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8-20

 数日後、アーネットたちが戦後処理を終えて帰ってきたので、俺の自室に呼んで酒を酌み交わしていた。

 ちなみにだが、凱旋式は暫く延期と判断せざるを得なかった。

 その最たる理由は、家久の怪我がひどすぎたからだ。

 エルババとの戦いで、肋骨全てと左肩から腕骨折に、背骨に歪みもあった。

 内臓もかなりぐちゃぐちゃになっており。


「あれでよく命があったな」


 とは、担当した軍医と城の典医の言葉だ。

 功労者の一人がそんな状況とあっては、流石に凱旋式とはいかず回復を待つという事になったのだ。


「アーネット、家久だがなんとか命はとりとめたようだ」

「それは良かった。ただ、あれだけ打ちのめされたんだ、戦場には……」


 アーネットが沈痛な面持ちになったが、それについては俺は断言できなかった。


「まぁ、そこについては本人次第だ。奴がまだまだと思って頑張るなら回復する目もあるだろう」

「そうだと良いのだが、聞いた話ではジーパンが降伏したのだろう? 既に帝国のみとなっているが、現状を考えれば……」

「戦争は、終わりだな。以後はどうなるか、なんて誰にも分からない。だが、当面は内政に精を出して、荒れた国土の回復へと向かわないとな」


 俺がそういうと、アーネットは頷きながら俺に杯を勧めてきた。

 まぁ、先勝したのにパレードも宴会も後回しという事になったので、二人で静かに飲もうという事になったのだ。


「とりあえず、統一おめでとう? で良いのか」

「まぁ、あと帝国が残っているけど、なんとかいけそうだからな」

「それに、お前の話では神との約束は、統一後なんだろ?」

「いや、統一後ではなくて、王国成立後だからな……、余程内部に不満を貯めない限り、問題は無いと思うんだが」


 神と俺の約束、それは俺が作った国が3代無事に終えることだ。

 そうすれば、エルフの一族は安泰に。

 逆に3代持たなければ、エルフの一族は族滅されてしまう。


「しかし、物騒で勝手な話だよな」


 アーネットはそういうと、グラスを一気に傾けて俺の方に出してきた。

 まったく、国王に酌をしろという臣下も居ないだろう。

 もっとも、それがアーネットと言えばそうなんだが。


「まぁその辺りは、申し訳ないけど俺も消滅するかどうかの瀬戸際だったからな」

「いや、お前には怒ってないさ。ただ神の勝手な言いように腹が立っているだけでな……」


 アーネットはそういうと、苛立ってきたのか眉間に皺を寄せて天井を睨んでいた。


「もし、神がこの世に来るというなら、俺が一発ぶん殴ってやりたいな」

「ハハハハ! お前が殴ったら流石に神といえども、無事じゃないだろうな」

「おう! なんだったら空の彼方にあるという神の国まで吹っ飛ばしてやるさ!」


 そういって彼は、力こぶを作ってみせた。

 こいつならしてしまいそうだと、そう思わせてくれる。


「で、今後だがどうなるんだ?」

「その事だが、帝国は恐らく抵抗する力はもうない。だからのらりくらりとかわそうとしてくるだろうが、そこは外交圧力で一気に降伏させる」

「降伏したら、この大陸に逆らうものは居なくなるな」

「あぁ、そうなれば、晴れて俺達は内政に精を出せる。そして、その後3代続くように制度改革を行っていく」

「前にお前が語ってくれた、1代100年計画か?」

「そうだな。1代100年で代替わりをして、危ない場合は修正をしていく感じかな?」


 俺が何となくこれからの事を伝えると、アーネットは頷きながら聞いていた。

 いや、こいつ、頷きながら聞いてるんじゃなくて船漕いでるだけだ。


「おい! お前が聞いてきたんだろ! 寝てるんじゃねぇ!」

「はっ!? すまん。どうも政治の話は」

「政治のせの字も出てきてねぇくらいで寝るなよ!」


 相変わらずな、アーネットの態度に俺はやれやれと思いながらも今後の事を考えた。


「とりあえず、帝国には即座に帝位の禅譲を要求する使者を送ろう。事ここに至っては、断りもしないだろうからな」

「あぁ、そうだな。それで全部が終わるんだな」

「まぁ戦争は無くなるだろうな。後は、賊の討伐だけになるからな」


 アーネットは少し寂しそうな表情を浮かべながら「わかった」とだけ応えてくるのだった。

今後もご後援よろしくお願いいたします。

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