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正しい魔法の使い方

作者: 神奈宏信

言葉を使うからこそ、一度は考えたこと。言葉の面白さを物語りにしてみました。

『正しい魔法の使い方』


例えば、魔法が使えたとして——。

「あなたなら、それで何をします?」

真っ白い世界。

何もない。

ただ、そこに壁があるかのようにもたれかかって立つ黒いコート姿の男はそう問いかけた。

座り込む私は、顔を上げて、何のことかもわからずにぽかんとした顔で彼を見つめていた。

男は、シルクハットの向こうから微かに覗く目を細めて、黙って返事を待っている。

状況が理解できず、事態を把握できずに私は馬鹿みたいに口を開けて彼を見ているだけだった。

魔法って何?

ここってどこ?

あまりにも混乱していたからだろうか。

最初に口を突いて出た言葉は我ながらに意味不明の言葉だった。

「それって、どんな魔法なんですか?」

言ってから内心で、何を馬鹿なことを言ったのだと慌てふためく。

まずは聞くことが、他に幾らでもあっただろうに。

男はポケットに手を入れて、見えない壁にもたれ掛かったままそうですね、と呟いた。

「あなた次第です。」

「私、次第?」

「そう。あなた次第で魔法も様々に形を変える。」

形を変えるって言われても・・・。

漸く頭も冷静になった私は、おずおずと手を挙げた。

「あの。質問・・・いいですか?」

「どうぞ。」

「ここって、どこです?あなたは、誰です?」

ほほう、と呟き、男はポケットから手を出して顎に当てるという、初めての仕草を見せた。

「ここですか。ここは、あなたの夢の中です。」

「は?」

彼がそう告げた。

その瞬間、突然視界が暗転する。

けたたましい音と共に、背中に衝撃を受ける。

「痛っ!!」

どうやら、ベッドから落ちて背中をしこたま打ちつけたようだ。

ドンドン、と私の部屋を誰かが乱暴に叩いている。

「菫!!何やってるのよ!!とっくに起きる時間過ぎてるわよ。」

「はあぁ?」

寝ぼけ眼を擦り、必死に意識を覚醒させながら枕元にある携帯に手を延ばす。

電源を入れて、ディスプレイに出たロックを外すと既に八時を超えていた。

そして、どうやらタイマーを付け忘れていたということもわかった。

「やっば!!」

「遅刻するわよ!」

「わかってるよ!!」

慌てて立ち上がり、クローゼットにかけてある制服を乱暴に引っ張り出す。

寝巻きは、ベッドの上で脱ぎ散らかして制服に袖を通す。

あと、十分でバスが出る。

乗り損ねれば遅刻確定だ。

机の上においてある鞄をひったくるように手にして、扉の鍵を開ける。

身を引いた母親の間を通り過ぎて、階段を駆け下る。

「ちょっと、菫!朝食は?」

「食べてる場合じゃない!!」

一段飛ばしに降りて、慌てて革靴に足を入れる。

いってきます、と叫び、呆れる母の視線を背後に浴びながらも、私は家を飛び出した。


全力疾走で駆け抜けた甲斐あって、何とかバスには間に合った。

発車寸前のそれに飛び乗り、手すりを掴みながら荒く息をする。

「な、何が魔法よ・・・。」

あんな馬鹿な夢を見ていたせいで、危うく遅れるところだった。

ぜえぜえと息をしながら、呼吸を整える。

ぎりぎりなラインではあるが、これで遅刻は免れるだろう。

それにしても・・・。

冷静になればなるほど、夢のことがはっきりと鮮明に呼び起こされた。

あんな夢を見たのは初めてだ。

例えば、魔法が使えたとして——。

「魔法・・・。」

鞄を片手に引っさげ、つり革から手を外して手のひらを見つめる。

それを、さりげなく目の前に翳して見る。

「でるわけないか。」

夢は夢だよね、と心の内で呟く。

まあ、唐突にこんなところで炎が出ても困るわけではあるが。

それにしても、鮮明なんだよな・・・。

細かいところまでが、記憶に残っている。

