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少し短いです。
元第一王子領付近 ディークニクト
敵を迎え撃つ準備を始めていると、一人の兵が走ってきた。
「ディークニクト様! アーネット、キール両将から伝令が来ました!」
「すぐに通せ!」
俺がそう言うと、伝令の兵は急いで近づいてきた。
「ディークニクト様! アーネット様とキール様からの伝言です! 『予想以上に森が無くなっているので、機動的に動き敵を遅滞させる。迎撃の準備急がれたし』以上でございます!」
「両将は、森が無くなっている原因は調べていたか?」
「はっ! 森が無くなった原因は、総主教の要請で大聖堂を立てようとしていたから、とのことであります」
森が無くなっている原因も見つけた上でか……。
暴走とは訳が違いそうだ。
「よし! 分かった。後はこちらでどうにかする。お前は原隊復帰かこちらに残るかどっちだ?」
「私には、こちらに残るよう命令を受けております!」
「では、すぐさま穴掘りに参加しろ! 冥界の扉を開けるくらい深く掘るんだ!」
俺がそう言うと、伝令の兵は飛び出していった。
「さて、敵の動きがどうなるか……」
機動強襲部隊 キール
先日の流民部隊を追い払った後、次にやってきたのは哨戒部隊だった。
騎馬を駆って我々を探して回る彼らは、厄介極まりない。
「さて、どうしたものですかね。こうも隙間なくウロウロされては、伝令すら出せないですな」
「物資のいくつかも、敵に見つかっている可能性がありますね」
私が物見の兵に呟くと、彼もまた私見を述べてきた。
流石に鍛えているだけあって、しっかりと状況を把握できていますな。
「恐らくその読みはあたっているでしょうな。さてどうしたものか……」
伝令が出せないという事は、アーネット殿ともディークニクト様とも連絡が取れないということ。
しかも相手は哨戒部隊に恐らく2~3千を投入しており、こちらの部隊の4~6倍。
「勝てる見込みがあまりありませんな。せめてアーネット殿と合流できれば」
アーネット殿と合流できれば、彼我の戦力差が2~3倍にまで縮まる。
もちろん普段ならそれではダメなのだが、私とアーネット殿が居ればそれくらいの差はひっくり返せる。
「なんとしてでもアーネット殿と合流せねば……、いっそのこと全員で突っ込んでしまいましょうか?」
「それは、確かにできるとは思いますが……」
ここで、普通の兵なら「無茶を」とでも言って渋るんですがね。
流石はアーネット殿が鍛えただけあって、怖いもの知らずが多いのでしょう。
「ふむ、このまま手をこまねいていてはいけませんし、最低限度の食料だけ確保して突破しますか」
「では、皆にそう伝えてまいります」
「えぇ、よろしく頼みましたぞ」
私がそう言って、物見の兵を見送る。
こんな状況で嬉々とできるという事は、それ相応の修羅場をくぐり、死地を経験していないとできない事だ。
「全く、アーネット殿の鍛え方は恐ろしいものですな……」
私はぼやきながらも、物見が居なくなったので、代わりに見張りを続けるのだった。
次回更新予定は12月14日予定です。
今後もご後援よろしくお願いいたします。




