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5-4

王城前 セレス


「ふぅー、流石にお父様を支えるのは辛いわ」

「姫様、そろそろ陛下をお戻しになりませんと」

「えぇ、そうね。ゆっくりと寝て頂かないといけませんわ」


 私はそう言うと、窓辺まで持って行っていたお父様をベッドへと戻した。

 その体は既に冷たく、生気を感じられない。


「まさか、国王陛下がお亡くなりになっていたとは……」

「私も予想外だったわ。それをあの主治医は、ひた隠しに隠していたのだから」


 事の顛末は簡単だった。

 お父様の病気は、発覚と同時に既に手遅れだったのだ。

 おそらく我慢強いお父様だから、我慢ができなくなるまで平気な顔をしていたのだろう。

 そして、正式な王妃を立てなかったのも災いしている。

 無理矢理私が推した主治医も、「恐らく発見が早ければもう少し長生きできたであろう」と言っていた。

 ただ、この事を国中に知らせるにはあまりにも大きすぎるという事で、私以外に知っているのは、主治医だけだ。


「さて、これでお兄様達のうち何人がのこのことやってくるかしら?」

「恐らくですが、2人はお越しになられるかと」


 この二人とは、第五王子と第三王子の事だ。

 第三王子は、既にこちらの奇襲に失敗したので、お父様の温情にすがろうとする。

 第五王子は、基本的にお父様の事を怖がっている。

 だからこそ、この二人はここにやってくる。

 だけど、問題は第四王子だ。

 あの人の支持母体は国外。

 それも隣国の獣王国だから、どう考えてもこちらに来るよりも、勢力を保って国外に行く方が良い。

 そうすれば、最悪獣王国の国王が我が国征服を第四王子の帰還、という名目で進められるからだ。


「まずは、第四王子の確保を急がないといけないわね。何か手は無いかしら?」

「残念ながら、我々の手勢だけでは辛いものがあります。まずは第三、第五両王子を確保して、その勢力をもってあたるのがよろしいかと、存じます」


 確かにキールの言う通りだ。

 元々小勢力の私たちだが、第七王女の支持母体を吸収したと言っても、全ては掌握しきれていない。

 以前から声をかけていた者たち、精々30~40名程度の騎士くらいなのだ。

 それに引き換え第四王子は、独自の勢力を既に構築しており、獣王国からも将官が何人か派遣されている。

 規模としても千人近い兵が居るので、正直迂闊に手を出すと返り討ちにあいかねない。


「そうね、まずは第三、第五王子の首を取って、第四王子を追い詰めましょう。まずは彼らには謁見の間に通して」

「なるほど、帯刀を禁じるのですな。それはよきお考えかと」

「後は、兵たちに首を見せて言い放ってやりなさい。第四王子の首を挙げた者に将官の位を授けると」


 私がそこまで言うと、キールは会釈して部屋を出て行った。

 後は彼に任せておけばいい。

 そう思いながら、私はお父様の頬をそっと撫でた。





 数時間後、予想通り第三、第五王子が到着した。

 彼らは一応軍勢を連れているが、父が蘇っていると勘違いしているので、門前に待機させている。

 そして、何の疑いもなく謁見の間にやってきた。


「第三、第五王子ご入来!!」


 扉の前で、到着を知らせる係の声が響く。

 そして、扉が開かれて二人の男が入ってきた。

 一人は黒髪に黒目、黄土色の肌をしてローブを着込んでいた。

 もう一人は、金髪碧眼で白い色の肌をして鎧を着こんでいた。

 その二人が謁見の間に入り、私の目の前で跪く。

 目をずっと伏せているので、私の事が目に入っていないのだろう。

 そんな二人を見下ろしながら、私が口を開く。


「面を上げなさい。お兄様方」


 私の声を聴いた瞬間、二人の兄の顔が跳ね上がる。


「な、なぜお前が、玉座に座っているんだ!」

「そこは、父上の場所だ! お前の様な者が座って良い場所ではない!」


 私の姿を見た途端、これだ。

 ここに座っているという事が、どういう事かも分かっていない。


「私は、父の名代としてここに座っています。そこに異を挟むという事は父上に対する反逆と捉えますが?」

「グッ……!」


 父の名代という言葉が聞いたのだろう、2人は押し黙った。

 まぁ、もっともこの二人には今から首になってもらわないといけませんが。


「さて、お兄様がた。お父様はとても悲しんでおられました。兄弟で殺し合い、戦争をするなどと」

「それをしたのはアルバス兄さんだけだ! 私は自衛のために兵を集めただけだ!」

「な、なにを言うか! オリバー! お前だってエイデンに書簡を送っていただろう!」

「それは、お互いに攻めないで居ましょうという話です! 野心など!」


 それから二人は、互いに互いを罵りあい続ける。

 見ていて清々しいほど、醜い。


「お兄様方、残念なお知らせがあります」


 私のその一言に、先ほどまで言い合いをしていた二人の顔が跳ね上がる。


「ま、まさかお前……」

「私たちを……」

「えぇ、そのまさかですよ。お兄様方、国の為に死んでください」


 私が、そう言って手を挙げるのと同時にキールが躍り出て、二人の兄は首になった。

 さぁ、これであとは第四王子だけだ。


次回更新予定は11月5日です。


今後もご後援よろしくお願いいたします。

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