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(旧)拳勇者伝 ~『チート殺し』が築く道~  作者: バウム
第六章 再戦! 成長した勇者達!
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第三十六話 対拳太の戦い方

「ほらほら! ちっとは距離詰めてみろっつーの!」


「はぁ……クソッ!」


裏路地での戦いは拳太が優位を独占していた。


基本的に素手で戦い、荷物も大体は馬車に預けているため重荷となるものを持っていないため身軽に動き回れる拳太に対して、大剣という重荷に加え、それが狭い壁やガラクタだらけの地面に引っ掛かる花崎とは出せるスピードも小回りも段違いだった。


「そら、食らいな!」


「くっ! ちょこまかと!」


それに拳太は元来、こういうたくさん物がある場所での不意を突く戦い方を最も得意としており、即興で作ったトラップを紐を引っ張る事で起動し、古ぼけた水瓶が花崎へと飛来してくる、花崎はそれを払い飛ばして回避するが、その立ち止まった一瞬の差が効いたのか戻った視界に拳太はいなかった。


「どこかへ行ったのか……?」


「残念、下だぜ」


その声に反応して花崎は下を見ると、そこには拳を握りしめて雷をいなびかせていた拳太がいた。

花崎は「視界にいない=側にいない」という心理を突かれてまんまと拳太に懐への侵入を許したのだ。


「オラァァ!!」


拳太の拳が花崎へと繰り出され、花崎が防御する暇もなく拳太の拳が花崎の胴へと叩き込まれる

花崎は土煙を上げながら後退り、膝から崩れ落ちる――――事にはならなかった。


「なっ!? 電気が効いてない!?」


狼狽する拳太に花崎は口元を緩ませると背中の大剣に手をかける


「この距離なら外さないな!」


「し、しまっ――」


「うおおおお!」


拳太は慌ててバックステップをして距離を取るが、花崎の放たれた大剣の攻撃範囲から逃れる事は叶わず、拳太は派手にぶっ飛んでガラクタの山へとその体を突っ込ませる


「ぐあっ!」


とその時、拳太の胸が激しい痛みを訴えて彼を襲う


「ぐ、ゥ……! 傷が……!」


拳太は胸を押さえて身を縮込ませる、拳太には未だセルビア・ヒルブとの戦闘で負った胸部の傷が回復しきっていない

アニエスの尽力によって傷が開く事は無いのだが、それでも刺激を受けると激痛が発する状態であり、戦闘に適しているとは言えない状態だった。


そんな拳太の状態を見て、花崎も何があったか大体察したのか、浮かべた笑みをますます深めていく


「そうか、セルビアさん、拳太にダメージを残しておいてくれたのか……」


「気持ち悪い解釈してんじゃねーぞクソッタレ、ハンデ背負っても十分に勝てるっつーの」


と口で言いつつも、それが強がりであることは拳太自身が一番よく分かっていた。

魔力も訓練の時に一度殆ど使ってしまい、睡眠を取って回復したとは言え、感覚的には普段の四割程しか残っていない、疲労も残っている、コンディションは最悪だ。

加えて電撃が通じないこの状況は拳太の不利にさらなる追い打ちをかける


「……そもそも、なんでオレの電撃を無効化できたんだ?」


勇者となり、身体が強化されたとは言え、その本質は人間だ。電撃を耐えるならともかく、完全に流れなくするのは何かしらの細工があるはずだ。

拳太が殴った後でも問題ない辺り、魔法では無いだろう


とその時、電撃によって吹き飛んだ花崎の制服のボタンの隙間から茶色の板の様な……少なくとも木材ではない物が見える


「皮の鎧……? あれが絶縁体になって電気を通さなかったのか?」


「よそ見をしているなんて、随分と余裕だな!」


花崎が再び飛びかかって来たのを切り口に拳太の思考は戦闘へと引きずり込まれる

どうやら拳太に思考させるつもりは無いようだ。


「うおおおおお!」


「グ……ウゥ……!」


今度は距離を詰めた状態で戦うため花崎に有利となった。

大振りで単調気味な攻撃とは言え広範囲を連撃する攻撃には拳太も捌くだけで手一杯だ。

本来なら隙を見て反撃の一つでも入れれるのであろうが、傷の痛みが動きを鈍らしてそれを許してくれない


「でやぁ!」


「う、お……!! しまった!」


下からの花崎の攻撃をガードした時、拳太の全身が大剣の軌道に合わせて浮かび上がる、その事に焦りを見せる拳太だったがもう遅い、花崎は思いきり剣を振りきり、拳太を上空へと打ち上げる


