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6-24

エルディナ平原 ディークニクト


 陣地の再構築が終わった俺達は、敵を警戒しながら亀が甲羅に隠れるように守備に徹した。

 特に正面からの敵には、弓矢と魔法で一定以上近づけないようにしている。


「いいか、予備兵力があるから加減せずにやってやれ!」


 少し離れた場所で、トリスタンの兵を叱咤する声が響く。

 そんな中、偵察に出していた兵が数名戻ってきた。


「ご報告申し上げます! 敵主力と思わしき部隊が、左翼方面より近づいております」

「同じく主力と思わしき部隊が、右翼方面からも近づいております!」

「ご苦労、引き続き偵察を行いつつ相手の補給線を切る動きをしてくれ。ただし、無理はしないように」

「「はっ!」」


 俺が指示を出すと、報告に来た兵たちは揃って去って行った。

 そんな彼らを見送ってから、俺は諸将の方へと視線を向ける。


「さて、諸君。やはりというか、敵は一気呵成にこちらを打ち破るつもりのようだ。この場合、敵の意図はどこにある?」


 周囲を見回しながら俺が問うと、数人の将が手を挙げてきた。


「やはり補給の問題でしょうか?」

「いや、恐らく他の国境の事を考えているのかもしれない。特に獣王国は我らが痛めつけたと言っても、国民全員が兵士と言われるくらいだからな」

「恐らくそのどちらもだろう。というよりも、それくらいしか勝負を急ぐ要因は無い」


 俺が二人の意見をまとめると、周囲の諸将も頷いてきた。


「さて、そんな中で我らが取れる行動と言えば、守備しかない」

「積極的に相手を撃破する、という行動は取らないのですか?」


 俺が断言すると、そこにすかさず質問が入る。


「それができれば良いのだが、今回は無理だろう。特に地形的な問題でな」


 そう、ここは起伏がある場所なのだ。

 比較的平坦な場所でも、敵の頭しか見えない。

 そんな場所で各個撃破ができるか、と言われると俺は無理だとしか言えない。

 ならば、この天然の堀を利用して守備に徹しながら相手を焦れさせる方が良いというものだ。

 俺がそこまで言うと、質問してきた将も納得して引き下がった。

 そして、次の将がまた疑問を呈する。


「では、こちらの意図はバハムートを待つか、獣王国を待つと言ったところでしょうか?」

「その通りだ。こちらは無理をしなくとも殲滅できる兵器があり、逆転の目がある。それを相手に考えさせるのも一つの方法だ」


 いわゆる心理的プレッシャー、という奴だ。

 そして、そのプレッシャーは日増しに大きくなっていく。


「いいか、相手の挑発には一切乗るな。こちらは我慢すれば勝てる」

「相手が崩れたら、暴れて良いという事か?」

「その通りだ、アーネット。ただし、相手の退却が擬態だと分った時には出ないように」


 俺が釘をさすと、アーネットは憮然とした表情で頷くのだった。




エルディナ平原 アイゼナッハ


 先ほどから、9万の兵で代わる代わる押しているのだが、一向に突破できる気配がない。

 その理由は、この起伏だ。

 簡易の堀として機能していて、とてもではないが一朝一夕には落とせない。


「まぁ、そうは言ってもこちらも塹壕として使えているから被害は少ないのだが」


 私が一人呟いていると、一時退却してきたウルリッヒ将軍が報告に来た。


「アイゼナッハ将軍、敵はかなり地形を上手く使っている。何かしら考えないとまずいのではないか?」

「うむ、それは今考えているのだけどね。まぁこちらとしては早く魔獣使いが来てくれるのを待つだけだよ」


 私がそう言うと、ウルリッヒも頷いてきた。

 相手がこうも堅く守りに徹すると、突破口を開ける者が必要になる。


「出てきて戦ってくれれば、いくらでもやりようがあるけど、まさか野戦で陣地構築して持久戦を考えるなんてね」


 冗談っぽく私が言うと、ウルリッヒはしかつめらしい顔でこちらを見てきた。


「冗談だよ、そんなに怖い顔しないで。……で、裏には回れそうかい?」

「はぁ……、残念ながら難しいですね。現状では相手に予備兵力がありますので、こちらが回ろうとすると、その予備兵力が顔を出して追い返してきます」

「まぁそうだろうね。相手も後方を気にせずなんてことはしないだろう。森には入れそうだったかい?」

「残念ながら、迂回路は全て潰されているようで、偵察に行った兵が帰ってきません」

「あぁ……、そう言えば相手はエルフだったな」

「えぇ、流石に森の中で彼らには敵いません」


 とりあえず、できることは全部やったという事になる。

 こうなると、後は予備兵力となってしまった迂回部隊と、魔獣使いが来るのを待つしかない。

 私がそんな事を考えていると、後方から伝令が走ってきた。


「伝令! 魔獣使い殿の準備が完了いたしました! 全軍退避をと言っておられます!」

「よし! やっと来たね! 退却のラッパを鳴らせ!」


 私の命令で、ラッパ手が退却の音を奏でる。

 それと同時に、敵の正面に居た兵たちはじりじりと下がり始める。

 全ての兵が退却を完了したころ、後ろから複数の飛龍が迫ってくるのだった。


次回更新予定は2月27日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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