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5-6

王都郊外 エイデン


 王都を出て少しした頃、俺の邸宅がある方角から火事が起こった。

 おそらく、半分暴徒と化した兵たちが乱入してきたのだろう。


「まさかと思ったが、第三王女……セレスが王宮を牛耳るとはな」

「ですが、王子の予感で我らは無事脱出できました。今後はどうされますか?」


 そう言われて、俺は少し考えたができる事なんて少ししかない。

 一つは、第一王子に合流してともに奴らを討つこと。

 もう一つは、獣王国に居る叔父である国王に慈悲を求めること。

 ただ、第一王子に合流して打ち破っても、次に待っているのは粛清だ。

 獣王国に行っても、待っているのはこの国を攻める為の、生きる大義名分になることだけ。


「さて、どっちにしたものか、獣王国かリオールのところか……」


 俺が悩んでいると、側近の一人が口を挟んできた。


「エイデン様、エルフに降るという手もありませんでしょうか? 確か奴らの分隊が第一王子の軍を破ったと聞き及んでおります」

「川で拮抗していると聞いていたが? 他にも部隊を分けていたのか?」


 俺が尋ねると、口を挟んできた男は頷いた。

 聞いてない。

 俺は、そんな話聞いてなかったぞ。

 内心報告が来てないことに苛立ちを覚えたが、なんとか口から出さずに飲み込めた。

 今はそれよりも情報を得ないといけない。


「ふむ……、で戦況はエルフが有利と?」

「有利どころか、第一王子領を占領したと聞き及んでいます。それも内部からの離反で」

「……リオールは清濁併せ吞むタイプだからな。濁った方を領内に残していたんだろうな」


 そうなると、このまま第一王子に行くよりも、エルフに合流する方が……。

 俺がそんな決断を下そうとすると、また別の側近が口を挟んできた。


「エイデン様、エルフに合流するのは危なくはないですか? 第三王女は、確かエルフと親しかったはず。もしかすると、首を差し出せと言われたら」

「むむむ……、確かにそれはまずいな。だが、俺の予感は何も言ってないんだよな」


 ただ、可能性としてはあり得る。

 その事を理解した上で行かないと、いつ逃げるべきかも分からなくなってしまう。


「とりあえず、この場を離れる。これが一番大事な事だ。あいつらに追いつかれては元も子もないからな」


 俺がとりあえずの決断を下すと、全員が一斉に頷いた。

 まずは逃げて、少し落ち着ける場所を探すのだった。




王城内 セレス


「第四王子の姿は突入時には既になく、何処かへと逃亡をしたものと……」


 私の前で第三、第五王子の側近を務めていた者たちが、うな垂れて報告をしている。

 まぁ、第四王子の件については予想していたので、しかたない。

 だが、この好機も利用しなければならない。


「そう、それじゃあなた達の失敗ね?」

「「…………」」


 私がそう言うと、意外と潔い態度を見せる。

 もう少し言い訳をしたり、するかと思ったのだけど。

 だからと言って、彼らを許してはならない。

 牙を磨くものは、今のうちに殺しておかなければ、後々の禍根になる。


「言い訳をしないのは見事ね。だけど、あなた達には退場してもらうわ」


 私がそう言うと、衛兵数名が彼らを拘束して連れ出していく。

 その間も、彼らは一切なにも言わずに出て行くのだった。


「私も、もっとあんな臣が欲しいわね」


 私がそう呟くと、傍に控えていたキールが苦笑する。

 確かにキールは万夫不当の猛将だけど、彼だけではいずれ破綻してしまう。

 特に、彼が私よりも年上なのがいけない。


「さて、無いものねだりを今しても意味は無いわ。今後の予定だけどどうなっているかしら?」


 私が問いかけると、列席した文官の中から一人が声をあげた。


「はっ! 敵の反抗がさほどでもありませんでしたので、まずは人心の安定が先決かと」

「わかりました。まずは、国王の死を公表し私が王位に就くこと、また私の名前で国庫を開いて国民に食糧を提供しなさい」

「かしこまりました!」


 私の命令を聞いた文官は、すぐさま部屋を出て行った。

 そして、彼が出て行くのと同時に私は、キールに名前を調べておくように伝える。

 少しでも見どころのある者を抱え込まなければ、いけない。


「さて、とり急ぐべきことは以上ね? では日々の業務に戻りなさい」


 私がそう言うと、他の文武の官も部屋を出て行き、それぞれの仕事に戻った。

 そんな様子を見送ってから、私はキールに命令を伝えた。


「キール、今からとある場所へと行ってもらいます」

「例の方のところですな」

「えぇ、その人のところよ。そして、話がまとまったら大々的に報じなさい。そうすれば、第四王子も行き場がなくなるわ」


 私がそう言うと、キールはニッコリと笑いってから出て行った。

 さぁ、打てる手はこれで全部打った。

 後は、受け入れられるかどうか。

 少なくとも後世の歴史家には、私を非難する人も居るでしょうけど。


次回更新予定は11月9日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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