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8-6

獣王国 白虎隊隊長


 あれから2日。

 なんとか、要所と考えていた場所に布陣できた。

 ただ、その為にこちらは人族の歩兵が疲れ果てているが。


「陣の設営を奴隷兵にさせろ。早急に堅固な砦を築かせるんだ!」


 外からは、人族を急かす声が響いていた。

 そんな中、俺達4人は顔を突き合わせて話し合いを始めた。


「さて、なんとか場所はとれた。だが、相手がまだ来てないぞ」

「うむ……、予想に反して奴らはここを捨てたのか?」

「兎人からの報告では、森に人の気配、音は無いそうだ。後方についても同じだったな~」

「我ら猫族の力を恐れたのだ!」


 何かおかしい気がする。

 あれから森の中を再度調査させたが、奴らの騎兵の数は多く見積もって2~3千といったところだった。

 人族の軍の編成を考えると、約2万で来た奴らのほぼ全騎兵と言っていい数だろう。


「敵の騎兵は、多くて3千。これまでの経験と今回の敵の規模を考えたら、ほぼ全ての騎兵が遊軍となっているはずだ」

「確かに、相手の規模から考えるとそうだな~」

「ならば、槍兵を全て後ろに回すか! それなら前方の敵に集中できるぞ!」

「ふむ……、なるほど確かにそれも考えられるな」


 馬は、基本的に尖ったものを嫌う。

 全滅できなくとも、追い散らすくらいはできるだろう。

 それに、後方の危険が無ければ軍の規模から考えても、こちらが圧倒している。


「全槍兵を後方に回すのはどうかと思うが、大半の部隊を回すのは良いかもしれない」


 私がそう言うと、その場にいる3人が頷いてきた。

 これで後顧の憂いなく前にだけ集中できる。

 最悪挟まれたとしても、敵が近づけなければ意味がないのだから。


「では、準備を整えよう」




獣王国 アーネット


 敵軍が、既に予定地に着いているという報告が俺に入ったのは、夕方頃のことだった。

 既に辺りが暗くなりつつあり、とても軍を率いて戦える状況ではない。


「さて、この状況。相手は夜襲を仕掛けるかな?」

「恐らく仕掛けてくる可能性が高いでしょう。特に今回は主たる軍を猫族と兎人族が率いています」

「なるほど、どっちも夜行性か」

「兎は、違うという学会の論文もあるようですけどね」


 俺の言葉に、カレドが少しおどけた様な仕草で応えてきた。

 確かに昔そんな話をしたこともあった。

 俺は苦笑しながらも、招集した将を見渡した。

 全員が、夜襲とういう考えで一致しているのか、特に問題ないようだ。


「夜襲が来た場合だが、何か策はあるか?」


 俺の問いかけに、若い将が進み出てきた。


「柵を二重にしてみるのは、如何でしょうか?」

「確かにそれは有効かもしれないが、時間はどうだ?」


 俺が、空を見上げながら言うと、若い将は少し考えてから難しそうな顔をした。

 どうやら時間が無いという事が分かったようだ。


「今現在、一重で建設を急がせているがそれも日の入りまでに間に合うかどうか」

「では、交代で見張りを立てますか?」

「それは、当たり前の策とも言わん方法だな」


 俺がそう言うと、周りがシンと静まり返ってしまった。

 少し言い方がきつかったか、と反省しているとまた一人進み出てきた。


「ではこの様な策は如何でしょうか?」


 そう言ってきたのは、少し歳のいった壮年の男だ。

 確か最近幕下に加わった男だ。

 そいつは、中々興味深い策を提示してきた。

 夜襲を仕掛けてくる可能性があるなら、小規模な馬防柵を作ろうというのだ。

 そして、それにプラスして鳴子を侵入しそうな経路に張っておくという事も進言してきた。


「ふむ、小規模な馬防柵ならなんとななるか……、作業をしている者から数名出して用意をさせろ。柵の内側に作らせるんだ。鳴子は……、この辺りに仕掛けておこう」


 俺がそう言って、地図の一点を指差した。

 そこは、森から近くどうしても目の届きにくい場所で、野営地を造る際に弱点となっていた所だ。

 そこからは、早かった。

 すぐさま命令が届けられ、作業が開始された。

 そんな中、俺は壮年の男と天幕の中で話していた。


「そう言えば、対面するのは初めてだったな」

「はっ! 先日国王陛下より将の役職を賜りました。エルネスト・ローエンと申します」

「苗字がある、という事は貴族か?」

「お恥ずかしながら、貴族とは名ばかりの北方の没落家でして」


 ローエンはそう言うと、頭をかいた。

 ただ、態度とは裏腹に目にはその事を恥じる様子はなく、力強さを持っていた。


「北方と言うと、クルサンドの?」

「はい、クルサンド国の前ですね。北方諸領土連合の頃の一軍人です」

「なるほど、クルサンド台頭の際に割を食ったという訳だな」


 俺がそう言うと、ローエンは頭をかきながら二カッと笑ってきた。


「確かにそれもありますね。最後に残った家財一式、全て持って行かれましたから」

「というと、その前から既に没落し始めていたと?」

「お恥ずかしながら、祖父だったか、曽祖父の代には既に」


 俺達が、そんな事を話し込んでいると一人の男が入ってきた。


「将軍、そろそろ準備が終わります。最後の確認をお願いしますよ」

「そうか分かった、ではカレドの案内で回るとしよう。ローエン、お前も来い」


 俺がそう言うと、カレドの先導で陣を見て回るのだった。


今後もご後援をよろしくお願いします。

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