魔法・・・。

考えている内に、学校の前に到着する。

「おはよう!」

通り過ぎていく友達に、おはようと手を振りながら、私はまた思案に耽っていた。

何をする、といわれてもな。

一層のこと、世界征服・・・。

なんて柄にもないことを考えて見て、馬鹿馬鹿しいとため息をついた。

下駄箱で上靴に履き替えて、考えても仕方ないことにいつまでもとらわれている自分を自嘲する。

夢は夢でしょう。

誰に言っても、そう言われるに違いない。

「そんなのわかってるんだけどさ。なんだかなぁ。」

「何が?」

誰に言うわけでもなく呟いたはずが、返事があって驚く。

階段を昇っていた私は、驚きのあまり、二段ぐらい後ろに下がった。

ぼさぼさの髪の男子生徒が、ポケットに手を突っ込んでこちらを不思議そうに見ている。

昇ってくる私と違って、彼は私から見て左にある上の階に上がる階段から降りてくる。

確か、同じクラスの生徒だったと思うが。

「え、ええっと、岸塚、君。だっけ?」

「うん。そうだけど。」

岸塚君は、転校してきたクラスメートだ。

とはいえ、独特の雰囲気は人を寄せ付けがたく、ほとんど彼と話したことはないし、彼の友人というのもあまり思い当たらない。

それに加えて、彼はいつも教室にいないのだ。

休み時間は机に突っ伏しているだけだし、昼休みになればどこかへ行ってしまう。

そんな彼に声をかけられると思っていなかった私は、見事に不意を突かれた格好になった。

我ながらに、情けない対応だと思う。

それにしても、岸塚君が声をかけてくるとは思わなかった。

「で、冷泉さ。何がわかってるって?」

しかも、名前も覚えられているとは。

こちらは、何となく確かそうだったような程度だというのに、彼ははっきりと私の苗字を呼んだ。

意外と、クラスメートの名前は覚えているのだろうか。

想像していた岸塚君のイメージと、何か違う。

「いや、その。今朝、変な夢見てたから。」

「夢?」

「うん。なんだかさ、例えば魔法が使えたとしたら、それで何をするかって夢。」

何で、こんなことを話しているのだろうと、口にしてから冷静になる。

「ご、ごめんえっと、岸塚君。忘れて忘れて。」

慌てて片手を振って、忘れるよう彼に促す。

こんな話をするなんてどうかしている。

「いいじゃん。面白そうでさ。なんて答えたの?」

「へ?いや、別になんとも。」

「魔法が使えたらな。俺なら、世界といわずとも誰かの英雄になりたいかな。」

「え?何それ。」

岸塚君がそんなことを考えているとは思ってもいなかったので、正直に驚いた。

目を丸くする私の隣で、岸塚君は声を立てて笑った。

「変だろ?でもさ、俺本とか好きだから。」

「へえ。意外。」

「魔法って何だろうな。」

「え?」

「あると見ればあるし、ないといえばないんじゃないかと思うよ。」

こんなにも饒舌に喋る相手だったとは。

それも、あんなくだらない夢の話を、目を輝かせながら楽しそうに語る。

なんとも、岸塚君の意外すぎる一面を見せ付けられ続ける私は、狼狽してばかりだ。

「あるって、まさかさ。大道芸じゃないんだから。」

「いや、そうじゃないって。お前だって持ってるじゃん。」

「私も持ってる!?」

我ながらに素っ頓狂な声を上げたと思う。

「何、それ?」

「魔法。言葉だって。」

「言葉ぁ?」

「だってさ。言葉って面白いだろ。それ一つで、人を救えることだってあるんだぜ。」

はあ、と返事を返しながら彼の横顔を覗き込む。

大真面目に語っているようだ。

不良っぽい彼が、こんなことを考えているとは。

「まあ、逆もあるけどな。言葉一つで、人殺すことだってできる。それに、本当に救ってやれる奴なんて、それこそ一部の英雄みたいな奴だけなんだとは思ってる。」

「英雄かぁ・・・。」

「そう。だから、魔法が使えるなら英雄になってみたい。」

「いやはや・・・。まさか、ここまで大真面目に夢の話をされるとは思わなかったわ。」

