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6-22

エルディナ平原 ディークニクト


 新緑が映える平原に、両軍合わせて30万の大軍が集結していた。

 一見するとだだっ広い真っ直ぐな土地に見えるが、その実小さな起伏があちこちにあり相手の姿は、直前にならないと見えない。


「……敵の動きは?」


 俺が、近くの兵に訊ねると直立不動のまま報告をしてきた。


「はっ! 今のところ敵の動きは、一切報告されていません!」


 一切か……。

 起伏があるせいか、相手が向こうに居るというのは分かる。

 それは、お互いの陣営の幟が見えているからだ。

 ただ、幟しか見えていないのはかなり不安な状態なのだ。


「とにかく偵察兵を増やして、相手の居場所をしっかりと把握しろ。両側の丘にも、敵が潜んでいる可能性はあるからな」

「はっ! すぐさま伝えてまいります!」


 こちらにバハムートがあるとは言っても、正直あれは多用できる兵器ではない。

 一つは、魔力の問題。

 結局バハムートの燃費は、あれから全く変わっていないのだ。

 おかげで、王都から100数キロ離れているこのエルディナ平原まで、1回の往復が限界なのだ。

 そして、もう一つがその殺傷力の大きさだ。

 あれは、無差別に人を殺す兵器だ。

 できることなら使用は極力減らしたいし、できれば抑止力としてのみ使いたいのだ。


「ディー、こちらの布陣は完了している。また、別動隊の編成も終わっているがどうする?」

「アーネットか。分かった、別動隊には、命令あるまで待機を命じてくれ。まだ敵の状況が把握できていないんだ」

「あぁ……、この起伏だからな相手の幟は見えるんだが」

「そうなんだ。気配も考えてみたんだが、両軍合わせて30万近い兵がここに居ると考えると、一々探っていられなくてな」

「味方の気配か、敵の気配かも分からんからな」


 アーネットはそう言うと、エルディナ平原の地図を出してきた。

 両側にある丘は、両軍ともに無視している。

 今回は丘を取ることではなく、相手を打ち負かす事が重要なのだ。


「ここらの地図だが、かなり古くてな。ところどころ水があった痕跡が地図にはある」

「まぁそこそこ起伏のある土地だから、もしかすると雨水で浸食されたのかもしれないな」

「ただ、この起伏が面倒だ。相手もこちらが見えないし、こちらも相手が見えない」

「しかも少数の兵であれば、伏兵し放題だからな」

「そうなんだよ。おかげでこちらも迂闊に動けないでいる」

「大軍が出せるからって面倒な土地だな……」


 俺がそう愚痴ると、アーネットも首肯してきた。

 おそらく敵の狙いは、中央からの圧迫と同時に左右からの包囲殲滅だろう。


「とにかく、偵察を出して両翼、中央ここをしっかりと見張らせてくれ」

「そうだな。まずは、その辺りを見張らせないとな」


 当面の方針が決まった俺達は、ゆっくりとではあるが、動きだすのだった。



エルディナ平原 アイゼナッハ


 起伏が激しいとは聞いていたが、ここまでとは思ってもみなかった。

 だが、これは幸いにしてこちらの味方になっている。


「さて、諸将。この地形を生かして、こちらは丘を迂回しての挟撃を考えているが、どうだろう?」

「丘を迂回!? しかし、それでは中央はどうなる?」

「20万の大軍を率いているのだ。こちらは10万を左右に、残りを中央に置いて一撃で粉砕するのが良いだろう」

「確かにそうだが、だが、敵が中央に拘泥しなかったら終わりだぞ?」

「それに丘はどうする?」

「丘は捨てようと考えている。それに敵が中央に拘泥しなければ、こちらは中央から食い破ることができる」


 私がそこまで言うと、諸将は押し黙った。

 ただそんな中で、一人手を挙げている者がいた。


「主将たるアイゼナッハ殿に意見が、丘の側面を迂回するのは良いのですが、せめて威力偵察が可能な兵力は展開させては如何でしょうか? みすみす高地を敵に渡しては、こちらの攻める意図も、方向もバレましょう」


 同じ国防将軍の一人ウルリッヒの意見に、その場に居た全員が頷いてきた。

 確かに丘は、互いの陣からほぼ真ん中にある。


「……分かった。ウルリッヒ将軍の意見を是として、1万兵を分けて5千ずつで丘を占拠してもらおう。ただし、丘に拘泥せず相手が丘を攻めてきたら適当にいなして帰還すること、が条件になる」

「アイゼナッハ将軍の意見に、私も賛成です。丘を守るために兵を割いては意味がありませんからな。こちらの攻撃の意図がバレないように、時間稼ぎだけで良いかと」


 ウルリッヒの意見を最後に、誰も思い残しが無いことを確認して丘の占領を任せる将と左右の将を決めた。

 中央は、私が自ら率いることになるのだった。


次回更新予定は2月23日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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