8-16
獣王国 島津家久
あれから、5合。
なんとか耐えとっどん、刀も刃こぼれがひどっなってきちょって、限界が近か。
荒か息を少しでも整えようと、息を吸うと容赦なっエルババは次ん一撃を入れてくっ。
「どうした? もう終わりか!?」
未だに、涼しか顔をして次から次へとこちらに鉄ん棒を打ち込んでくっ。
そいを、おいは右へ左へと必けしみ避けながら、合間合間で懐に切り込もうとフェイントを入るっ。
だが、一瞬一瞬ん動きにもエルババは対応してみせ、隙ん一つも見せてはっれんかった。
「ぐぅ……、はぁはぁはぁ……、あと一歩、いや半歩なんじゃが……」
そん半歩が果てしなっ遠う、高か壁で阻まれちょっ様な気になりながら、おいは隙を探りながら時間を稼いだ。
あと少し、あと少しすりゃ、アーネットどんがやってくっ。
そうなれば、形勢は逆転すっはずだ。
「だが、問題は……、どげんして、そん時間を……、稼ぐかだッ!」
打ち降ろしてきた、鉄ん棒を紙一重で避けっんと同時に、エルババが一瞬バランスを崩した。
おいが、足裏でほんの少しだけ掘った柔らけ土に足を取られたど。
そん隙を、おいも見逃さず一気に足元へと打ち込ん。
「チェストォォォ!」
確実に足に入った。
刃こぼれがひどっ、肉を断ち切っことはできんじゃろうが、裂傷くれはしきっはず……。
おいが、そう思いながら撃ち込んだ刀は、ガキィン! ちゅう鈍か金属音と共に弾かれ、中ほどで折れてしもた。
「なッ!?」
一瞬、ないが起こったんか分からんかったが、背筋に走っ寒気においん足が勝手に距離を取った。
「ほぅ、あの状況で咄嗟に距離を取れるか。中々いい戦士だな」
エルババは、おいん方をみるとニヤッと口ん端を歪めてくっ。
くそっ! 完全に勝った気でおっとが、分かっ。
いや、おいも奴ん立場やったや笑うていたじゃろう。
そう思うと、おいは先ほどまで登りかけちょった血がびんてから引いていっのが分かっ。
「ふぅぅぅぅぅ……」
吐き出す息と一緒に、考えが少しずつまとまっ。
一矢、一矢報いれれば、大丈夫や。
あとは、どうとにでもなっ。
死中ん活を、見出して、掴んでやっッ!
覚悟を決むっと、一気にエルババん懐に向かって走り出した。
「ハッ! 諦めて玉砕か!?」
そうゆと奴は、横なぎに鉄ん棒を振ってきた。
唸りをあげて近づっ鉄ん棒を、おいは身をかがめて避けっ。
避け終わったんと同時に、エルババが返す棒を振り上げて叩きつけようとしてくっ。
次ん瞬間、おいは手に持っちょった刀ん残骸を奴ん顔目掛けて、投げつけてやった。
「くそ! 悪あがきを!」
エルババは、投げられた刀を避けっ為に振り上げた棒を一瞬下げて体を横にひねった。
おいは、奴ん身体んすぐそばをすり抜けっと、脇腹目掛けて地面から拾い上げたもんを突き立つっ。
「ぐぅ!? な、きさま!?」
ちょかっん痛みに、エルババは一瞬うめき声を上げたかて思うと、拳でおいをうったっり払うた。
「がはぁっ! クッ……ハハハ。やってやったぞ? どうだ? 見下しちょった相手につけられた傷は……」
地面に打ち付けられたおいは、背中が痛んとも構わずニヤリと笑うてやった。
「くそったれめ! 落ちた武器の破片を使うとは!」
エルババは、悔しそうに脇腹を抑えながら、おいん握っちょっ血塗れん刀ん先を見ちょった。
そう、おいはあん瞬間、咄嗟に手にした刀ん先を握って刺してやったど。
ただ、奴ん脇腹と一緒に、おいん手ん指もズタボロになってしもた。
こいでは、もうしばらくん間武器は握れんじゃろう。
いや、武器どころか既に指一本動かせん。
さっきん奴ん拳で、恐らくろっ骨を何本か折り、内臓も傷んじょる。
「お前だけは、しっかりと息の根を止めねば……」
エルババはそうゆと、おいん方へと一歩一歩ゆっくりと近ぢてくっ。
「あれだけやって、手傷一つか……。クククク、おかしかとう。けしみそうになっとっとに笑えてくっ。こいが悔いんなかけしみ様ちゅうやつなんじゃろう」
「薄ら笑いを浮かべて、死ね!」
エルババは、倒れちょっおい目掛けて鉄ん棒を振り上げてきたんやった。
バタバタとしておりました。
今後もご後援よろしくお願いします。