「ったく! なんつー馬鹿力だ……!?」


拳太の視界の下から上を何かが高速で通り抜ける、嫌な予感を抱きつつそれを眼で追いかけると太陽を背にしているため分かりづらいが、花崎が大剣を振りかぶって拳太を見下ろしている


「食らえ拳太!」


「くっ!」


何とか花崎の剣を振り下ろすタイミングに合わせて拳太は大剣の側面を蹴って隣にあった赤い屋根の上を転がる、転がり続けて危うく落ちるところだったがそれまでにはギリギリ体勢を立て直した。


「く、あ…………!!」


が、その休みなく受けた衝撃で胸の傷が激痛を訴えていた。

息も絶えている拳太の前に花崎が降り立つ


「観念しろ、お前には勝ち目が無いと十分解ったハズだ」


「へっ、冗談じゃあ……」


拳太は片足を下がらせるとその足に雷を纏わせる、青白い光が赤い屋根の上で踊っていた。


「ねーっつの!」


そして、拳太は思いきり屋根を蹴りつけてそこから破損し、電気を伴った屋根の破片が花崎の顔目掛けて射出された。


「っ!!」


花崎は咄嗟に大剣を盾にして破片を防ぐ、一通り破片を防ぎきると花崎は大剣を下げた。


「……くそっ、逃げられたか」


花崎は下手に追うような真似はせずに懐から一つの魔石を取り出す、通信石だ。


「……ああ、俺だ。大樹だ、拳太に逃げられた。そっちで見つけ次第迎撃してくれ、『例の作戦』通りにな」
















「はぁ……はぁ……」


屋根から再び裏路地へと飛び降り、胸を庇いながら走る拳太

その息は荒く、吐く息からは鉄の味さえした。


「攻撃を、庇ったって事は、顔までは防げないっつー事だな」


だが、拳太も拳太でやられっぱなしという訳ではない、どうにか突破口となりそうな情報を整理し、どれが一番有効な作戦かを組み替えては分解してを繰り返していく


「よし、とにかく使えそうな物を――?」


その時、拳太の耳が風切り音の様な自然発生したにしては聞きなれない音を拾う

思わず足を止めると拳太のすぐ目の前に数本の矢が突き刺さった。


「なっ――!?」


「チッ! 勘のええやっちゃな!」


声の方を振り向くと風魔法で空を飛びながらこちらに矢を構えている千早がいた。

矢は風魔法を受けて回転し、次の瞬間には弾丸の如くこちらへと突っ込んでくる


「『縛られた蛇(チェーン・スネーク)』みてーな物か! クソ厄介な攻撃だな!」


初戦で苦戦した様子無く幸助を撃破していたが、実は魔法で物理攻撃の補助をして威力や速度を速めると言った攻撃は拳太が最も苦手としている攻撃だった。

まさか攻撃に触れて補助を無理矢理打ち消す訳にもいかないので、結局は回避するしか無くなるのだ。


「けど、流石に壁までは貫通できねーだろ!」


拳太は物影の下を走り、上空の千早の視界から逃れる、千早は忌々しげにもう一度舌打ちすると地へ降り、拳太を追跡しつつ矢を放っていく


「このまま矢が尽きるまで走っていれば……!」


だが、拳太の願いも空しく袋小路へとたどり着いてしまう、更に言うなら周囲に盾にできそうなガラクタも無い


「クソッ! 全く想定してない事態じゃねーが、何も今じゃ無くてもいいだろ……!」


「追い詰めたで、拳太」


振り返った先にいる千早は既に三本の矢をつがえ、何時でも射出可能な状態となっている

恐らく三本を横に放って避ける範囲を限定し、回避した隙を狙って二次の矢を当てるのだろう