「夢だから、何でもありだろ?」

その辺りで教室に着く。

彼は、じゃあなと手を挙げて、欠伸を噛み殺しながら自分の席に戻っていった。

その後ろ姿を、私はただ何となく見送った。

「何、菫。岸塚君と一緒にいるなんて珍しいじゃん。」

「あ、いや、克美。別にたまたまそこであってさ。」

永原克美は、ミドルのストレートヘアを揺らしながら、気のなさそうな目でこちらを見ている。

いつも彼女の目はそんなものだが、話してみればいい人だ。

「何話してたのさ。」

「いや、なんだか今日見たくだらない夢の話をつらつらとさ。」

頭を掻きながら、ぼうっと窓の外を眺めて座る彼を見据える。

「あんなに喋るとは思わなかったな。」

「あいつ、無愛想そうで結構愛想いいよ。」

「詳しいね。もしかして、親しいの?」

「まあ・・・交友がないと言えば嘘になる。」

「マジで。」

克美が岸塚君と交友があるとは思わなかった。

それから、彼がしていた話を聞かせると克美にしては珍しく小さくではあるが笑った。

「岸塚君らしいね。あいつ、本とか好きだから。」

「いや、もう。あんな話で盛り上がってるのを見てるとびっくりしちゃってねぇ。」

「まあ、あんたもどんな夢見てるんだか。情緒不安定なんじゃない?」

「そうかも。」

魔法かぁ、と呟いたところで担任が教室に入ってくる。

克美はじゃあ、といって席に戻っていった。


例えば、魔法が使えたとして——。

頬杖を突きながら、板書を進めて説明を織り交ぜる教員の話を右から左へと聞き流す。

何だか、鮮烈に残っているんだよな。

白い何もない空間に居た黒い服の男。

彼は、私に何かを語りたかったのだろうか。

いや、そんなわけないか。

ため息を一つついて、板書をノートに書き写していく。

あんなもの、たまたま見た夢の中に一ページに過ぎない。

『魔法。言葉だって。』

ノートにシャープペンを走らせている最中、急に脳裏に響く言葉があった。

岸塚君が言った一言。

彼が、大真面目に語ったあの言葉が、何となく思い出された。

何?私に誰かを言葉で救えというの?

いや、まさか。

あんなものはただの夢にすぎない・・・はず。

何となく、頭の中をもやもやしたものが離れない。

そんな物語のようなことが起きるはずないというのに。

「それじゃあ、今日はここまで。」

単調な授業時間は過ぎていく。

放課後になるまでには、あれだけ青かった空も気がつけば鈍色に染まっている。

「今日、雨だっけ。」

授業道具を鞄に押し込みながら、曇り空を見上げる。

傘なるものは手元にはない。

降られるのは嫌だな、と心の中で呟いた。

「あーあ。にしても今日はなんだったんだろうな・・・。」

「何が?」

教室を出ようとしていた克美がこちらに気がついて声をかけてくる。

「あ、いや。夢に引きずられっぱなしだったと思って。」

「まだ、あんな夢のこと考えてたの?」

呆れたような顔つきで克美は言う。

ふう、とため息をついて首を小さく左右に振った彼女は、きっぱりと私に向かって言った。

「夢は夢だって。」

「そうだよなぁ。うん。わかってるんだけどさ。」

何か引っかかるんだよな。

「ほら。あんた部活でしょ?私もバイトだから、もう行くね。」

「あ、うん。またね。克美。」

軽く手を振って、克美と別れると、階段を下って体育館を目指す。

私が所属するのは、女子バスケットボール部であった。

教室に置きっぱなしにしてある体育着を手に、渡り廊下を歩いていく。

いい加減、持ってかえって洗濯でもしないとな、などと考えながら更衣室の扉を開いた。


また真っ白い何もない空間。

それでも、見えないがそこに椅子があってテーブルがあるのがわかる。

なぜなら、私がそこに座り、肘を突いているからだ。

隣に、あの黒い服の男も座っている。

「魔法って、なんなんですかね?」

「そうですね。あると見ればあるし、ないと思えばない。」

あれ?

