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7-24

クルサンド国 ディークニクト


「城内に敵が全て居ないと、陛下は見ておられるのですか?」

「当たり前だ。援軍の無い籠城など、城内の食料を消費すればそれで終わりだ」


 むしろ、ここまでの間奇襲が無かったことを考えると、こちらの食料を断ってくる可能性も考えなければならない。


「兵を一万割いて、こちらの補給路を確保はさせているな?」

「はい、途中の隘路にも2千程常駐させております。後は補給部隊の援護に回っております」

「ならばよろしい。そうなると、敵が狙うのは……」


 俺がそこまで言いかけると、突然外が騒がしくなった。


「敵襲! 敵襲ぅぅぅぅっ!」


 突然の報告に、軍議に参加していた諸将は一斉にざわめき立った。


「どこから敵が来た!? すぐさまここに兵を集めろ!」

「いや、食料も守らせねばならない! それぞれ一番近い食料保管場所を目指せ!」


 右往左往とは、この事だろう。

 ここしばらく無かった敵襲の報に、諸将が浮足立っているのが分かる。

 それを見ていたアーネットが、突然立ち上がって命令を発した。


「まずは、本営に第一軍と親衛隊を回せ! その後第二軍と第三軍で食料保管庫の警備を! 残りの部隊は命令あるまで戦闘態勢で待機! 30分後に次の命令が無ければ本営の護衛に来るように通達しろ!」


 流石は、歴戦の将軍。

 先ほどまでの動きにくい指示とは違い、一発で現状できるだけの指示を発した。

 この指示のおかげで、混乱しかかっていた現場は一気に冷静さを取り戻し防御の陣を完成させることができた。

 ただ、肝心の敵が来ない。

 1時間ほど待った所で、アーネットが声をかけてきた。


「陛下、もしかすると奴ら……」

「あぁ、俺たちの居場所を探るために、少しだけ突いて逃げた可能性があるな。今頃見晴らしのいい場所でじっくり観察しているだろう」

「では、場所の移動を?」


 確かに、ここは見つかっている可能性が高い。

 だが、それだけで移動しても良いものか。

 いや、移動することに問題は無いしリスクを減らすという意味では良いかもしれない。


「各隊、いや各伍に連絡を入れろ。自部隊に顔の知らない者が混ざってないかと」

「伍にですか? それは我が軍の最小単位になりますが?」

「構わない。というか、そうしなければならない。相手は、先ほどの騒ぎで紛れ込んでいる可能性が高いからな」


 俺が、そう言うとアーネットも少し考えてから頷いて命令を発した。

 その後は、陣内の各所で点検点呼が徹底された。

 その結果、数名の侵入者が捕まり、数名の脱走を許してしまった。


「まさか、自軍の兵を紛れ込ませるとは……」

「アーネット、お前が大公の城を落とした時に取った戦法と一緒だよ。もっとも、今回は俺の命と食料を奪いに来るつもりだっただろうがな」


 俺がそう言って、捕虜を睥睨すると奴らは口惜しそうに歯を食いしばった。

 捕虜の格好から、恐らく先日死んだ三人衆の兵から接収したものだろう。


「さて、お前たちに聞いて分かるかどうかは知らないが、大将はどこだ? 島津中務大輔家久は」

「きさんに言う必要を感じぬ!」

「きさん? 薩摩弁が混じっているな。お前が大将か?」


 俺がそう言うと、捕虜たちが口々に薩摩弁交じりの言葉で罵り始めた。

 転生したとは聞いているが、実際に顔などは知らない。

 ただ、浅黒い肌をした男とだけ聞いていたのだ。

 そして、浅黒い肌の捕虜がここに数名居る。

 というか、捕虜全員が浅黒い。


「クルサンドは、前身の北方諸領土連合の頃から奴隷制が採用されていましたので……」

「あぁ、その時の奴隷たちか……。これはまた面倒だな。恐らくジーパンがどこからか持ってきたのだろうな」


 となると、奴が構成した部隊は恐らく通常の兵と元奴隷の混成部隊。

 連携こそ難しいだろうが、神憑った統率力で何とか維持しているという所だろう。


「とりあえず、こいつらは全員殺しておけ。恐らく投降することは一切ないし、平和な時代になってもゲリラを続ける可能性が高い」

「分かった。衛兵! こいつらを引っ立てて、簡易の刑場を設けてから斬ってやれ!」


 アーネットがそう言うと、衛兵がすぐさま捕虜たちを引っ立てて行く。

 それでも奴らは、俺を罵るのをやめなかった。


「死をいとわない兵か……」

「陛下、恐らく城内の敵よりも城外の敵を叩く方が先決かと」

「あぁ、そうだな。そうなると、アーネット、カレドを呼んでくれ」


 俺の命令から数分後、カレドが天幕へとやってきた。


「陛下、お待たせして申し訳ありません」

「気にするな。さて、カレドに命じる。ここの数万の兵を率いて城を攻囲し続けろ。適度に攻めて士気を維持しながら、無理に攻めることが無いように」

「はっ! では、陛下はどうされるのですか?」

「俺は、島津と決着をつけてくる。その為に、アーネットと兵1万を持って行く」

「かしこまりました。お気を付けください」


 命令を発した俺は、次の日に諸将の前で再度カレドを大将代理に任じた。

 そして、その日のうちに兵を率いて本陣を離れるのだった。

次回更新予定は5月24日です。

※少し仕事が忙しいので、もしかすると26日になるかもしれません。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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