「ちっと血が出るけど……堪忍せえや!」


「それだけで済むなら良いけどなッ……!」


矢は放たれ、拳太はどうするべきかひたすら考える、だがどう動いてもこの状況を突破できるビジョンが浮かばない


「万事休すか……?」


だが、拳太に迫る矢が一閃の光によって全て弾かれ、光が重く鋭い音を立てて壁に深々と突き刺さる


「大丈夫、ケンタ!?」


「レベッカ!」


壁に刺さった物の正体はレベッカのレイピアだった。

追い付いた彼女が間一髪のところです矢を弾けたのだ。


「助かったぜ」


「それよりケンタ、その鉄板に乗って! 風で上げるよ!」


レベッカの言葉に一瞬だけ周囲を見渡して、一枚の元は盾らしき平べったい板を見つける

拳太はそれに素早く乗ると重心を安定させるため身を屈めた。


「逃がすと思うなや!」


千早がレベッカが魔法を使うより早く拳太に矢を射る、矢は一直線に拳太目掛けて飛来していく


「急がば回れってな! 手抜きの矢なんざ朝飯前だぜ!」


風魔法により威力も速さも強化されていない矢はあっさりと拳太の横に振るった拳によって弾かれる、正確に矢尻に拳を叩き込まれたそれは拳太にかすること無く背後の壁に命中し、壁に刺さる事無く地面へと落下する


「行くよケンタ! 『風の拳(エア・パンチ)』!」


レベッカから放たれた風の塊は拳太の乗っている鉄板の下へ滑り込むと、一気に爆発して鉄板ごと拳太を屋根へと押し上げた。


「くっ! あとちょっとやったのに!」


千早はその様子を悔しげに見て歯を食いしばる


「お前の相手はボクだ!」


レベッカはレイピアを引き抜くと再び風を纏わせて千早の元へと風を騎士と従えて切り込ませる

















先程と違い、道の整備された大通りを走りながら拳太は周囲を見渡しながら使えそうなものを探る、野次馬達はいつの間にか避難したのか、人っ子一人おらず、これまで見た大通りの中で一番広く見えた。

だが裏路地と違って周囲には殆ど物が落ちておらず、更に間の悪い事に住宅地へと来ていたせいで武器屋も道具屋も見つからないのでいたずらに体力を消費しているだけだ。

ならばもう一度裏路地へと戻ろうかとも拳太は考えたが


「裏路地はもう避けた方がいいか、次ああっなったら助かる気がしねぇ……」


偶然レベッカが助けてくれたため事なきを得たが、もし救援が来なかったらと思うとゾッとする、あんな事は二度や三度も起こらないのが普通だろう

全てを一人で片付けられるとは思えないが、確実に来ると確信できる助けが無い以上まず自分でどうにかする方法を考えなければいけないだろう、甘えた考えの先に待っているのは失敗だ。


「けど、コレ一つでどうしろってんだ……」


拳太は懐からどさくさに紛れて盗ってきた針金に目を落とす。

今はぐるぐる巻きにしてあるが、全て伸ばすとかなりの長さになるだろう


「『赤炎の大地(ヒート・グラウンド)』」


とその時、拳太の周りの地面が突如水溜まりへと変貌する


「チィ! 考える間も無しか!」


その水溜まりは赤色に発光しており、泡を破裂させては再び浮かび上がらせる煮えたぎった水溜まりだった。


「捕まえたわよ、拳太」


そして拳太の目の前へ、堂々と赤髪を揺らして折邑が槍を携えてやって来る


「捕まえた? おいおい……テメー、オレのスキルの効果を忘れた訳じゃねーだろう?

