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part1 ヒルブ王国の者達

「団長よ、勇者達の育成は順調か?」


「はッ! 今や適切なチームを組めばドラゴンの討伐も十分に可能であります」


「そうか、その調子で引き続き育成を行ってくれ」


「御意に」


ここはヒルブ王国の王宮の会議室、王族とその直属の家臣のみが参加できる王国の重要会議を行う場所である

今ここにはヒルブ王国の国王であるベスタ・ヒルブと騎士達を纏め上げる騎士団の団長の男、王国所属の魔法使い達のリーダーとなる宮廷魔導士筆頭の女が集まっていた。


彼らは国の軍力と技術の中枢となる人物で、ある程度国王から自治権を与えられている存在であり、実力も折り紙つきであった。

恐らく今の勇者でも一人では手も足も出ないだろう


「そして筆頭魔導士、例のブツはもう出来ているか?」


「はっ、実験も済ませており、後は量産するだけです」


「よし、よくこの短期間で仕上げてくれたな、誉めて遣わす」


「陛下の為ならば」


筆頭魔導士の言葉にベスタは気を良くしながらグラスに注がれたワインをぐいと煽る


「うむ、これで魔族、獣人族に対する戦力は十分であるな

それで……奴の居場所は突き止めたか?」


その言葉に場の空気が一気に引き締まる、それだけ今の案件は重要なものであるのだと彼らの表情が物語っている


「……やはりだめです。例のスキルで阻害されてしまいます」


「陛下……無礼を承知で言いますが、あの危険因子を組み込むだなんて正気ですか?」


「確かに奴は……『ケンタ・エンドー』は我が国に歯向かう反逆者だが奴のスキルは利用価値がある

スキルの解明ができれば魔族に対する切り札……いや、ヒルブ王国が世界を牛耳る兵器となりうる存在だ」


彼らは今遠藤拳太を、より正確に言えば拳太のスキルを欲しがっていた。

ベスタは拳太と大樹達が戦った時、拳太の魔法を打ち消すスキルを目撃していた。

そしてそれを利用できると判断したのだ。


拳太に対してはあの獣人族の少女を人質にでも取ればいいとベスタは考えている、勇者達には保護と言えばいいだろう


「陛下! 失礼致します!」


とそこへ突如一人の近衛兵が部屋へと入ってくる、彼に訝しげな目を向けながら騎士団長が前に出た。


「会議中だぞ貴様!」


今にも腰の剣を引き抜く勢いの騎士団長をベスタが軽く諫める


「まぁ待て、して何用だ?」


「第二王女『セルビア・ヒルブ』様から通信が入りました!」


「何? それは確かか?」


「はッ!」


「……通信石を」


近衛兵は恭しく懐から一つの白っぽい透明な丸い手づかみサイズの玉を取り出しそれをベスタへと献上する、ベスタはそれを掴み取ると玉に顔を近付けた。


『ハァーイ、パパ元気してるぅ?』


光り始めた玉から響いてきた声はやや粘着質に感じる様な女の声だった。


「セルビアか、お前は確かレックスの監視と国境魔族の殲滅を命じたはずだが?」


『大丈夫よぉ、レックスは王国の戦力が高まったのを感じて大人しくしてるし、私にかかればちょっとした魔族なんて二日で片付くわ』


「そうか、それで普段連絡も寄越さぬ貴様が何の用だ?」


ベスタの呆れた様な口ぶりに対してセルビアはクスクスと嘲笑する様な声を出す、それにはもう慣れているので特に気にせず聞き流す事にした。


『知ってるわよぉ? パパ人探ししているんだって、それって少し面白そうじゃない』


「……ああ、しかしお前がわざわざ出向く程では――」


『私が何しようが、私の勝手でしょお? いいじゃない、どうせすぐに済むわよ』


「セルビア様! いくら貴女と言えど陛下の決定に――」


『黙ってくれるぅ? 可愛くもないワンちゃんは興味無いんだけどぉ?』


通信石から伝わる声が途端に威圧感を増し、騎士団長は思わず押し黙る、その額には冷や汗が光っていた。


『うんうん、利口なワンちゃんは好きよぉ? 誰が上かハッキリ分かっているみたいね』


「……それでセルビアよ、奴の居場所は分かっているのか」


『勿論よぉ、私を誰だと思っているのぉ?』


「ならば後でその情報を送っておいてくれ、奴の進路を予測して包囲しておく」


『うふふ、りょうかぁい』


通信石は光を鎮めると、もう声は聞こえなくなった。


「まったくあのお方は……! 宜しいのですか! 好き勝手させてしまって!」


憤る騎士団長に対し、ベスタは首を振る、彼は娘の自由奔放さにはもう諦めがついていたのだ。

ならば、せいぜいそれを利用してやればいい


「それでは届いた情報から一番近い勇者を向かわせましょうか?」


「ああ、それともう一つ、例のブツの実際の効果を試してみたい、試作品はまだあるだろう?」


「ありますが……誰につけるのですか?」


「彼が適任だ、最も効果を引き出せる」


ベスタはデスクの引き出しから一枚の紙を取り出す。筆頭魔導士もその内容を見て納得した様子を浮かべていた。


「なるほど、確かにあの勇者様なら適任ですね」


その紙の名前はこう書かれていた。


「『ミノル・ヤシロジ』……彼の術はケンタ・エンドーにも有効でしょうし、ね」


社茲 穂(やしろじ みのる)』と

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