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クルサンド国 ディークニクト
突撃した俺の目の前に、敵が数人立ちはだかった。
一人は短槍、もう一人は剣を持ってそれぞれ突きと上段から打ち降ろしてきた。
それを俺は、槍の穂先を手に持っていた剣でいなしながら横に避ける。
避けざまに槍兵の持ち手を斬りつけ、態勢を整える。
「くっ! 味方が邪魔で剣がっ!?」
俺の動きに気を取られていた剣兵は、後から突っ込んできた兵士に蹂躙される。
無論、利き手を斬られて槍を取り落とした奴もすぐさま首をかき斬られてこと切れた。
「陛下! いくらお強いと言っても、単身で敵に突っ込まれては困ります!」
「そう言うな、俺だって自分の命が軽くないことは知っている。それに、周囲を見てみろ。さっきまで敵に飲まれそうだった兵たちが息を吹き返しただろ?」
俺がそう言って、武官に周囲を見るように促す。
当然、周囲の様子は既に見ていたのだろう、彼も渋々同意をしてきた。
「確かにそうですが……。っと、そんな事をご報告に来たのではありませんでした。敵兵ですが、明らかに少ない気がしませんか?」
「あぁ、100名足らずしか居ないだろうな」
武官の報告に、俺は首肯しながら同意した。
今さっき俺が斬った槍兵と剣兵もだが、どう考えても少ないのだ。
「敵が囮部隊を編成したのか、それともこちらの人数を見誤ったのか……」
周囲の戦況も安定したので、俺が少し考え事をしていると、少し後ろから声が聞こえた。
「陛下、ご無事ですか?」
「あぁ、アーネットか。丁度良かった、敵の動きをどう見る?」
俺がその声に、振り向かずに尋ねる。
するとアーネットは、少し間を置いてから答えた。
「……そうですね。恐らく敵は囮部隊を出してきたのだと思います。その証拠に、少ない人数でこちらを襲ったわりにこちらの襲撃を受けた瞬間逃げ出しました」
「やはりそう思うか……。ただ、逃げるのが早すぎるとは思わないか?」
「……確かに、誘引を目的とするならもう少し多い人数で適度に戦ってから、逃げるのが定石ですね」
「ということは、こちらの勢いに驚いて逃げるのが早くなった……」
「それとも、そこを織り込み済みでこちらを誘引しているか、ですね」
確かに、このまま追いかけても良いが急ぐ必要は無いだろう。
「一旦合流して、偵察を出そう。エルフを2人一組で編成してくれ」
「良いのですか? 我々の数はそこまでではないので、厳しいですよ?」
「確かにそうだが、現状を放置するよりもましだ。それに、発見して追跡ができればアドバンテージはかなり大きい」
「分かりました。では、編成して走らせます」
アーネットはそう言うと、すぐさま編成を終えて偵察隊を放った。
偵察隊を放った後、俺達は兵の再編を進めていると、偵察兵からの報告が入ってきた。
「敵軍を発見した? 早過ぎないか?」
「えぇ、私もそう思います。罠の可能性が十分にあるかと」
「だが、ここで手をこまねいてもいてられないからな」
「確かに、あの城を落とすのは至難でしょう」
特に、カレドにはそこまでの積極策で行けとは言っていない。
となると、あいつの性格から考えても恐らく囲って相手の出方を見ながら戦うだろう。
そうなれば、陥落はかなり遠い話になる。
「とりあえず、突いてみよう。周囲には警戒する様に偵察兵に連絡を入れろ。恐らく狙われている可能性がある」
「はっ! 小休止の後に、すぐさま陛下のお言葉を伝えろ」
アーネットがそう命じると、近くに居た兵が足早に移動する。
「では、アーネット。部隊を一度元に戻して、進める。周囲に偵察兵を配置して、相手の伏兵をいち早く見つける布陣で行く」
「伏兵で鶴翼の陣を敷くのですか?」
地図上の駒を俺が動かすのを見て、アーネットが呟いた。
確かに、見た目的には両翼を広げた鶴の様に偵察兵が左右に展開している。
もっとも、こんな薄い陣形は森の中で偵察を主体にしてるからこそできる陣形だが。
「鶴翼とは面白いな、まぁ強いて言うならカマキリ陣と言ったところだがな」
「なるほど、森の中で両鎌(偵察兵)を広げた、カマキリと」
俺が頷くと、アーネットもニヤリと笑ってきた。
「では、アーネット。相手を狩場に誘い込もう」
「分かりました。ご期待に副えるように頑張ります」
次回更新予定は、5月30日です。
今後もご後援よろしくお願いいたします。




