第12話
カズマに好きな家を使っていいと言われたマクシム率いる冒険者達は思い思いの家に入って夜を明かした。既に深夜となり暗くなっていたことや久しぶりに温かい布団で眠れたことで朝まで起きなかった。一人を除いて。
「…」
ハーランは一人布団の中で考えていた。それはカズマという少年についてだ。
「(あのカズマとかいう少年、本当に人間なのか?)」
疑問に思ったのはその目を見てからだ。その目には俺達を獲物のように見ていた。もっと言えば新しいおもちゃを手に入れた子供のような目であった。
少なくともハーランはそのように感じていた。
「(…もしかしてあいつは吸血鬼みたいなものなのかもしれない)」
人間を獲物としてみる種族は吸血鬼位である。血を食料としている彼等は血を求めて他種族を襲う。その中で人間への被害が一番大きかった。その理由としては人間の血が一番美味しいかららしい。
人間からしてみれば迷惑この上ないが吸血鬼と人間では圧倒的に吸血鬼の方が強かった。それでも吸血鬼を倒せる人間もいるが。
「(奴が吸血鬼と仮定するなら今夜はねないのが得策だな)」
他のメンバーに話すと言うてもあったが監視されている可能性もあり迂闊な行動は避けたかった。それに今の段階では仮定でしかないためメンバーに話すのは気が引けた。
「(取り合えず今夜はねないでいざというときに備えるか)」
そう思いハーランは眠りにつくのであった。
結局ハーランの考えたようなことは起きずに朝を迎えた。
「いや~、何から何までお世話になりました」
リーダーのマクシムがカズマに代表してお礼をいった。
「いえ、こちらも久し振りに人と話せてよかったですよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「それじゃあ俺達はこれで」
そう言ってマキシム達は村を後にした。カズマはそれを見えなくなるまで見送った。
「…こっちに来てから初めて人間と話せたな」
カズマはそう呟き村の中へ戻っていった。