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6-3

エルドール王国 ディークニクト


 二度目の使者を送って1か月。

 どうやら今度も会えなかったようで、平伏して報告をしてきた。


「誠に面目次第もございません。何度も外出の許可を取ろうと申請したのですが、それすらも……」

「まぁ、致し方ない。長い期間になってしまったからな、一度家でゆっくりと休め」


 使者だった男が部屋を出て行くと、主だった面々が今後の事を話し合い始めた。


「さて、報告を聞いた率直な感想をきかせてくれ」


 俺がそう言うと、アーネットが声をあげた。


「敵の真意は、こちらへの侵攻であると明々白々だ。ここは国境の防備を固めた方が良いと思うが」

「ふむ、確かに備えあれば患いなしと言うからな。クローリーはどう考える?」


 俺は、アーネットと斜め反対側に座っているクローリーへと視線を移した。

 ちなみに、クローリーは先日少し遅れて宰相補の役職に就かせている。


「陛下、そこは先に宰相に下問なさるべきかと……」

「ん? あぁ失礼した。昔の癖でクローリーを先に呼んでしまった。トーマン宰相どう考える?」


 俺が改めて宰相に問うと、初老の宰相はやれやれと言った様子を見せながら答え始めた。


「臣が思いますに、将軍の考えは理にかなっております」

「そうだろう、そうだろう」

「ですが、財政的には最悪の一手です」


 トーマンがそう言い切ると、先ほどまで少し得意気だったアーネットが憮然とした。

 まぁ、上げて落とされれば誰でも機嫌は悪くなるというものだ。


「トーマン、財政はそこまでひっ迫しているのか?」

「いえ、陛下。ひっ迫と言うほどではありません。今少し時間が必要なのです」

「というと?」

「現在我が国は、この大陸でも有数の商業都市と港を有しております。ですが、これまで戦続きだったのもあり、国庫がそろそろ尽きかけているのです」

「国庫を潤すにはしばらく時間が必要か……、どれくらい必要だと考えている?」


 俺が再び問うと、トーマンは財務表を出して見せてきた。


「そちらの表にある程度の数字を載せておりますが、約2年はかかるでしょうな」

「2年!? そんなに時間をかけてはこちらがやられるぞ!」


 トーマンの言った数字に、アーネットが驚きの声をあげた。

 確かに2年は長い。


「トーマン、もう少し長い間隔で国庫を潤すと考えれば、どれくらい出せる?」

「……年数にもよりますが、10年を目処に考えればこれくらいは……」


 そう言ってトーマンが示してきた数字も、とても足りないものだった。


「アーネット、少しきついかもしれんが一旦この予算で対策を練ってみてくれ」

「……馬防柵だけで防げと言う気か?」

「だが、これ以上は現状出せない」


 俺が言い切ると、アーネットは頭をかきむしりながら最後の要求を口にした。


「では、魔法兵を1個軍貸してくれ。あとドロシーも技術部門の監督官として派遣してほしい」

「魔法兵は大丈夫だが、ドロシーは本人が行くと言わないと無理だぞ?」

「そこを説得してくれ。俺ではあの魔女は説得できないし、実験の材料にされてしまいかねない」


 そう言って、アーネットは身震いしながら首を振った。

 おそらくアーネットが、この地上で恐れる女性二人のうちの一人だろう。

 ちなみに、もう一人はシャロというのは周知の事実だ。


「はぁ、王としては家臣仲良くしてくれる方がいいのだがな。まぁドロシーはどちらかと言うと、協力者くらいのものだが」

「だからこそ、王であり友であるディーが行くべきだ」


 珍しくぐうの音も出ない正論で返してきたので、俺もため息を吐きながら了承した。


「では、他に何かあるか?」


 俺が最後に全員を見回して問うと、特に誰も意見する気はなさそうだったので、終わりにした。



 軍議を終えてから数日後、俺はドロシーの元に行っていた。

 アーネットから言われていた件を話すためだ。


「……年々大きくなるなここは」


 俺が、そうぼやきながら見上げる建物は、約4階建ての左右300mはあろうかという巨大な建築物だ。

 これは、ドロシーが俺の所に居る間研究を続けられるようにする為に、建て増し続けている研究所だ。

 俺が近づくと、小太りな男が息を切らせて駆け足で来た。


「陛下! はぁはぁはぁ……ご足労、ありがとう、ございます……。本日はどのようなご用件で?」


 この男は、ドロシーの研究を補佐する為に居るいわば副所長だ。


「なに、ドロシーに用事があったので、ついでに研究所の成果も見に来たんだ」

「それはそれは、ありがとうございます! ではこちらにどうぞ!」


 そう言って副所長が壁の一部に手をかざすと、地鳴りをあげながら扉が開いた。


「おぉ! これはどうなっているんだ?」

「魔力感知式の自動扉です。登録されている者がこちらに手をかざして魔力をながしますと、反応して開く仕組みになっております」


 なんともまぁ、セキュリティ対策万全の研究施設じゃないか……。

 俺が唖然としていると、副所長が中に入るように急かしてきた。

 なんでもこの扉、一度開くとすぐに閉まり始め、完全に閉まると数分はロックされるそうだ。

 便利なんだか、不便なんだか分からない代物だな。

 俺がそんな感想を持ちながら、研究所の中へと足を踏み入れるのだった。


次回更新予定は1月12日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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