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6-2

 謁見の間で相対したリオールは、周囲を睥睨すると口角を釣り上げてきた。


「ふむ、なるほどな。確かに勇猛な者は揃っている様だな」

「勇将と名をはせたリオール殿からお褒めを頂けるとは、自慢のし甲斐もあるというものだ」

「だが、惜しいかな人が居らぬ」


 リオールがそう言うと、周囲の武官たちの手が一斉に剣の柄へと向かった。

 俺は、そんな彼らを制してリオールに訊ねた。


「人が居ないとはどういう意味かな? ここに居るのは歴戦の猛者と有能な官吏たちだが?」

「確かに猛者だろう。ただ、それは将としてではなく駒としてだ。確かに有能だろう。ただ、それは官吏としてではなく犬として、だな」

「ほぅ、この者たちを駒と犬と言い捨てるか? 理由を聞こう」


 俺がそう問うと、リオールはまず武官について口を開いた。


「確かに猛者は揃っている。だが兵法を知るものが少なすぎる。恐らく一軍を完璧に率いれるのは、そこのごついエルフとキールくらいだろう。後は少し腕っぷしのたつ兵士に過ぎない」


 武官について言い切ると、次は文官の方に向き直った。


「確かに優秀な官吏は育っている。だが、見た所気概と気骨のある者はそこの宰相だけだ。それ以外は命令をただ忠実にこなすだけの犬と変わらぬ」


 官吏と武官を批判した彼は、俺の方に向き直って「どうだ?」と言わんばかりの顔を見せた。

 確かに武官については育成が追いついていないし、官吏たちは独創性などほぼない。


「なるほど、そう言われては言い返しようがない。だが、何故そんな軍に貴方は負けたのだ?」

「簡単な事だ。将たる私が追い詰められていたからだ。そこにお前たちがタイミングよく来ただけのこと」

「確かに先年の戦い、貴方は追い詰められていた。それも同族の貴族からだ。あれ以上時間をかけては、寝がえりが多くなり、地盤がどんどん弱体化する。だからこそ強硬だとしても一気に終わらせる必要があった」


 俺がそう言うと、彼は頷いてきた。


「しかり、あそこで他の貴族たちが一致団結していれば、我らの勝利だった。そしてこの場での立場は逆転していたはずだ」

「だが、そうはならなかった。そして、その貴族の寝がえりの工作を行ったのは、今さっき貴方が犬と言った官吏たちで、打ち破ったのは腕っぷしだけと言った将と兵たちだ」


 俺がそこまで言うと、彼は押し黙った。

 これ以上の問答は、俺にも不要だった。


「では、元王子リオールに告げる。エルフの里にて隠棲を命じる。田舎でじっくりと自問自答を繰り返されよ。あと、出立前にワーカーに挨拶することも許可する」


 そう言うと、彼は何も言わず一礼して出て行くのだった。




獣王国 エルババ


 使者を送って数日、またエイデンを戻すように使者が来た。


「こちらの条件をエイデン様に、直にお渡ししたく思っております。どうぞ、お引き合わせくださいますよう、よろしくお願いいたします」


 使者の男は、俺の前で額を地につけて叩頭している。

 そんな事をされても、会わせる気など俺には毛頭ない。

 だが、それを対外的に出すわけにもいかず。


「使者殿、そのような事をなさらずお立ちください。それに、俺としても会わせたいと思うのですが、エイデン殿がそれはもう絶対に会わないと意固地になっておりましてな」

「さようでございますか? それでもなお、エルババ様のお力添えを頂きたく」


 そう言って、使者はまた地に頭を擦り付けて頼み込んできた。

 全くもって何ともしようがない。

 おそらくこの使者は、会うまでこのままだろう。

 そして、エイデンと使者が会えば、恐らく連れ戻されてしまう。

 そうなれば、攻める大義名分が無くなる。


「はぁ……、かしこまりました。使者殿には申し訳ないが少しお時間を頂いてもよいか? こちらも誠心誠意を込めてエイデン殿を説得させて頂くので」

「本当でございますか? ありがとうございます。是非ともよろしくお願いいたします」


 そう言うと、使者は先ほどまで地につけていた頭を上げて礼をしてきた。

 まったくもって現金なものだ。


「では使者殿を客間へお通ししろ」


 俺がそう言うと、衛兵が進み出て使者を案内していった。

 使者が出て行くのを見計らって、俺は近くに居た武官を手招きで呼んだ。


「いいか、使者の部屋の前、窓の前に十分に兵を配置しろ。誰とも会わない様に一切の面会者も謝絶する様に」

「かしこまりました。外出要求にも答えさせない形でよろしいでしょうか?」

「構わぬ。1、2週間ほどしたら俺がダメだったと伝えに行く。それで少しは納得するだろう」


 俺がそう命令すると、武官は一礼して部屋を出て行くのだった。


次回更新予定は1月10日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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