎えた。

 子爵軍は騎兵100名、歩兵2000名で攻撃をしかけ、死傷者が100名以下という快挙を成し遂げた。

 対する第二王子軍は、総勢2万は居た兵が散り散りとなり、捕虜として生き残った者は、わずか5000にも満たなかった。

 後の者の大半は潰走中に討たれ死亡し、残り僅かの者は匪賊となった。

 この戦いが、エルフ皇帝と呼ばれるディークニクトの名が世に知れる機会であった。

 さて、その未来の皇帝は、今二人の男の前に立っていた。

 彼らは丸腰で、ディークニクトは剣を帯びている以外には、座っているか立っているかの違いでしかない。

 立っているのは、第二王子オルビスとその騎士ネクロス。

 彼らは、負けはしたが膝を屈したわけではない、と誇りを持って立っていた。

 

「さて、王子オルビスよ。今後の事についてだが、こちらから提案だ。城と直轄領をこちらに明け渡せ。そうすれば命は助けてやる」


 ディークニクトが尊大にそう言うと、オルビスは鼻で笑いながら言い返してきた。


「何を言うか、こちらが明け渡すのは城だけだ。第一お前の所のアーネットとかいう奴は、ネクロスに負けたのだ。戦に勝ったことだけを誇ればよいものを」

「よく言うな、アーネットを止めなければネクロスの方が(むくろ)を晒していただろうに。それが分からぬ凡夫ではなかろう?」


 そう言って、お互い睨みつけ火花を散らす。

 勝った方も尊大だが、負けた方も尊大という何とも奇妙な構図。

 周囲に控えていた子爵軍の面々も、当の本人であるネクロス、アーネットまでも笑いたいのを、奥歯を噛んで我慢していた。

 だが、この睨みあいもそう長くは続かなかった。

 互いにほぼ同時に息を吐き、話の妥協点を見出そうとしたのだ。


「貴様の状況では私が生きていなければならんだろう?」

「はん! 貴様一人居らんでも何ともないが?」

「いや、それは無いな。貴様の状況では、私は生かさねばならない」

「その理由は?」

「簡単な事だ、貴様の地勢的状況だ。今私の城と領地の大半を手に入れては、貴様に統治する力はない。また、私が西に居て勢力をある程度保っていなければ、第一王子がより拡大して圧迫してくる。それも東西からだ。それだけは貴様が避けたい道のはずだ」


 オルビスは、的確にディークニクトの現状を見破り、反論してきた。

 現状のディークニクト陣営で内政を担当できる人物は確かに少なかった。

 そしてそれだけが、唯一オルビスが指摘できる箇所でもあった。

 ただ、ディークニクトもその辺りは承知しているのだろう。

 あまり顔には出していなかった。


「確かに少ないが、全くできないわけではない。俺が直接指揮をとっても良いし、何なら貴様の領内で目端の利くものを抜擢して任せても良いというものだ」

「そんなもの残すわけが無かろう。俺が連れて行くわ!」

「なら原石を探すまでさ。こちらには生憎と時間だけはたっぷりあるからな」


 そう言って、ディークニクトは人の悪い笑みを浮かべた。

 エルフの悠久ともいえる寿命をちらつかせた。

 確かに、一時的に機能不全を起こす可能性はあるが、長い目で見るとそれも一時期の事でしかない。

 最もこの方法が最善かというとそうではない。

 これはディークニクトも最低の策でしかないと分って口にしているのだ。

 だが、彼はオルビスにもそんな余裕が無いことを知っていた。


「……全く面白くない。こちらの事情まで見透かしておるではないか。まぁよい、直轄地の一つで手を打ってやる」

「そうか、ではこのベルドナンの街をもらい受けよう」

「うっ……」


 地図上でその一点を指さされて、オルビスは初めて言葉に窮した。

 彼は、ディークニクトが山の民がベルナンドの利点などに気づかないと高を括っていたのだ。

 ベルナンドとは、今でいう海運城塞都市である。

 王国の中でも有数の港で、オルビスにとっては所謂『金の卵を産む鶏』の都市なのだ。

 

「……何故ベルナンドなんだ?」


 言葉に詰まった彼は精一杯の強気で、そんな都市に何の価値が? と言った様子で聞いた。

 そんな彼に対して、ディークニクトは悪戯を企む少年の様な目で語り始めた。


「何、この都市が一番大きく整備されていたのでな。それにここは海に近い。俺自身が海を見てみたいのだよ」


 一切を隠して、彼はそうとだけ答えた。

 しかし、彼のこの返答はのちの史家も『ねつ造された言葉だろう』と言うほど有用性を理解していた。

 何せ彼は、この海運を用いて他国との交易はもちろん、外洋進出を果たし海軍を設立しているのだ。

 海運城塞都市の機能を十全に生かした事はあまりにも有名な話だ。

 そんな話をオルビスも知る由もない。

 彼は単なる気まぐれかと思い、のちに機能不全を起こすだろうと見たのだろう。

 この時、ディークニクトにベルナンドの割譲を了解してしまうのだった。

 この一連の動きによって、ディークニクトは巨大商業都市を二つ抑えるという快挙を成した。

 そして、この快挙が今後の彼の覇業を支えていくのだった。


次回更新予定は6月16日予定です。


是にて第一部完です。

次回から第二部です!

また人物についてはどこかでまとめられたらまとめます(;´・ω・)


今後もご後援よろしくお願いいたします。m(__)m

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