そんな言葉を、どっかで聞いた気がする。

黒服の男は、楽しそうに笑った。

「あなたは、どんな魔法をお持ちなのですかね?」

「私の、魔法・・・?」

呟くのと同時に視界が暗転する。

はっと目を開くと、白い天井が目に入った。

カーテンから日差しが差し込んでいる。

やばい、またこんな時間か。

昨日ほどではないにせよ、また寝過ごしている。

「菫。いい加減起きなさい。」

「起きてるって。」

母に返事を返して、部屋を飛び出した。

今日は、ちゃんと朝食にありつけそうだ。

それにしても・・・。

二日も続けて、同じ夢。

「魔法って、何なんだろう。」

トーストを片手に呟いた。

それに対して、返事があるわけでもなければ答えがあるわけでもない。

くだらない、ただの夢と片付けてしまうのは簡単だ。

だが、何となく気になって仕方がなかった。

ここまで夢に振り回されてるとか、私も痛いなぁ。

身支度を整えつつ、自嘲気味に笑った。

鞄を手に、バス停へと向かう。

学校へは、思っていたより早く着いた。

階段を昇っていくと、丁度上の階に昇ろうとする岸塚君に出会う。

「あっ。」

「おっ。」

何となく目が合って、互いに小さく声を上げる。

悪戯っぽい顔をして、岸塚君は口を開いた。

「魔法、見つかったか?」

「いや、それがさ。また見たんだよねぇ。」

「いいじゃん。楽しそうで。」

何が楽しそうだというのか。

「いや、なんか今日も同じ夢見たんだよね。」

「二日続けてとか。なんかあるんじゃねえの?運命とか。」

「運命ね。あればいいけどさ。」

たまたま、だと思いたい。

情緒不安定なのかもな・・・。

ため息をつく私の前で、岸塚君は楽しそうに笑う。

「いいじゃん。夢はどんなものでも、見るのは自由じゃん。魔法とか楽しそうだし。」

「こっちは全然楽しくないけどね。」

「怖い夢とかじゃないんだからいいだろ?」

「いや、二日も続くとちょっとね。」

「何そんな深く考えてんのさ。」

小さく唸ってから、私はぽつりと呟いた。

「それこそ、運命とか・・・?」

「あったら、それはそれで素敵じゃん。」

あったらいいな、と笑いながら彼は上の階に上がっていく。

いつもそうだが、一体何をしているのだろうか。

その背中を見送りながらも、見えなくなった頃に私も教室へと歩き出した。


本当に運命なんてものがあるのだろうか。

結局、何事もなく放課後を迎える。

更衣室で着替えながら、何で夢なんかに引きずられなければならないのかとため息をついた。

「冷泉さん!」

練習試合の最中。

敵味方入り乱れて、ゴール下での激しい接戦の最中、同級生がボールをバウンドさせて私にパスを出す。

「カット!」

大声が響く。

ボールを取りに前に出たとき、横合いからディフェンスが割り込んできてボールを弾く。

先輩ではあるが、負けられないとこぼれたボールを追いかけて走る。

当然、その隣を先輩も走る。

結局、互いの手は届くことなく、ボールはラインを超えた。

それどころか、開けっ放しだった扉から飛び出して、グラウンドにまで出て行ってしまう。

「あーあ。」

慌てて私はボールを追いかけた。

上靴のまま、砂利の敷き詰められた体育館脇に出て、転がっていくボールを小走りに追いかける。

外では、野球部や陸上部、サッカー部などがそれぞれに声を上げて練習に励んでいる。

彼らの声を遠くに聞きながら、ボールを拾ってぽんと投げて弄びながら、体育館に戻っていく。

まさに、その時だった。

運命というものがあるならば、まさしくそれに出くわしたのは。

ボールを取りこぼしたことにも気づかずに、校舎を見上げる私の目は屋上に釘付けになっていた。

制服姿の少女が、柵を越えて屋上に立っている。

と、飛び降り自殺!?

