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1-13

前哨戦開始です。

「大損ですか? いきなり言われてもピンときませんが……」

「まぁそうだろうな。とりあえず、領民を全員避難させて欲しい。できる限り軽装でだ」

「軽装? という事は最低限度の食料を持たせるという事ですか?」


 俺が頷くと、クローリーは苦虫を嚙み潰したような顔になった。

 それもそのはずだ。

 逃がす地区を指定したとしても、数万人住んでいる領なので、かなりの数になる。

 その全てに着の身着のままという事は、略奪品などを補填するということになるのだ。

 

「し、しかし、それでは我が領内の金庫が空になります。ただでさえ軍拡も城の改築も金が出ているのに……」

「確かにそうなんだが、今回領民を犠牲にしてはその後の動きが制限されてしまいかねないんだ」

「その後、ですか?」


 第二王子を撃退するのは、恐らく成功するだろう。

 そして、その後彼らを討ち取り逆げきを加えないといけない。

 密偵の報告では、第一王子にも動きがあったが、何故か軍を国境方面に移動させていた。

 恐らく彼らはこちらにも攻めるつもりでいたのだろうが、邪魔が入ったというところだろう。

 そうなると、第一王子に対抗するためにも、第二王子を討ち取り領土を少しでも削り取らないと、こちらがジリ貧になるのだ。


「攻めなければ俺達に未来はない。状況が変わってしまったんだ」

「オルビス様を討てと?」


 これまでは撃退で良かったが、状況が状況である。

 クローリーの問いに俺が頷くと、彼はしばし瞑目してから覚悟を決めた。


「わかりました。ただ、私が率いるのは違うと思いますので、今後はディークニクト様が領主として我らを導いてください」


 これまでも導いている様な状態だったが、俺は黙って頷いた。

 

「ありがとうございます。後、セレス様についてはどうされますか?」

「彼女は今回守らねばならない。最悪の場合生き証人でもあるからな」


 現状の俺達の軍事力では国を取ることなんてできない。

 オルビスを向こうに回して勝ったとしても、次に来るであろう第一王子、王国軍に負けては意味が無いのだ。

 その為にも、セレスには生き残ってもらわねばならい。

 他の者の助命嘆願の為にも。


「セレスをここに呼んでくれ。事情を説明して協力してもらう」


 

第二王子軍 オルビス


 後方での反乱の一部を抑えたので、何とか軍を動かすことができるようになった。

 今回の進軍ルートで一番怖いのは領境。

 あそこだけかなり細い道となっており、迂回ルートもかなり大回りになる。

 それを考えると、どうしてもこの細い道を通ることになる。

 だが、そこを過ぎれば後は楽なものだ。

 比較的開けた場所が多いから、後は大軍を持って悠々と進めばいい。


「オルビス様、敵伏兵は無いようです。流石に間に合わなかったのでしょう」

「まぁ、予想される展開にするほどアホな奴も居ないだろう。ただ、今後は油断するな。地図を見る限りここほどではないが、狭い場所もある。伏兵などに気を付けよ」

「はっ!」


 さて、後はゆるゆると進軍しながら、ネクロスを待つか。

 流石に私一人ではこの大軍は手に余る。


「ネクロスからの連絡はまだか?」

「はっ! ネクロス様は現在各領主の制圧を完了しこちらに向かっているとのことです。恐らく1、2週間以内に合流可能かと」

「では、それまでゆるゆると進軍する。良いか、武威を持って敵を圧倒せよ! 奴らに我らが威光を示すのだ!」


 俺の声に全軍が「おう!」と返事をする。

 ネクロスが手塩にかけて鍛えただけある。

 その後、俺達はゆっくりと行軍しながら、一番近い村へたどり着いた。


「先触れを出せ! 食料と家を提供するように言うのだ! もし拒否するようなら強奪して構わん!」


 指示を受けた兵が先触れとして村に入り、暫くして戻ってきた。


「オルビス様、ご報告申し上げます! 彼の村の住民は全て避難しているようです! また食料に関しても全て持ち去られており、家畜すら居ません!」

「ふむ、略奪を恐れたか? よい! 村を拠点に本日は野営を行う! 井戸には注意しろ!」


 少し当てが外れたな。

 流石に1万もの兵を食わせるには多少なりとも徴収せざるを得なかったのだが、全て持って逃げるとは。


「周辺に騎兵偵察をさせろ! 5人一組で3組。西、北、南へと派遣し、食料のありそうな村を探せ! あと輜重隊に遅れなく届けるよう厳命せよ!」

「はっ!」


 これで少しでも見つかればいいが。

 季節が悪かったかもしれない。

 春麦の収穫期を終え、現在田畑にあるのは秋麦だがまだ青すぎる。

 これでは青田刈りもできない状態だ。

 その後、自軍の食料を消費しながら先の村へと向かうも、どこもかしこも空となっていた。

 ただ、貴重品などは家に残しているようで、それを略奪して何とか兵の士気を保っているのが現状だ。

 そんな中、補給部隊がネクロスと共に到着した。


「殿下。後顧の憂いは取り除いてきましたが、輜重が問題のようで」

「そうなのだ。行けども行けども食料が無い。しかも略奪するために家財道具は全て置いてあるという丁寧さだ」

「そろそろ略奪を止めさせませんと、行軍に支障が出るのでは?」


 現在進軍している我が軍は、行程10日の所を、ネクロスを待つために15日としていた。

 そして、その行程15日すらも既に5日ほど遅れているのだ。

 

「確かに、これ以上は略奪しない様に通達しよう。荷馬車すらほとんど無いからな」

「はっ! ではその様に通達します」


 これでどうにかなるだろう。


次回更新は6月1日予定です。(私の誕生日ですね!╭( ・ㅂ・)و̑ グッ)


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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