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7-2

エルドール王国 アーネット


 帝国との戦いが終わって、しばらくしたが……。


「平和過ぎる……」

「……それ、この惨状を見てから言ってください。将軍」


 オルゲにそう言われて、俺が辺りを見回すと死んでは居ないが、兵たちが息も絶え絶えに倒れていた。


「何を言っている? これくらい当然の訓練だろうに」

「不思議そうな顔してもダメです! 将軍は普通とは違うんですから!」


 最近、オルゲは俺に対しての物言いに遠慮が無くなってきた。

 まぁ、それだけ自分に自信がついてきたのだろう。


「まぁ、そう言うな。ほら俺はあれだ、エルフだからな!」

「そのエルフも、多数倒れてますが!?」


 オルゲにそう言われて見て見ると、確かに顔なじみが何人か倒れている。

 まったく、人族との生活で鈍ったんではないだろうか?

 俺が、オルゲとそんなやり取りをしていると、後ろから声がかかった。


「相変わらず容赦のない調練だな」

「あぁ、ディーか」

「へ、陛下!? こらお前たち! 姿勢を正さんか!」


 オルゲに喝を入れられ、兵たちはよろよろと立ち上がって拝跪の姿勢をとった。

 それを見たディーは、にこやかにしながら。


「構わぬ、相当な訓練だったのだろう。その場に姿勢を崩して座っていろ。私は将軍に用があるだけだ」

「はっ! ありがとうございます! お前たち、座る許可が下りた! 陛下に感謝して座れ!」


 オルゲの命令で兵たちが姿勢を崩すと、ディーは俺の方に向いてきた。


「さて、アーネット。ここではなんだから、自室に来てくれ。折り入っての相談がある」

「かしこまりました。陛下」


 一応の礼の形を取って、俺はディーの後に続いて王の自室へと移動した。

 王の部屋へと入ると、そこには普段後宮に入っているシャロとセレス女王も居た。


「これは珍しい。シャロ元気にしていたか?」

「もちろん元気よ。すぐに二人目を産むんだから!」

「ハハハ! それは頼もしい。頑張ってくれよシャロ」


 俺とシャロがそんな話をしていると、ディーが俺に杯を持たせてきた。

 その持たせた杯に、最近作らせている果実酒を注いでくる。


「アーネット。改めてお前に相談なんだが、一瞬でも王位を継いでくれないか?」

「……はぁ? 何を言っているんだ?」


 余ほど驚いたのだろう。

 自分でも、こんな声が出るのかという素っ頓狂な声が出てきた。

 俺が二重の意味で驚いていると、横からセレス女王が口を挟んできた。


「陛下が今言ったのは、本当のことよ。ただ、王位を継ぐと言っても1日だけで、すぐに次の王であるケインに王位を譲ってもらうわ」

「し、しかし、俺が王位というのは、どうしてなんだ?」

「その事なんだが、とりあえずシャロとセレスの二人と相談したんだが、今後の王位を子が100歳になった時に禅譲する形にしようと思ってな」

「いや、その禅譲の形は良いと思うが、俺はなんなんだ?」

「その禅譲の儀式で、今後最も功績があり信頼できる臣下から、民を代表して次代の王を祝福する。という形で王位を得させようと思うんだ。ただ、ケインもまだ2歳だから、少なくともあと98年は後の話になるんだが」

「……またそれは遠い話だな。というか、ケインはハーフエルフだろ? 寿命は長くてもエルフの半分じゃないのか?」

「いや、それは違うよ」


 俺の疑問に、ディーが即答してきた。


「実は、ハーフエルフもエルフも寿命に大した差は無いんだ。ただ、一般的にハーフエルフの方が短いと言われているのは、その生活環境によるところが大きいんだよ」

「生活環境? あいつらは……、あぁ確かにあまりよくはないな」


 ディーに言われて俺が思い出したのは、昔エルフの里の近くに居たハーフエルフだ。

 エルフは、元々ハーフエルフを嫌っていた。

 ディーが村長になってからは、そんな事は無かったがいわゆる村八分という状態だった。

 そんな状態で、数もほぼ1家族しかいないハーフエルフは、食料的に厳しくて死ぬことが多い。

 その為、純血のエルフたちは「ハーフエルフは寿命が短い」という思い込みを持つことで良心の呵責から逃げていたのだ。


「確かに、俺達が小さい頃に居たハーフエルフは、早死にしてたな。それでも何とか100~200年くらい生きていたって聞いてたけど」

「そうなんだよ。あの劣悪な状況でも、100~200年生きれるんだ。それなら普通に、俺達と同じ生活をしたらもっと生きれるかもしれないだろ?」

「俺達も、ディーの食料改革が無ければ4~500年で死んでたしな」


 俺が、しみじみと思い出しながら話していると、セレス女王の顔が何とも言えない顔になっていた。


「でだ、恐らくこの子も俺達と同じくらいは生きるだろう。そうなると、今後死ぬまで王位に居ては、長期の停滞が生まれる可能性がある」

「だから、100年単位で入れ替えをすると。んで儀式的な事をする事で、いわば臣下にもやる気を出させるという事だな?」

「そうなるな。一応王位に就くから、一代限りだが、王家の仲間入りをすることもできるからな」

「なるほど、それで俺か」


 俺がそう言うと、ディーは首肯してきた。

 俺は、既にシャロという妹が王家に入っている。

 要するに王家の類縁となっているのだ。

 俺以外の奴がこの役をすると、王家に入っていないカレドやトリスタンになる。

 そうなると、一代限りの王家といえど、5~600年は王家が増えてしまうのだ。

 正直それは面倒極まりないし、恐らくこの話はトーマン辺りが難色を示すだろう。

 そうなると、元から縁者となっている俺が一番穏便に面倒ごとなく済むという訳だ。


「分かった。とりあえず、時間があるだろうから前向きに考えさせてくれ」

「ありがとう。あぁ、そうだ。あともう一つあるんだが」


 そう言ってディーが言ったことは、俺にとって青天の霹靂というかなんといって良いのか分からないことだった。


次回更新は4月2日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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