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6-18

「陛下は、族滅戦争をご存知かと思いますが、その後の話をご存知でしょうか?」

「公文書などを見る限りでは、魔人の族滅はほぼ完了したとあったな」

「左様でございます。ですが、実際にはそうではなかったのです」


 そう言って、オルフェウスは遠い過去に思いをはせながら話し始めた。


「族滅戦争で英雄シマヅに負けた我らは、純血種族を残そうと考える者と、混血種族を残そうと考える者に別れました。そして、そのそれぞれの子孫が私と彼です」


 オルフェウスの言葉に反応して、筋肉質な男は頷いてきた。


「最初は、人攫いの様な事をして女性を攫って無理矢理子をなしていましたが、混血が進む中で目の色が変えられる子が生まれ始めたのです」

「それが、オルフェウス。お前という訳か」

「左様でございます。ですが、この目の色を変えられるという特殊な進化の過程で、私たちは赤目の時にしか力を発揮できなくなりました」

「赤目の時、というと普通は色が自在に変えられないという事か?」


 俺が質問をすると、オルフェウスは少し驚いた様な表情をして頷いてきた。


「はい、本来であれば怒り、嫉妬、悲しみなどの負の感情が表に出た時でないと赤目になりません。ですが、私の様に変化させることができるようになった者も居たのです。そしてその者たちは、各自が戦場に赴き、武勲をたて、少しでも上の地位に登ろうとしました」

「なるほど、という事は各国にもそれなりの地位の魔人族が居るという事か?」

「いえ、ことはそう簡単ではありません。戦場ですので発見はあまりされませんが、どこかで発覚して逃げなければならない者。流れ矢などに当り絶命する者。使い潰される者など私の様に爵位を得るに至ったっても、基本は一代限りなのです」

「なるほど、という事は爵位を継承したお前は異例中の異例という事だな?」

「左様でございます。基本的に赤目が優先されるとは言っても、夫婦で別種の場合はどちらかに傾きます。当家の場合は、曽祖父から何とか3代続けて赤目が発現し、戦場で武勲をたてることができたので、私の代で継承を許されました」


 まぁ、確かに遺伝だとどちらが出るか分からないし、もし母親が夫の血筋を知らなければ赤目が出た時点でアウトだからな。

 オルフェウスの話を聞いた俺は、ふぅっと息を吐きだして椅子にもたれかかった。

 言葉では簡単に簡潔に説明しているが、恐らくその間には大きな苦労があったのだろう。


「ところで、オルフェウス。お前たちは人族を恨んでいないのか?」


 俺がふと思ったことを口にすると、オルフェウスは優しく微笑みながら首を横に振ってきた。


「陛下、我らは恨みを忘れようと決めた者たちです。もちろん恨みをずっと持ち続けている者も居ます。そして、恐らく帝国についた魔獣使いはそちらの者でしょう」

「随分と曖昧なんだな。お前たちのネットワークでは把握しきれないのか?」


 俺がそう言うと、オルフェウスは再び首を横に振ってきた。


「申し訳ございませんが、我らはたもとを分けた時から互いの情報が入っていません。ですので、こちらに魔人が居るという事も、あちらに魔人が居るという事も分からないのです。全ては推測の域を出ないのです」

「なるほど、まぁその辺は仕方がないな」


 俺がそう言うと、オルフェウスは申し訳なさそうに会釈をしてきた。

 さて、恐らく出てくるだけの情報は出てだろう。

 後は、彼らに覚悟を聞かねばならない。


「さて、一緒に来た純潔の男よ。お前は同族と相争う可能性があっても構わぬか?」


 俺がそう問いかけると、男は野太い声で答えてきた。


「それが、我らの求めし安住の地となるならば」

「なるほど、ではお前の名を教えてくれ」


 俺がそう言うと、男は首を横に振った。

 そのしぐさに、俺が訝しみながらもう一度問いかける。


「名を教えてもらわねば呼びにくいのだが? オルフェウスの様に名くらいあるだろう?」


 男は、また首を横に振ってきた。


「オルフェウス、これはどう言う事だ?」

「すみません、陛下。我ら魔人族は、名前を親と番の者にしか教えてはならない風習がありまして……、その私も偽名なのです」

「……分かった。では男よ、次会う時までに通称を考えておけ。あと純血種の魔人全員にも同じように伝えておけ。これから共同で暮らすのだ。必要最低限の準備をしてもらわねば、こちらも困る」


 俺がそう言うと、今度は首を縦に頷くのだった。

 まったく、これから先が思いやられそうだ。


次回更新予定は2月13日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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