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(旧)拳勇者伝 ~『チート殺し』が築く道~  作者: バウム
間章1 翠鳥幸助の疑問
20/86

part3 望月巴

先日、ユニークアクセスが5000を突破しました。

これもこんなありがち小説を楽しみにしてくれている皆さんのお陰です。


これからも拳勇者伝をよろしくお願いいたします。

―――馬鹿みたい


部屋で一人、ベッドの端に腰かけた私は思わず口にした。

その台詞の原因は隣の部屋の花崎くん達の会話がたまたま聞こえてきたからだ。多分、この宿の壁は薄いのだろう


「―――絶対に、拳太を倒そう!」


きっと彼等は心からの善意でそう言っているのだろう、しかし普段の拳太をそれなりに知る私には滑稽としか思えなかった。







『色々言いたいけど、まずはその服装を直しなさい!』


『イヤだね』


それが私と遠藤拳太が最初に交わした会話だった。


最初見たとき私は彼をとんでもないやつだと思った。何せ転校初日に授業はサボり、髪は金髪、挙げ句の果てには学校の白い制服ではなく、黒い学ランをボタンも閉めずにいるのだ。ある意味大物かもしれない


その時の私は彼のクラスの委員長として彼を更正させる必要があるという責任感と、このままでは彼は孤立してしまうのではないかという心配から、毎日のように彼に構い始めた。


しかし当の本人はどこ吹く風と言う風に適当に返すし、こちらの親切も平気で蹴った。段々と腹が立ち、こうなれば意地でも構ってやると思い周囲の静止の声も聞かず私はますます彼に深入りした。


そんなある日、彼がまた授業をサボると思って朝、わざわざ校門で待ち伏せていたのだが彼と比較的中のいい近藤先生から今日は休みだと言うことを伝えられた。

きっとろくでもない事をしていると半ば確信した私は他言無用という条件付きで彼の住所を教えてもらい、放課後会いに行った。


彼の住所はマンションの一室らしく、学校に備え付けられた学生寮と違い、どこか古臭い雰囲気の赤茶けた七階立てだった。

兎に角拳太の部屋を聞こうとマンションの管理人を訪ねた時、私の体は凍り付いた。


しかし私がそうなったのも無理はないだろう、何せマンションの管理人は、顔に大きな裂傷、薄いシャツから見える肌には火傷や見たことが無いので分からないが、銃創と思わしき皮膚の盛り上がりまである、誰がどう見ても堅気の人間には見えないだろう


ところがこの管理人、話してみると結構気さくな人物で、拳太の事を話題に出すと直ぐに打ち解ける事ができた。共有の話題がある事も手伝ったのだろう

暫く話している内に、拳太が何をしているか尋ねると、途端に管理人の顔に影が射した。


最初、彼はなかなか話してはくれなかったが何度も頼む内に私の思いが通じたのか拳太の居場所へ連れていってくれた。







連れてこられた場所は墓地、そこにある一つの小さな墓の前に、拳太は立っていた。


『――――――何でいるんだ。』


『管理人さんに聞いたから』


『……そうか』


彼は珍しく驚いたような顔をしたが、それきり黙ってしまい、それに耐えきれなくなった私は無神経であると分かっていても色々聞き出した。


『……家族なの?』


『いや』


『大切な人?』


『ああ、すごく、すごく、大切な人なんだ。』


そう言う彼の横顔は、無表情な筈なのにひどく寂しげで、今にも涙を流しそうなくらい脆く映った。


『……正直、ここまで関わってくるとは思わなかったよ。』


彼は暫くすると膝を曲げて墓前に屈み込み花を置いた。


『お前はお節介なきらいがあるな』


『私はただ、責任を果たしたいだけよ』


『……なら、それもどうでも良くなるようにしてやる』


彼はそこで初めて私の方へ向いた。その目は攻撃的な光をしていたが、同時に深い切なさを孕んでいた。


『教えてやる、オレの忌々しい思い出を――――――。』











「放っておける訳無いじゃない、馬鹿……」


自然と口に出る、きっと彼は過去を聞いた私が気味悪がって近寄らなくなる事を望んだのだろうけど、私は彼に関わるのを止めなかった。むしろ、前より構うようになった気がする


少なくとも、私はあんな悲惨な青春を過ごした彼を見捨てられない、傲慢とわかっていてもどうにかしたいと思っている節もある

それに、本当は優しい人間であるということもわかったつもりだ。そんな人間が、報われないままで良いとは思わない


「本当に皆、馬鹿ばっかり……」


本当は、いがみ合う必要など無いのに。どんどんと溝を作っていくそれを何とか出来ない自分にも腹がたった。


せめて、例えクラスメイトが彼を敵と認識しても、私は彼を同じクラスメイトとして接しよう


しかし、まずやりたいことがある、それは―――


「図書館のあれ、言い過ぎちゃったなぁ……」


いくら彼を引き留める為とは言え、酷い事を口走ってしまった。またあったら謝らなければ、と思う、そこで――――――


「―――やはり、貴女も彼が気になるのかい? 委員長」


クラスメイトの一人、翠鳥幸助が戻ってきた。


これにて間章は終わりです。また別サイドの話が要りそうになったら書こうと思います。多少予定がずれましたが次回からは第3章に入ります。


それにしても、名前だけ出すのももったいないと思い、望月巴を主要キャラにしましたが……何人が覚えてたんでしょうか?

そして幸助と巴が何をするのか? それは後の展開と言うことで……



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