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キリの良いところなので、短いです。
クルサンド国 島津家久
明らかに、敵ん動きが変わった。
こん森に誘引してから、こちらん動きがまるで分かっちょっかんごつ動き始めちょっ。
特に変わったんな、誘い込ませっために少数ん兵を当たらせてからだ。
「まるで、鷹ん様に空から見られちょっ気分じゃな……」
おいが、独り言を呟いちょっとちょかっ剣戟ん音が響いてきた。
「ナカズカサ殿! 敵襲です!」
「なに!? またか!?」
こいで、何度目か分からん。
それくれ、相手に何度も攻撃をされちょっ。
「まじね……。森から出た方が良かかもしれん」
「しかし、森から出ては数の上で圧倒的に不利では?」
そうゆて、副官がおいん考えに意見をしてきた。
確かに、危険ではあっ。
だが、こんまま森に居っ方が危険じゃと感ずっとじゃ。
「いや、開けた場所に行こう。できたや崖などが背にしきっ場所へ」
「……では、ここがよろしいかと」
そう言って副官が示した場所は、確かに崖を背にできる開けた場所だった。
「良い場所だ。これならどうにかなるだろう。兵の数は?」
「先ほどからの奇襲で、全軍の兵数は4千を割りそうです」
「流石にきちが、兵を分けっ。わいは、1千率いて左ん森に、もう一人にも1千率いさせて、右ん森に伏せていろ」
おいがそうゆと、副官は命令を全軍に伝達しに走っんやった。
クルサンド国 ディークニクト
敵の動きが変わったことは、すぐさま偵察兵から俺に伝わった。
先ほどまでは、こちらの裏を裏をと動いていたが、一目散に違う所へ向かっているというのだ。
「こういう時に、地理が分かる奴が居ると助かるんだがな……」
「恐らくダメでしょうね。相手側は、完全に死兵と化していますから……」
アーネットが言っているのは、捕虜の事だ。
こちらが、何度か敵を襲撃した時に捕虜を得ているのだが、全員頑として口を割らないのだ。
「全く、流石は軍法戦術に妙を得たと言われるだけあるな……」
俺は、誰に言うでもなくボソッと口に出していた。
それを見た、アーネットは少し呆れ顔で注意をしてきた。
「陛下、また悪い顔になっておられますよ。いや、楽しそうな顔と言うべきですかね?」
「ん? あ、あぁ、すまんな。ついつい口元が歪んでしまったよ」
流石に、楽しいとは言わない。
言わないが、やはり戦術を、戦略を学んできた身としては、あの島津家久に勝てるのだ。
そこが楽しくなくて、何が楽しいというのだ。
しかも、相手は未だに勝つための手を打とうとして来ている。
「報告します! 敵の半分が分かれて移動し始めた、とのことです!」
俺達が、今後を話し合っていると、再び偵察兵からの報告が入ってきた。
場所や規模が分からずとも、ある程度の情報でも無いよりは遥かにマシなのだ。
しかも、それが一方的にこちらにだけ入ってくる情報なら、なおのことだ。
「……という事は、こちらを誘引しての伏撃を考えているな。本体を叩くのと同時に、伏撃に対しても攻撃を行おう。偵察兵には、周囲を警戒しつつ動くように伝えろ」
「狩りの時に覚えた気配断ちが、こんな所で生きるとは……、人生は分かりませんな」
「アーネット、その良い方は少しじじ臭いぞ」
俺が、少し意地の悪い顔でそう言うと、アーネットは口元を歪ませてきた。
「そりゃ、キースのマネですからね。弔い合戦といきましょう」
「うむ、そうだな」
俺達は、追い詰めたネズミを捕まえる為に包囲網を小さくしていくのだった。
次回更新予定は6月1日です。
なお、この日は私の誕生34周年ですw
今後もご後援よろしくお願いいたします。




