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8-19

 数時間後、俺は謁見の間で糸目の使者と対峙していた。


「これは、エルフリーデ国王陛下。私はジーパンの特使、リン・ウェイと申します」


 リンと名乗る男はそういうと、長い袖に隠れた両手を顔の前で重ねて挨拶をしてきた。

 俺がそれに対して、鷹揚に頷くとこちらを見ながら手を下した。


「まずは、陛下御即位の挨拶が遅れ申し訳ありません。何度か急使を頂いておりましたが、当国も海に囲まれており、出航が中々思い通りにいきませんで……」

「別段そちらの事情について話に来たのではあるまい? なんの用あってこちらに来られたのか、それをお聞きしたいのだが?」

「はっ! これは失礼をいたしました。我が国は、此度この一帯を統一されるエルフリーデ王国に対して、降伏を申し出ようと考えております」


 リンの口から出た「降伏」の2文字は、周囲に居並ぶ諸将に衝撃を与えるのに十分だった。

 何せ、未だに獣王国との決着がついていないのだ。

 この戦い次第では、まだ天下はどちらに転ぶか分からない。

 なのに、あえてこの時期に降伏という話を持ってきたという事は……。


「ジーパンの狙いは、獣王国の鉱石か」


 俺がそういうと、リンは一瞬驚いたのか目を見開いてきた。

 ただ、流石に特使を任されるだけある。

 次の瞬間には、顔は元通りの糸目に戻っていた。


「いやはや、陛下は流石賢王と言われるだけありますな。そうです。ジーパンとしては鉱石が欲しいのです。我らは資源少なき島国です。ですからこそ、資源が欲しい。その為にこれまで、必死に色々な物を買い集めて資源を手に入れて来ておりましたが……」

「俺達の王国が統一をする場合、ジーパンとの取引を行わなくなる可能性がある、……と思った」

「まさしく、その通りでございます。慧眼とはまさしくこの事ですな」

「その話し方はどうにかならんのか? いちいちうっとおしいぞ」


 俺がそういうと、リンは少しムッとした表情をしたが、すぐさま一礼をしてきた。


「失礼いたしました。できる限り相手を褒めろ、と外務関係の者から言われておりましたので、他意は無いことをご理解いただければ幸いです」

「まぁ良い。で、降伏についてだがこちらとしては戦わずに済むなら問題ない。何か条件はあるのか?」

「そうですね。降伏は致しますが、我らの商業活動を遮らないこと、海洋利権をできる限り守って頂きたいこと、後は我らの命を保証していただくことくらいでしょうか?」

「命が最後にあるあたり、流石は商人といったところだな。その程度の条件なら良いだろう。ただし、全ての商船の戦闘能力を取り上げるぞ」


 リンは、あらかじめ予想していたのか俺の提案に対して二つ返事を返してきた。


「えぇ、それはもちろんでございます。我らは、等しく陛下の臣と国民となりますからね」


 そういって、リンは俺に跪いてお辞儀をしてきた。

 まったく、内側に虫を飼ってしまったような気分だが、何にせよ統一へと一歩近づいたのだ。

 もっとも、獣王国次第でまだまだいくらでも高転びしそうな状況ではあるが……。


「陛下! 急使です! アーネット将軍からの……ッ!」


 謁見の間に、再び急使が駆け込んできた。

 ただ、今回はリンが居ることに気付いたのか、急に口をつぐんだ。

 そんな急使の態度を見たリンは、空気を読んでか再び一礼して退去を申し出てきた。


「それでは、陛下。書類に関しましては、後日という事でよろしくお願いします。その際に今度は我が国の元首をお連れしますので」

「あぁ、分かった。リン殿がお帰りだ。誰ぞ見送りに行ってやれ」


 俺がそういうと、居並ぶ諸将の中から数名が列を離れた。

 彼らが全員居なくなるのを待って、急使は再び口を開いた。


「陛下、アーネット将軍からです。戦勝報告とのことです」

「おぉ! アーネットがやったか!」

「陛下、かなりの大金星ですな!」

「あぁ、これで終るぞ。この大陸での戦争が」


 目下、俺に反抗していたのは、獣王国とジーパン。

 その2国が、打ち倒され、降伏してきたのだ。

 国として残っているのは、帝国がある。

 だが、この国は我が国に姫を送り既にほぼ降伏状態。

 その事を考えれば、これでこの大陸の統一はなされたと言っても過言ではない。


「アーネット将軍が帰られましたら、すぐさま戦勝祝勝会ですな!」

「いや~長かった。だが、陛下についてきて本当に良かったですぞ!」


 謁見の間で報せを聞いてた諸将は、戦勝の報告がほぼ、大陸統一の報せであることを理解しており、口々に祝辞を述べ始めている。

 ただ、本当に大変なのはこれからと言える。

 内政を整え、法律を整え、そして、長く繁栄させなければならないのだ。

 その為にも、色々と人材を集めなければいけない。

 正直、勝つ前よりも頭が痛い問題と言えるだろう。


「とりあえず、アーネットたちがこちらに帰ってきたら、すぐさま凱旋式をする! 戦勝の布告も出しておけ!」


そろそろ終わりです。


今後もご後援よろしくお願いします。

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