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1-17

さぁ戦闘開始です。

第二王子軍 オルビス


 夜半時から、どうも不安があり眠れない。

 王子であるこの俺がだ。

 これまでの戦いでは、こちらが圧倒的な兵力と物量を持って相手を蹂躙し、駆逐してきた。

 そして、相手の土地を、人を、物を奪いつくしてきたのだ。

 なのに、今はどうだ?

 敵地深くで補給が途絶え、食糧すらほとんどない状態だ。

 今日の食事だって一、二口のパンが一つと具の無いスープだ。

 それでもまだマシだと言うのだから、一体兵たちは何を食べているのか。

 

「オルビス様、そろそろお休みくださいませ。明日は大事な一戦を控えております。歩哨は兵たちにお任せください」

「……分かった」


 そう言って、俺が天幕へと入ろうとした瞬間。

 歩哨の劈くような悲鳴が響き渡った。


「て、敵襲ーーーーーーーーー!」


 その叫び声は一斉に伝播し、休み始めた兵たちへと響いた。

 それと同時に、先頭から干戈を交える音が響き渡る。


「で、殿下! すぐさま戦のご用意を! 敵の夜襲です!」

「そんなもの分かっておるわ! すぐさま貴様は敵を抑えに行け!」


 俺が近衛兵長に指示を飛ばすのと同時に、手近にいた兵に伝令を出させた。


「そこの貴様! 後方の軍へと走り、ネクロスを呼んでまいれ!」


 俺の言葉を聞いた兵は、すぐさま飛ぶように陣の奥に走って行った。


「早く兵を起こせ! 奴らすぐにでもこの場にやってくるぞ!」


 急いで支度をした俺が直々に兵を督戦して回るが動きが鈍い。

 出発前は、あれほど精悍な顔つきでこちらの指示に従っていた兵たちが、まるで死者の様に生気の無い顔でこちらを見ている。

 

「貴様ら! まだだ、まだ負けてはおらん! ここで奴らを叩けば食料が手に入るぞ!」


 我ながら苦し紛れも良いところだ。

 まったく根拠はないが、言わぬよりはマシというものである。

 ただ、それでも動けるのはほんの少数。

 大隊規模の人数しか集まらない。


「何とか、何とかネクロスが来るまで粘るぞ!」

 

 兵たちの反応は鈍いが、そんなもの気にしている余裕などない。

 幸い入口から少し離れていたので、兵たちに方陣を組ませて待機させる。

 阿鼻叫喚の叫びは、そこかしこから響いている。


「お、オルビス様。あと少しで敵が来ます」


 見ればわかる。

 なにせ敵が通ったと思われる場所から、兵が宙を舞っているのだ。

 文字通り吹き飛ばされている光景なんて俺は、見たことが無い。

 もしこの場に誰も居なければ、矜持も何もかもを捨てて逃げ出したいくらいだ。

 だが、それは許されない。

 ここで逃げれば政治的にも俺は死んでしまう。

 それは、遅かれ早かれ第一王子にも殺されるという事なのだ。

 




子爵軍 ディークニクト


 突撃が成功した。

 思った以上に敵が弱っていたおかげで、苦も無く突入できている。

 まぁ、馬蹄の音を風よけの魔法で消していたのが効いたのだろう。

 風よけの魔法は、自分の前方に真空の空間を作ることで風を避けている。

 そして、真空の空間は音も遮断する。

 前方の敵に見つかっている場合、風よけの魔法は意味の無いものになるが、今回の様に奇襲をしかける場合は、別だ。

 

「ばばばば化物だーー!」

「ハハハハ! そら! そら! そら!」


 豪快な笑いと、掛け声を出しながら敵を飛ばしているのは、アーネットだ。

 狼牙棒で敵の頭をスイカ割りの様に砕き、体をくの字に曲げさせて吹き飛ばしている。

 

「てててて、敵はエルフじゃなかったのか!?」

鬼神(オーガ)だ! 鬼神が出たぞ!」


 元々低かった敵の士気は、完全崩壊し蜘蛛の子を散らすようにあちこちに逃げている。

 それを騎馬兵たちが一人ずつ念入りに止めを刺しに走り回り、辺り一面は阿鼻叫喚の地獄となっている。


「良いか! アリの子一匹見逃すな! 奴らは逃げ落ちれば野盗となるぞ! そうなってからでは面倒だからしっかりと潰せ!」


 俺はそう命令を下さしながら、突撃してきた兵を槍で一突きする。

 それを見て二人同時に来たので、近い方に石突を遠い方に穂先を突き立て殺していく。

 その後も、3人4人と突っ込んでくるが、如何せん馬力がもう出てない。

 有象無象がやってきても問題もなく対処できていた。


「キール! 10騎ほど率いてオルビスを捕まえてきてくれ!」


 俺がそう命令すると、キールは手近に居た兵の薙ぎ払いを受け流し、剣で相手の武器をからめ取って突き刺してから一礼して行った。

 まったく、何が良い勝負だ。

 あれでは俺の方が十中七、八くらいで負けてしまうぞ。

 

「ディー! 歯ごたえの無い奴ばかりでつまらんぞ!」


 俺がキールを見送っていると、前方で暴れていたアーネットが帰り血塗れでやってきた。

 特に狼牙棒の棘には、脳漿やらなにやら人だったもののパーツがベットリと付着していた。


「そう言うなアーネット。敵も兵糧がほとんど無かったから飢えたんだろう。その内ネクロスとかいう奴が来るだろうから、それまで暴れてろ」

「仕方ない、それじゃ暴れてくるわ」


 そう言うと、アーネットはまた敵兵の体をボールの様に打ち返していた。


次回更新予定は6月9日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。m(__)m

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