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8-11

獣王国王都 アーネット


「将軍、陛下より指示が届きました」


 使者を連れて、伝令の兵が入ってきた。

 使者だけという事は、多分そう言う事だろう。


「陛下より、指示書をお持ちしました。ご確認をお願いします」

「確かに預かった。別室を用意しているのでそこで休んでいてくれ」

「かしこまりました」


 使者の男は、そう言うと案内に従って部屋をあとにした。

 残された手紙を俺が開くと、中にはある程度予想していたことが書かれていた。


「陛下は、何とおっしゃっておられるのですか?」


 部屋で待機していたローエンが、声をかけてきた。

 少し心配そうな顔をしている彼に、俺は読めとばかりに手紙を突き出した。


「では、少し失礼して……っ!? これは、どういうことですか!?」

「ローエン、騒ぐな」

「ですが!」

「言った言葉が、理解できないか?」


 俺が、たしなめるのも聞かず騒ぎそうだったので、睨みつけると流石に押し黙った。

 ただ、状況が状況だけに騒ぎたいのも分かる。

 何せ手紙には。


「糧秣の問題で、援軍派遣が難しい。1週間後に北部の戦線から兵と糧秣が戻るが、それをこちらに輸送するとなると更に時間がかかる。それらを勘案して出した結論は、そちらでしばらく対処してくれ」


 とだけ書かれていた。

 要するに、1万6千程度の兵を分けて使えと言ってきたのだ。


「兵力の多寡は、戦線を維持できるかに直結します。これでは……」

「分かっている。だが、こちらにはお前と黒騎士が居る」


 そう言って笑いかけると、ローエンは一瞬面映ゆそうにしたが、次の瞬間には俺の意図を察した。


「将軍、まさかとは思いますが……」

「そのまさかだ。お前と黒騎士に軍の主力を預ける。私は少数精鋭を率い、カレドにこの地を守護してもらう」


 そう言い切ると、俺はすぐさま諸将を王座の間に集めた。




帝国 エルババ


 援軍が負けたという報告を受けたが、帝都を落とせば俺の勝ちだと思っていた。

 いや、と言うよりも落とせると思っていた。

 だが、現実はどうだ? 未だに目の前の城が落ちていない。


「いつまで城攻めをしているつもりだ! さっさとせんか!」


 俺が怒鳴ると、周囲の兵が一瞬ビクッと怯えて伝令に走る。

 そんな周囲の様子にも辟易していると、突然天幕に伝令が入ってきた。


「急報! 急報! 陛下! エルババ陛下!」

「なんだ!? 敵城が落ちたか!?」


 一瞬、吉報と思い俺が立ち上がると、伝令兵は気まずそうな顔をしながらも大声で続けてきた。


「いえ! 落ちたのは我が城です!」

「は?」

「ですから、落ちたのは我が王国の城です! 王都が陥落しました!」

「な、なにぃ!? あそこには5千の兵がいたはずだろ!?」

「そ、それが、無血開城したとのこと!」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は天を仰いだ。

 戦う事を国是として、戦う戦士を育てることを史上としてきた。

 その王都が、無血で、陥落したのだ。

 兵たちの動揺は、恐らく計り知れないものとなるだろう。


「敵城に構っていられん。2万の兵をすぐさま王都へ差し向ける。夜陰に乗じて動くので、準備を進めさせろ」


 そう命令して、俺は椅子にもたれかかった。

 さて、当面の問題は、帝国がこの情報を知っていた場合だ。

 恐らく我らが退却する隙を突いて、追撃してくるだろう。

 だが、そこさえどうにかできれば……。


「いいか、絶対に悟らせてはならんぞ!」


 命令を下してから、数時間後。

 日が陰り始めた。

 流石に、日が陰ると夜行性の獣人以外は動けなくなる。

 だからこそ、早く用意しなければならないが……。


「敵から丸見えの様な気がするな……」

「あぁ、国王はついに頭がおかしくなったおと言う噂も、あながち間違いじゃないかもな……」


 などと言う囁き声が聞こえてくるくらいだ。

 元より、我が軍は獣人で構成されているから、夜間の行動が苦手な奴らと、昼間の行動が苦手な奴が入り乱れている。

 それもあるが、この城さえ、この街さえ奪えれば、俺に逆転の目があっただろう。

 だが、こうなっては致し方ない。


「さっさと準備を整えろ! 敵は、以前俺達に騙されているんだ! 簡単に追っては来れん!」


 俺がそう言い切ると、先ほどまで不平不満を言いつつ用意していた者たちが慌てて動き始めた。

 全くもって、世話が焼ける奴らだ。


今後もご後援、よろしくお願いいたします。

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