そんな単語が頭を過ぎった時、私は慌てふためいた。

その時、急に声が聞こえた気がした。

例えば、魔法が使えるとして——。

『魔法。言葉だって。』

何かに弾かれるようにして走り出す。

体育館に戻ると、試合は放棄して慌てて体育館から校舎へ移る。

「冷泉!?」

先輩達の言葉を背中に受けても振り返ることなく走る。

階段を一段飛ばしに駆け上がり、屋上を必死に目指す。

まだ飛ぶな、まだ飛ぶな!!

祈るように内心で繰り返しながら、屋上を目指す。

こんな時、どうすればいいのだろうか。

もう、魔法でもなんでもいい。

とにかく、あの子を助けなきゃ!!


屋上の扉を開け放つと、急に強い風が吹き抜けた。

周囲を見渡すと、屋上の柵の向こうに佇む少女が一人。

見たこともないことから、同学年ではないことはわかった。

どうしていいかわからず、咄嗟に駆け寄った。

柵越しに手を伸ばして、細いその体をしっかりと抱きしめる。

自分でも、どうしてそんなことを叫んだのかわからなかった。

だが、内側から湧き上がるような感情が、不思議とそうさせていた。

「何で死ぬのさ!!お願いだから死なないでよ!!」

私の声が、屋上に響き渡り、消えていく。

少女に反応はない。

暫くの間、強く抱きしめていた。

すると、彼女は私の手に彼女の手を重ねてくる。

「なんで・・・そんなこと言うんです・・・?」

「わかんないよ!でも、お願いだから死んでほしくないの!!」

目一杯叫ぶ。

例えば、魔法が使えたとして——。

もう、魔法でもなんでもよかった。

目の前の命が助かるのならば、それにさえも縋りたい気分だ。

少女は、静かに私の左手に彼女の右手を重ねた。

肩が小さく震えている。

泣いているということは、何となく見て取れた。

「冷泉!」

扉が開いて、先生がこちらに駆け寄ってくる。

「何やってるの、西岡!」

先生は、少女をこちらに引き寄せて、肩に手を置く。

そのまま、少し話そうと声をかけて扉へ向かう。

屋上を降りる前に、少女はこちらに振り返った。

「ありがとう。」

小さくではあるが、彼女は笑顔を見せた。

なんと声をかけていいかわからず、狼狽している間に先生に連れられて少女はそのまま階段を下りていった。


残された私は、呆然と屋上に立ち尽くしていた。

風が吹き抜けて、髪を揺らす。

漸く我に返ると、その場にぺたんと座り込んでしまう。

「あ、あはは・・・。」

何とかなったことの安堵と、あまりに唐突なことの困惑が入り混じって頭が混乱している。

「よ。」

ぽんと、後ろから肩を軽く叩かれる。

岸塚君がにやにやしながら立っている。

「よかったじゃん。」

「見てたの?」

「まあね。」

「だったら、止めてよ!」

「あの状況でさ。俺に出る幕とかないでしょ?」

がしがしと頭を掻きながら、岸塚君は笑っている。

「でさ。あれが、お前の魔法?」

「いや、魔法とかじゃないっしょ。」

「そうか?言っただろ。魔法は言葉だって。」

「魔法ね・・・。」

「いいじゃん。それが正しい魔法の使い方だって。」

正しい魔法の使い方か・・・。

楽しげに言う岸塚君を前に、私も考える。

魔法なんてものがあるなら、確かにそう使われる方が素敵かもしれない。

そう思って、私も笑った。



言葉は本当に面白いものだと思います。それ一つで時には人を殺すこともある気がしているからこそ、取り扱いには注意しないといけないと思いますが。駄文ですが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 言葉が魔法、とても面白いキーワードでした。 あとがきを見て、言葉は人を活かすこともあれば、殺すこともある、まったくもってその通りだと思いました。 誰もが他人に興味のない今日日、 死なないで…
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