テメーが地獄の釜よりも熱いマグマを作ろうが、それが魔法である限りオレには効かねーんだっつーの」


呆れたように肩を竦める拳太に対して、折邑もまた拳太に不敵な笑みを返す


「確かに、私の魔法で作られた熱は直ぐに消されるでしょうね、けど()()()()()()()()()()()()()?」


「……!」


その言葉を受けた拳太は僅かに顔色を変える、折邑の指摘はごもっともであった。


拳太はかつて、セルビアの氷の刃を無効化した際にその本質である水に視界を奪われ、その隙に攻撃を受けるという『スキルの弱点』を突かれた苦い経験がある

その事を考えると『折邑の魔法による熱』は消せても『熱された地面』はそのままという可能性がある

もちろん、熱された地面が魔法の一部として認識されて元に戻る可能性も存在するのだが、拳太としてはそんな博打に身を投じたくなかった。下手をすれば最低でも片足が使い物にならなくなる

かと言って、飛び越えられるような幅でもない


「さあ、大人しくしてもらうわよ」


こうなったら近寄った瞬間に倒し、取りあえずは地面が冷めるのを待つしかないと腹を括った拳太は鋭い目付きで折邑を見据える

二歩、三歩と折邑が近づいていき、そして――


「私達を!」


「忘れないで欲しいのです!」


その幼い声と共にピンポン球程の藍色のボールが大量に降ってきて、爆竹の様に派手な音を鳴らし、続いて白い煙と地面が蒸発する音が周囲に木霊し、拳太の視界が白く染まって折邑の姿を覆い隠してしまう


