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6-21

帝国 シャムロック皇帝


 余が村の制圧を厳命した兵たちが、ほうほうのていで帰ってきた。

 なんでも廃村になった村に化物が住み始めたと。


「……逃げ帰った兵たちは、とりあえず後方に移送しろ。あと将軍を呼べ」

「はっ!」


 余が命令を発すると、近くに居た兵が走り去っていった。

 それからしばらくすると、国防将軍アイゼナッハがいつもの笑みを絶やさずにやってきた。


「皇帝陛下、お呼びと聞き参上いたしました」

「おう、アイゼナッハか。近う寄れ」

「はっ!」


 アイゼナッハは、跪いた場所から余が示した椅子へと腰掛ける。

 そして、余が話し始めるのを真っ直ぐ見つめて待つ。


「アイゼナッハ、此度余が厳命した廃村の奪取が不首尾に終わった。兵たちの話では、化物が出たとか。そちはどう思う?」

「恐らく兵たちの言ったことは、間違っていないかと」

「ほぅ、そちは兵たちが誠の事を言っていると?」

「はい、報告後の兵たちの様子を見ておりましたが、あれは死を間近で見た者の怯えようでした。陛下に死罪を言い渡される、という恐怖とは違う様に見受けました」


 なるほど、確かにアイゼナッハの言うように報告後に余が下がって休めと言ってもホッとした様子はなかった。

 大抵の失敗した者は、余が許すと言えば多少なりとも安心した顔になるものだ。


「なるほど、確かにそちの言う通りだ。では、今後どうするかだが……、そちには何か案があるか?」

「はっ! 私の考えでは、ひとまず兵を動員し軍を進めるのがよろしいかと思われます。兵たちの話では、国境を越えて追われたと言っておりましたので」


 そう言われた瞬間、余は一瞬考えた。

 何故なら、これはアイゼナッハが嘘を吐いて進軍理由としろと言ってきたのだ。

 なるほど、確かに国境という曖昧なもの相手が追いかけようと追いかけまいと変わることは無い。

 ならば、という事だな。

 余が考え、結論を出すとアイゼナッハはまた笑顔で頷いてきた。


「では、陛下。私が兵を指揮し、エルドールを征服してご覧に入れます」

「そうか、そちが行くか。相分かった、帝国の国防の盾が、剣でもあることをしかと見せてくるがよい」

「はっ! 帝国に栄光を!」


 アイゼナッハは、そう言って立ち上がると敬礼をして出て行った。




帝国 アイゼナッハ


「陛下からご下命頂いたぞ! エルドールを攻める! 準備を進めよ!」


 私は、兵舎に帰るとすぐさま命令を発した。

 気心の知れた部下たちは、すぐさま動き始めるのだった。


「さて、陛下に大見得は切ったが……、魔獣使い殿。翼竜の手配は済んでいるのでしょうな?」

「ご安心を、翼竜たちは既に兵たちと意思疎通を図り、訓練の成果も上々です。そして、何よりも認識疎外の魔法で相手も気づいておりません」


 魔獣使いは、そう言って頷く。

 まったく、この男はよく分からない。

 名を聞いても応えず、ただ魔獣使いと呼べと言い。

 話しかけても無口かと思えば、魔獣のことになると饒舌になる。

 なんとも掴みにくい男だ。


「相分かった。では翼竜については貴方にまかせましょう。後は、バハムートとかいうあの兵器の対処だ」

「それについては腹案が」


 私が、空飛ぶ兵器の対策を考えようとすると、魔獣使いが話しかけてきた。


「貴方にしては珍しい。では聞かせてもらいましょう」

「では、僭越ながら」


 彼はそう言うと、中々奇想天外な方法を話し始めた。

 また、それだけではなく、別途秘密兵器も用意しているらしい。

 その話を聞き終えると、私の中には関心と呆れが半々となっていた。


「……、なるほど確かにそれができれば、心強いという物ではない」

「では御許可を頂いたと」


 私は、そう尋ねてきた魔獣使いに頷いて見せた。

 それを見た魔獣使いは、ニヤリと笑ってから去っていった。


「全く恐ろしい。さて、奴は奴。私は私として対策を考えねばな」


 私はそう言うと、手近に居た兵に用意する物のメモを渡した。

 そこには、鉄の盾20万枚、鉄の兜10万個。

 と今回用意する兵装を書いていた。

 そのメモを見た兵は、一瞬数字を見て驚き問い返してきた。


「しょ、将軍。こちらの鉄の盾などの数は、本当によろしいのでしょうか?」

「あぁ、間違いない。鉄の盾20万、鉄の兜10万個だ」

「で、ですが、鉄の兜10万は、ほぼ全ての農兵に行き渡りますが……」

「あぁ、行き渡って良いんだよ。今回はそれらの半分は皇帝陛下が、あと半分は私が用意する。謂わば下賜される品だ」


 私がそこまで言うと、メモを渡された兵は敬礼して走り去った。

 おそらくこれ以上言うのは、恐れ多かったのだろう。

 それから数日の間準備が進み、全てが完了したのは命が発せられて3週間後の事だった。


「では、行くぞ! 20万の勇者たちよ! 我らが国境を守るのだ!」


 私は、20万の大軍を率いてエルドールへと侵攻を開始するのだった。


次回更新予定は2月19日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。


※本日朝10時より「戦国魍魎伝」を出させて頂いております。刀と妖の物語で戦記とは違いますが、興味のある方は是非お読みください。なお、行き方は私の名前をクリックして頂ければホームに入りますので、そちらからどうぞ!


追記:すみません、朝からPCの調子が悪く書ききれませんでした。更新は21日に延期いたします。

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