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7-7

エルドール王国 ディークニクト


「陛下、出発の準備が整いました」


 俺の足元で、アーネットが報告に来た。

 俺が、彼に頷いて見せると大声で命令を飛ばす。


「いざ! ランドバル帝国帝都へ向け! 前進!」

「「おぉぉぉぉぉ!!!」」


 1万の軍勢が、一斉に雄叫びをあげながら王都の中央通りを進み始める。

 その様子に、王都の民衆たちも見送りの為、行列を見る為にお祭り騒ぎの様になっていた。


「王都に、これ程人が居たのかというくらい集まっているな」


 俺が、脇を固めるアーネットにそう言うと、首肯してきた。


「本当に、恐ろしいくらいの数になってきました。最初は1万程度だったのが、今や10万を超えましたからな。しかも、飛行場のおかげで物資の運搬も楽になっているとか」

「その辺りは、お前の嫁の力だがな」

「……勿体なきお言葉」


 あの結婚以前からもだが、どうもこいつは素直にドロシーを褒めると微妙な顔になる。

 ただ、一応する事はしているようで、子は男の子が一人居る。

 最近は、その息子を厳しく指導しているようで、ごくたまに王城に逃げてきては隠れている姿を見かける。


「陛下。航空魔導兵器は、後日出発ですがよろしいのでしょうか? 帝国も一応現段階では仮想敵国ですが」

「その辺りは構わない。どうせ、あれはすぐにマネできる代物でもないし、魔法が使えると言っても人族では魔力量が足りないからな」


 航空機は、だいぶ燃費が改善されたのだが魔導兵器としての航空機は、未だに燃費が悪い状況が続いている。

 理由はいくつかあるのだが、その中でも最たるものは武装だろう。

 一応ダイナマイト系の火薬は開発したのだが、それを航空機内で使うことができないので、機銃系は未だに魔力掃射なのだ。

 それもあって、飛ぶだけでも魔力が必要な上に兵器まで魔力頼みなのでとんでもなく燃費が悪いのだ。


「早く火薬を使った武装の開発をしたいものだが、その辺はどうなっているか聞いているか?」


 俺が、アーネットに話を振ると、彼は両肩をすくめて知らないと暗に伝えてきた。

 本当に、この夫婦は仲が良いのか悪いのかよく分からない。

 前にその事をセレスとシャロに言うと、「他人の事は放っておけばいい」と言って来たしな。


「何にしても、早く目処を付けるようにと伝えておいてくれ。俺も多少の機工しか分からないからな」

「かしこまりました。その点については、ドロシーに伝えておきます」


 そんな真面目な話も交えながら、俺達は帝国への行程を進んで行った。

 出発してから2週間が経った頃。

 やっと帝国領内に入ったのか、一人の男が馬から降りて俺達を出迎えてきた。


「長の旅路、お疲れ様でした。私は、帝国国防将軍のウルリッヒと申します。今宵は、我が領内にておもてなしをさせて頂ければ幸いです」


 彼は、そう言うと帝国式の敬礼をしてきた。


「これはウルリッヒ将軍自らお誘い頂けるとは、ありがたい話です。ではお願いをいたします」


 俺が、快諾の旨を伝えると先ほどまでの真面目くさった顔から、口元に微笑みを携えた。


「快諾ありがとうございます。正直、慣れないお誘いをさせて頂いておりますので、不作法でしたらご容赦頂けると幸いです」

「ハハハハ、これは中々御冗談がお上手ですな。帝国の国防将軍と言えば、実質軍のトップ3じゃないですか。そんな方が、お誘いすらしてないなどと言う事は無いでしょう?」

「いえいえ、トップ3などと持て囃されておりますが、実際は馬車馬と変わらない状況ですから、あまりこういった機会が無いのですよ」

「それだけ、期待をされているという事ですよ」


 俺がそう言って、ウルリッヒを持ちあげると、彼は「ありがとうございます」と言いながら少し照れていた。

 うちの将軍にも、これくらいの可愛げのある奴がいれば良いのだがな。


「今回ご一緒にお連れになられたのは、アーネット将軍とトリスタン将軍のお二人だけですか?」


 ウルリッヒはそう言うと、スッと二人に視線を移した。


「ほぅ、流石は帝国のトップ3ですな。アーネットは特徴的なので分かり易いでしょうが、トリスタンを言い当てられるとは」


 俺がそう言うと、アーネットとトリスタンはウルリッヒに軽く会釈をした。


「いえいえ、たまたまですよ。王国の統一戦争時のご活躍をお聞きしておりましたので」

「ご謙遜を、ちなみにどこを見てトリスタンと判断されたのですかな?」


 俺がそう言うと、ウルリッヒは少し考えるような仕草を見せてきた。

 こういってはなんだが、トリスタンはアーネットほど筋肉質ではないし見た目的には普通のエルフと変わらない。

 ただ、彼は体幹――いわゆるインナーマッスル――を鍛えぬいているせいで、他の人物に比べて力があるのだ。


「そうですね、恐らくですが相当体の中を鍛えているのではないでしょうか? アーネット将軍は、外を。トリスタン将軍は内側を重点的に鍛えているように見えます」

「これは、これは、恐ろしいほどの観察眼ですな」

「いえいえ、たまたまですよ。たまたま――ただ、一つお願いが」

「なんでしょうか?」


 先ほどまでの笑みが消え、真剣な顔つきになってトリスタンをひたと見つめる。


「トリスタン将軍と模擬試合をさせて頂きたいのです」


 まさかの申し出に、俺もトリスタンも驚くのだった。


次回更新予定は4月16日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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