8-22
白い部屋から帰ると、シャロミーが様子を見に来ていたのかベットの上に座っていた。
彼女は、俺の姿を見るなり嬉しそうな顔でこちらに向かってきた。
「ディーどこに行ってた……の?」
駆け寄った彼女が、一瞬戸惑ったのは言うまでもない。
俺の後ろに体こそ大きくないが、いかつい顔をした男が立っているのだ。
それも、微妙な「神様」と胸の部分にでっかく書かれたTシャツを着て。
「えっと、ディー? その後ろの方はどちら様?」
シャロが、これでもかというくらい微妙な顔をしながら俺に訊ねてきた。
確かにこんな格好をした男が来たら、不審にも思うだろう。
俺は、かいつまんで白い部屋でのことを話した。
「ふーん。これが元神様?」
「元というか、今も末席の神だけどな」
説明にやや納得いかない、といった表情をしながらシャロは男の事をジロジロと観察していた。
男の方はというと、何とも言えない居心地悪そうな顔をしながらもジッとしていた。
「で、こいつとの契約って?」
「1つ、醜い姿になること。こいつ、元々はかなりの美男子だったんだがいかつい顔になってもらった。2つ、この世界で帝国の人民にたてつかないこと。3つ、向こう3千年我が国を守護すること。以上の3つ契約をかわしてきた」
「……どうでも良いんだけど、最初になんで醜い姿にしたの?」
「あぁ、それは簡単だ。持て囃されないためにだ。特に宗教関係者にしたら神ってだけで崇める対象になるだろ?」
「確かに、なるわね。だから醜い姿にして崇めにくくしたと?」
「そういうことだ。あとは、こいつの勝手だ。契約以外については縛ってないからな」
俺がそこまで言うと、シャロは「ふーん」と気の無い相槌を返してくるだけだった。
まぁ、その辺は俺も興味が無いので、人の事は言えないが。
「これで統一して、約束も終わったってこと?」
「そうなるな。ただし、ここからが面倒だけどな」
そう言うと、シャロはよく分かってないのか、小首をかしげてきた。
「まぁ考えてもみろよ。俺達の人生後500年は軽く続くんだ。長かったら900年はある」
「あー、まぁ確かに退屈はしそうよね」
「いや、退屈している暇はそんなにないだろうな。国の法整備、交通・生活環境の整備、軍備の維持」
「……頑張ってね?」
「いや、シャロにもやってもらう事がたくさんあるからな?」
俺達がそんな話で盛り上がっていると、元神は居心地悪そうにしながら話しかけてきた。
「ディークニクトよ。そろそろ私は行きたいのだが?」
「あー、えっと明日までは待ってくれ。一応臣下一同が集まる時間があるから、その時に紹介だけしておく。あと、名前を考えないとな」
「名前? あぁ、お前たちが個体を識別するために使っているものか。なら神で良いではないか?」
「いや、流石にそれはちょっと……」
俺が微妙な表情をしていると、シャロが何かを閃いたのか俺にささやきかけてきた。
「……なるほど、それは良いかもしれないな」
「良いかどうかは、私が決めたいのだが……、それで名はなんと名乗ればよい?」
「お前の名前は今日から、ガーディルってのはどうだ?」
「ガーディル? ふむ、意外とまともな名前で驚いたが、悪くない」
ガーディルはそう言うと、頷きながら名前を呟いていた。
そんなこんなで、翌日。
臣下一同が揃う中で、ガーディルの紹介と今後の取り扱いについて通達した。
ガーディルに関しては、基本ノータッチとすること。
ただし、今後定められる法律に違反した場合は処罰の対象となる事を明言した。
「では、私はもう行かせてもらうぞ」
紹介も終えて、臣下もそれぞれの職務に戻った段階で、俺はガーディルを見送りに来た。
今後、こいつはこれまでの行いに対しての贖罪を兼ねてあちこちを旅することになっている。
「まぁ、たまには顔くらい見せに来いよ。こっちは長いと言っても、500年程度だからな」
俺がそう言うと、ガーディルは微妙な表情をしながらも「考えておく」とだけ呟いて出て行った。
「さてと、あいつの世話になるのはしゃくだから、そうならなくても良いようにこの国を整備しないとな」
誰にいう訳でもなく、俺は一人そう呟いて城へと戻るのだった。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
投稿を開始して、約1年ちょっと。
やっと完結しました。
最初は、こんなに続けるとは思いもよりませんでしたが、完結してホッと一息です。
今後の予定ですが、軍記物を一点考えております。
今度は、主役が一番上ではなく軍師となります。
ちょっとアホな武力一辺倒の女上司と知力一辺倒な軍師の物語になる予定です。
もし宜しければ、また公開した折に一読いただけると幸いです。
では、また次の作品でお会いしましょう。╭( ・ㅂ・)و̑ グッ
※ブクマを外される際にお願い。感想欄で一言でも良いのでお声かけ頂けると、次回作への意欲に繋がります。モチベーションアップの為にも、ご協力お願いします。