「うお!? これは……水蒸気?」


頬に着いた水滴から煙の正体を推測し、先程のボールが何なのか検討をつけていく


「こっちの世界で言う消火器みてーな物か?」


しかし、よくあれだけバラ蒔けたものだと感心する

水蒸気のカーテンが取り払われた視界には、黒くなった地面と本物の水溜まりが出来上がっていた。


「ケンタ様ー!」


「お怪我はないのですかー!?」


「やっぱりテメーらか」


こちらへと駆け寄ってくるバニエットとアニエスを見て拳太は思わず笑みを浮かべる

見たところ二人に大きな怪我は無いようだ。彼女達が勇者と拮抗したのか、それとも勇者が手加減したのかが分からないところだが


「よくあんな物あれだけ持って来たな」


「一つの家に三つはあったので、見つけるのは簡単でしたよ」


「運ぶのにちょっと時間がかかっちゃったのです」


恥ずかしげに頭をかくアニエスだったが、拳太としては大金星だ。

あのままだときっと身動きの取れないまま戦闘に入り、下手をすると槍で一方的に攻撃される危険性があった。


「そうだ、テメーら何か使えそうなもの持ってねーか? 物でも場所でもいい」


「え? そうですね……あっ! 使えるかは分かりませんが、あそこにちょっと遠いですが一番大きなレストランがありましたよ、ほら」


バニエットの指差す場所に注目すると、確かに少しは距離があるものの、この街で一際大きな建物があった。恐らく旅行者向けに豪華にしたものだろう


「……なるほど、バニィ、あそこのメニューにパンはあったか?」


「えっ? パン……ですか??」


拳太の唐突な問いに疑問符を浮かべるバニエットだったが、しどろもどろになりつつも答えていく


「多分、チラッと見た看板メニューに絵が描いてあったからあると思いますけど……」


「わかった。バニィ、アニエス、今から言うことをよく聞いてくれ」


拳太は屈んで集まった二人に何かを耳打ちする、二人は不可思議な顔をしていたが了解するように頷いた。


「あと、この近くにレベッカがいるから、そっちにも伝えてもらえると助かる」


「分かったのです」


「そろそろ話は終わりにしてもらうわ」


声に振り向くと、ちょうど折邑の方も水蒸気が晴れたらしく、今度は両手で槍を握って穂先に炎をプロミネンスのように纏わせている


「取りあえずは先に拳太を捕まえるつもりだったけど……気が変わったわ」


折邑はバニエット達を見据えて音を立てて槍を握り込む


「……じゃあ、手筈通りに頼むぜ!」


「分かりました!」

「了解なのです!」


一瞬バニエット達に加勢しようか迷った拳太だったが、彼女達を信じ、勇者の甘さにちょっぴり期待して駆け出した。

















「『氷の槍(アイス・スピア)』!」


「ムゥ……!」


辺り一帯が氷柱と水が満ちる大通り、湖南はベルグゥへとひたすら大量の水の球や氷の槍で攻撃していた。遠藤拳太ならばスキル『正々堂々』で問答無用で打ち消せるのだろうが、当然ベルグゥにそんな便利なスキルは持っていない

よってベルグゥは防戦一方の戦闘を余儀無く強いられている

ひたすら弾幕を張るのは単純な戦法であったが、それ故対策の決定打が存在せず、ベルグゥはいつまで経っても攻勢に出れないでいた。


「ぐ……! レネニア様、悔やむ事にこのベルグゥ、このままでは二分程しか持ちませぬ……!」


「すまないベルグゥ……もう少し待ってくれよ……!」


しかし一つ気になる事がレネニアとベルグゥにはあった。

それは『いくら勇者でもいつまでも弾幕を張った状態を保てるのであろうか?』という事であった。


レネニアが探知をした結果、彼女はどうやら周囲の水蒸気や一度使った魔法で産み出された水分を再利用することにより消費魔力を激減させている事が判明した。


そして今は、『湖南有子の魔力を含む物質を拒絶する魔法』を構築中であり、ベルグゥはそのための時間稼ぎをしている

だが状況は芳しくなく、構築が間に合うかどうかも不明だ。


「ベルグゥ! 右だ!」


「承知していま――ぬっ!?」


ベルグゥが氷槍を回避しようと一歩踏み込んだ先、他の濡れた地面より遥かにぬかるんだ場所となっており、ベルグゥはバランスを崩してもたついてしまう


「かかりましたね!」


「くっ――ぐふっ!」


辛うじて防御体勢は取れたものの、氷槍が直撃してベルグゥは建物の壁を突き破って室内へと叩き込まれる


「敵ながら見事……! ケンタ殿と組み手を行っておらなければ防御すら取れなかった……!」


「ベルグゥ! どこをやられた?」


「両腕はしばらく使えますまい、一応逃亡を試みますがそれでもどこまで持つか……」


「そうか……あと一分、行けるか?」


「ふふ……勿論です、伊達にレネニア様の執事はやっておりませぬ」


「『雨の弾丸(レイン・ショット)』!」


そんなベルグゥの言葉を絶望に叩き込むかのように、部屋全体を埋めるような水の弾がベルグゥごと潰そうと飛来してくる、ベルグゥの本能が死を予感したせいか、その光景はひどくゆっくりに見えた。


「レネニア様のご命令、背く訳には行きませぬ!」


だがそれでもベルグゥはその光景から目を背けない、己の意思の強さを表すかのような重たい眼光を携え、来るべき時に備えて足に力を込める


「じーさんは大切にしろっての、老体に鞭打つ真似は情けないぜ」


とその時、ベルグゥの前へと飛び込む一つの影が現れた。

その影は迷う事無く水の弾丸の群れへと突っ込むと次々と弾丸を消し去っていき、ベルグゥに当たる分はあっという間に消してしまった。


「拳太さん……!」


「ケンタ殿!」


「ま、ベルグゥに限ってか弱い老人って訳じゃないけどな」


ベルグゥよりもボロボロの体にも関わらず、まるでなんでも無いように笑みを浮かべる少年――遠藤拳太が、そこにいた。


「ベルグゥ、今すぐついてこい! 取りあえずはここを抜けるぜ!」


「承知しました!」


「あ、待ちなさい……!」


湖南の水魔法を次々と打ち消して拳太とベルグゥは走る


「少年、その顔は何か思い付いた様だな?」


「ああ、ようやく逆転の兆しが見えたぜ!」


兆しと言いつつも既に勝利を確信したような顔をして、遠藤拳太は街を走る

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