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7-25

クルサンド国 ディークニクト


 城を攻囲している本隊と離れた俺は、すぐさま敵軍の足跡を追うべく探索を開始させた。

 1万の兵を十数隊に分けて、森の中に人の通った痕跡がないかを調べさせた。

 そうすると、意外なほど早く敵軍の通ったであろう跡が見つかった。


「罠、ではないですか?」

「ほぼほぼ、罠だろうな。恐らく、キースの時に上手くいったことを逆手に取ろうとしているんだろう」

「というと?」

「こちらが部隊を分けずに入ると考えたか、こちらが部隊をあえて分けると考えたかだ」

「二択、ですか……」


 アーネットはそう言うと、どうすべきかと迷っているように見えた。

 そんなアーネットには申し訳ないが、俺の腹は決まっている。


「隊を分けるぞ。ただし、適度に距離を取るだけで見えなくなるほど離れない。常に互いを視認できる距離で行軍する」

「ですが、それならお互いにくっついていれば良いのでは?」

「くっついていては、兵を分ける時に面倒が起こる。それならば……」

「最初から兵を分けて、指揮権がハッキリする様に、ということですか?」

「あぁ、そう言う事だ」

「では、私は3千率います。陛下は残りの7千を率いてください」


 俺は、そんなアーネットの提案に首を横に振った。

 今回の戦で、アーネットまで失っては建て直しがきかなくなる。

 そうならない為には、お互いに兵を5千ずつの半分に分けるのが一番いい。


「兵は、半分ずつ5千で行く。俺もお前もその数が一番しっくりくるだろ?」

「まぁ、それはそうですが。ですが陛下、私はもっと少なくても大丈夫ですよ?」


 アーネットは、そう言って二カッと笑ってきた。

 まったく、相変わらずだなこいつは。

 俺は、そんな事を考えながらも兵たちに指示を飛ばした。


「兵5千は俺と共に行く! 残りはアーネットの指揮下に入れ。互いの連携を確認しながら進むので、遅くなる可能性があるぞ」

「「はっ!」」


 俺の言葉を聞いた、兵たちはテキパキと編成を変え、俺とアーネットの前に整列した。

 編成が終わった兵を率いて、俺は左側に。

 アーネットは、右側を行軍した。

 それからしばらくの間、敵が襲ってくる事はなく無言の行軍が続いた。

 正直、ここで襲ってこないのは辛い。

 適度に襲ってきたら、返り討ちにもできるが全く近づかれないと、精神を削るだけで消耗しかない。


「伝令を走らせろ、小休止(15分程度)をすると」

「はっ!」


 俺がそう言うと、伝令がアーネットの部隊へと走って行った。

 そして、到着したのだろう、アーネットの部隊がこちらに対して手を振ってから停止した。

 それを見た俺も、部隊に一時休止する様に命令を下す。


「……少しでも、敵の居る場所が分かれば良いのだが」


 俺は、呟きながら周囲を見渡してみた。

 だが、見えるのは鬱蒼と生い茂る木と草花だけで、足跡もいつの間にか見えなくなってきている。

 恐らく、そろそろ罠をしかけてくると思うが……。

 正直今回の相手に関しては、俺の戦術眼が当てにならない。

 そんな事を考えていると、急に周囲の音が消えた。


「……ッ!? 周囲を警戒しろ!」


 俺がそう言うと、休んでいた兵たちが驚いて俺の周囲に集まった。

 鬱蒼とした場所だが、先ほどまでは鳥や動物の声が少なからず耳に入っていた。

 それが入らなくなった、という事は敵軍が近づいている可能性が高いのだ。

 俺は、アーネットの方を見ると同じように感じたのだろう、兵を周囲に寄せている。


「敵との距離は分からない。が、確実に近づいている。警戒を怠るなよ」


 俺が、周囲の兵にだけ聞こえるくらいの声量でそう言うと、兵たちは頷き返してきた。

 相手も恐らく、こちらが気づいていることに気づいているだろう。

 あとは、タイミングだけだ。

 こちらが外さない限り、致命的な一撃は受けない。

 静まり返った森の中で、俺たちはジッと息をひそめて耳をそばだてていた。

 ただ、相手が音を立てることなどほぼない。

 じっと我慢比べを続けなければならない。


「いいか、相手はこちらの出方を窺っている。隙を探している。死にたくなければ、絶対に気を抜くな」


 それから、どれくらいの時間が経過しただろう。

 静まり返った森の中で、俺とアーネットの部隊はジッと動かず、相手の動きだけを探っていた。


「……このままでは埒が明かない。エルフの弓兵は木の上に登り、相手の位置を特定しろ」


 俺が、そう言うと部隊の中に数人居たエルフの兵が、弓を片手に木を登った。

 そして、周囲の警戒を始めた途端、突然ドサッという落下音が聞こえてきた。


「敵襲! 部隊三時の方向に敵あり!」


 その一方を受けるや否や、俺はすぐさま指示を飛ばした。


「3時方向の敵へ弓兵は矢を射かけろ! 歩兵は、援護をもらいながら強襲するぞ! 続けぇ!」


 俺が、そう言って走り始めると部隊の全兵が慌てて付き従った。


「陛下を一人にするな! 陛下をお守りしろ!」

「走れぇ! 敵を一人も逃すな!」


 森の中での乱戦が、始まるのだった。


先日はすみませんでした。


次回更新予定は、5月28日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。


※私事ではありますが、先日就職が決まりました。つきましては、6月から就業となりますので、更新頻度等が乱れる可能性がかなり高いです。読者の皆様には大変申し訳ございませんが、6月からは、生暖かい目でゆっくりとお待ちいただければと思っております。

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