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二人の兄を処断した私は、その首を持って王城の正門前へと移動した。
これから残っている兄たちの軍を動かさなければならない。
事前に調べていた限りだと、兄たちの軍は居ても各軍千人程度。
だが、王城内に居る私の軍は精々30程度。
なので、ここで彼らを動かせなければ私たちが詰んでしまう。
「さて、キール。本当にここからどうしましょうね」
「姫様、ここで引き返すなんてことは出来ませんぞ。覚悟を決める以外に道はありませんからな」
「はぁ……、本当にガラじゃないとおもうのよね」
「ガラじゃなくてもやって頂かねばなりませんぞ。ささ、この先で待っております」
そう言って、キールが扉を開けると、総勢約2千の兵が門の前でいがみ合っていた。
まぁ、現実的に考えて両者の関係が悪いので、当然と言えば当然。
むしろ、殺し合いを始めてないだけ理性的と言えるかもしれない。
そんな兵たちも、私たちの姿を見て視線を上げてきた。
「おい、あれはセレス王女じゃないか?」
「若様が居られんぞ」
私とキール以外に居ない事を見て、兵たちがざわつき始めた。
そんな兵たちを無視して私は、口を開いた。
「第三王子、第五王子の兵たちよ! 君たちの主人であり、私の兄たちは謀反の罪で国王に処断された!」
「何を言っているんだ!」
「そうだそうだ! 国王様はどこだ!」
私から聞かされた内容が内容だけに、兵たちは声を荒げた。
自分たちの主人が殺されれば、次に殺されるのは自分たちかもしれないのだ。
そんな騒ぐ兵たちを私は、一喝した。
「うるさい!」
「うっ……」
「ぐっ……」
もっとも、私の一喝よりも私の後ろからキールが放つ殺気の方が効果は大きい。
だが、そんな事気にしていてはいけない。
私は、キールの手助けを知らないふりをしながら話を続けた。
「お前たちに残っている道は二つに一つ! 王国の反逆者として処断されるか! 今後も王国に忠誠を誓って今すぐに第四王子を捕まえるか! さぁ、どっちを選ぶ!?」
私が強い口調でそう言うと、兵たちは迷った挙句膝をついた。
「では、今すぐに第四王子を捕まえてきなさい! 捕まえた者には褒美が待っていると国王様からのお達しもある!」
「褒美!?」
先ほどまで苦渋の表情で俯いた顔が、一気に花開いたような顔になった。
全く現金な話だが、これも人だという。
「分かったらすぐに行きなさい!」
私が号令を下すと、先ほどまで膝をついていた騎士たちが、我先にと駆けだした。
これで、暫くは大丈夫だろう。
後は、第四王子を捕まえられたらいいのだが、あの人は意外と危機察知能力が高いから逃げるだろうな。
「とりあえず、これで大丈夫かしら?」
「兵たちの人心はこちらに傾きました。ですが、第四王子は」
「捕まらないわよね。あの人あれで半分は獣人の血だから……」
第四王子エイデンは、獣王国出身の母を持っている。
獣王国の男女は、基本的に筋肉質で引き締まった体に動物の特徴的な部分を体に持っている。
例えば猫系の人は目、犬系だと耳などである。
また、体毛の多い少ないや、鱗系のあるなしなど、色々な人が居る。
そんな獣人の母を持つエイデンだが、当の本人はかなり太っており、見た目も人族と変わらない。
強いて言うなら、嗅覚や聴覚などが優れているくらいだった。
「その辺は、致し方ないのでは? それに、彼らが逃げようとしますと、第一王子軍とエルフ軍の戦場を超える事になります。もしかすると、そこでという事も」
「……それだと面倒くさくなりそうよね」
「まぁ首印を別の方が挙げてしまうと、面倒ではありますね」
今現在聞いている限りでは、エルフ軍が第一王子軍を、河を挟んで抑え込んでいるが、予断を許さない状態だという。
「均衡が崩れる恐れもありますからな。おかしなことにならないことを祈りましょう」
「本当に、軍事ってお祈りが好きね」
「まぁ、水物ですからな。人事を尽くしたら、あとは祈るだけです」
そう言って、キールは指を宙で十字に切って祈るふりをする。
それにならって、私も同じように祈るふりをするのだった。
次回更新予定は11月7日です。
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