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6-15

国境付近 アーネット


「……ぐん、……うぐん! 将軍!」


 呼ばれる声に俺が気づいて目を覚ますと、目の前にはロンメルが居た。

 彼は、顔をしわくちゃにしながら目を開けた俺に笑いかけてきた。


「将軍! ご無事で何よりです!」

「ここはどこだ? 俺は一体?」


 俺が辺りを見回すと、恐らく民家であったであろう建物の中に居た。

 その民家の中には、俺だけでなく今回ついてきた者も何名か居た。


「そういえば、魔獣はどうなった?」


 俺が、ロンメルに問うと彼は興奮しながら話し始めた。


「将軍の一撃で、魔獣は撤退しました! 流石は将軍です! 年甲斐もなくドキドキしておりましたぞ!」

「逃げた方向はどっちだった?」

「帝国の方向へと逃げましたな」

「そうか、ならば追えないな……」


 俺がそう言うと、ロンメルも状況が分かっているようで、頷いてきた。

 まったく面倒な事になった。

 捕まえるなり、死体を確保するなりできたら、ドロシーに送れたのだが。

 逃げては何もしようがない。

 しかも、帝国領へと向かわれたのでは、こちらから何もできなくなってしまった。


「……そうか。それで被害状況はどうなっている?」

「連れてきた兵の死傷は、5名ほどです。気絶した時に頭を打ったりした者と、食われた者たちですね」


 ディーの命令で連れてきた兵は、確か20人ほど。

 食われたのが、3名と気絶したのが2名くらいだったはず。


「それでは、動ける者で作業を分担しろ。分担は埋葬に10名、生存者探索に5名。生存者探索は、怪我をした者を中心に任せろ」

「かしこまりました」


 ロンメルはそう言うと、すぐさま指示を出し始めた。

 それからの動きは素早く、約3時間でほぼ全ての作業が終わっていた。


「村の被害状況はどうだった?」

「生存者は発見できず、死者が200名ほど居ましたね。立地的にはあまりよくはないのですが、村から少し出た所に埋葬しました」

「生存者ゼロか……、家畜についてはいくつか頂戴しておこう。このままここに、滞在せねばならんからな」

「滞在と言いますと?」

「恐らくあの魔獣は、頭に入れた一撃が効いたから一旦体制を建て直しに行っただけだ。体制を建て直せば必ず戻ってくる。そして、その時に俺達がここを離れていたら……」


 俺がそこまで言うと、ロンメルも気づいたのだろう。

 あの大型魔獣が、俺達を探してこの国を闊歩する姿を。


「それは……、止めなければなりませんな」

「その為にも、明日朝から防衛体制を作り上げる。その時士気が落ちていては意味が無いからな。亡くなった村人には仇討ち料という事で、納得してもらうしかないだろう」


 それから俺達は、鶏と豚を捌いて兵たちに分け与えた。

 そして、次の日。

 朝から防御体制を作り上げた俺達は、魔獣が来るのを待ち構えた。

 朝が過ぎ、昼が過ぎようとし始めたころ。

 魔獣の咆哮が、森から響き渡る。


「来たか……」


 俺が独り言ちると、魔獣が姿を現した。

 昨日と違い、額に大きな傷痕がある。

 おそらく俺が入れた一撃の痕だろう。


「犬ころ、昨日はよくもやってくれたな? 今日は簡単にはやられんぞ」

「ガァァァァァァァァァァ!!」


 昨日とは打って変わって、俺に対して殺意を漲らせている。

 虫けらと思っていた相手に手痛い反撃をくらえば、そうなってもおかしくはないか。

 そんな殺意に対して、俺も昨日の屈辱を返すべく狼牙棒を持ったまま肩をグルグルと回し始める。


「上等だ、俺とお前のどっちが強いか試すぞ!」


 俺がそう言って、武器を地面に打ち付けたのを合図に動き始める。

 魔獣は、昨日と打って変わって予備動作のある重い一撃を与えようと動く。

 俺の方も、相手の攻撃をまともに受ける気などない。

 予備動作を見た瞬間に、相手の懐に入り込んで腹に一撃を見舞う。

 強烈な打撃音が、辺り一面に響く。

 だからと言って、相手に効いているかと言うとそんなことはない。

 こちらが、間髪入れずにもう一発と振りかぶった瞬間。

 さっと後ろに飛びのき、次弾を回避した。


「なんだ、効いてるんじゃねぇか。ほら来いよ! 犬が!」


 昨日の事を考えない様に、できるだけ冷静にと思っていたが無理だった。

 魔獣を目の前にした瞬間、昨日の屈辱が思い出されて、沸々と怒りが溢れてくる。

 それは、相手も同じようで先ほどからこちらの間合いを外して一撃を入れようと必死に動き回る。

 そして、その動きはいつしか俺を取り巻くように円になっていった。


「ちぃっ! 足を使って狙いを定めさせないつもりか!」


 だが、この辺は想定内。

 動き始めて少しすると、周囲に伏せていた兵たちが一斉に防御結界の出る魔道具を投げつける。


「ギャン!?」


 防御結界の魔道具が作り出した防御壁に、魔獣は何度もぶつかり始める。

 そして、ぶつかるたびに速度が落ちるので、奴の姿がハッキリと目で追えるようになった。

 その見えた姿を目掛けて、俺は渾身の一撃を振るうのだった。


先日はすみませんでした。

少しテンションが上がらず書けませんでした。


次回更新予定は2月7日です。

今後もご後援よろしくお願いいたします。

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