号泣少女
人生、思い通りにならないことのなんと多いことか・・・
ネクア嬢を棄て置いて十日、辛く長い十日だった。
すぐにもネクア嬢の元へ駆けつけて彼女の悩み苦しみを何とかしたかった。
私は自惚れているのだろう。
ルルア嬢とリノス嬢が魔災に苦しんでいるのを、多少なりと軽減できたと・・・
私が余計な事をせずとも、何らかの方法で何とかしていたかもしれないのに。
十日はあっという間に過ぎ、私は何も思いつかなかった。
あるはずのない胃を重くしながら、ネクア嬢の元へ向かう。
もしかしたらもう一度彼女のところにゆけば、何か手立てを思いつくのではないかと、一縷の望みに賭けて・・・
わかっている、わかっているのだ。
いくら地球の知識があっても、所詮一般市民の私には、大したことなど出来ないと。
しかも、あまりにも何も方法が思い浮かばず、私が心療内科医だったら彼女の悩みを取り除いてあげられるのに(悩みは取り除けても解決にはならない)とか、新興宗教の教祖だったら洗脳して(最低)とか、自分が嫌になるようなことしか思いつかなかったのだ。
登校拒否になりそうな気分で、それでもネクア嬢の家に行くと、一人で綾取りをする少女が・・・
罪悪感がコークスクリューブローとなって、私の魂を直撃する。
いいんだ、そんな一人遊びなんてしなくて、嗚呼かといって彼女の環境では一緒に遊んでくれる友人を探すのも難しいのであった。
嗚呼、わたしはいったいどおしたらよいのでせふ・・・
心理的逃避行動に、現実の逃避行動を重ねようとしていると、不意に綾取りから『ソーマ』を感じる。
綾取りが水滴を象ると、中心から水が滴った。
「できた 」
たった三文字分の言葉が、とてつもなく重い。
ほおけた表情で顔をあげる彼女と、目が合う。
ネクア嬢の眼から涙が・・・
あっという間に感情が決壊して、大洪水になる。
ぼろぼろと泣きながら、ふがふがと言葉どころか、声にもならずに喋ろうとして失敗している。
涙と一緒に大量の鼻水を流している事は指摘してはいけないのだろう多分。
ハンカチの一枚も持っていれば良かったのだが、幽霊のこの身には不可能というものだ。
ネクア嬢は、なにやら唸り声をあげると、家の中へ駆け込む。
「あらあら大変、どうしたの? 」
ばしゃばしゃと水の音がして
「らんれも らい 」
ばしゃばしゃ
そのあと、鼻を掻む音がしばらくしていたが、私には聞こえなかったことにしようと思う。
前世の妻が、やたらに怒る女だったのだが、泣くことは無かったので、泣いてる女性にどう接したら良いのかわからないのである。
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時間だけが過ぎてゆく。
なんかもう他の娘のとこ行ってもいいかな?
そんなことを考えたが、きっとそんな事をしたら恨まれるだろうな~
などと考えた瞬間、『ばたん』と戸が開く。
思わず『明日香ごめん』と叫びそうになる。
・・・生前身についた習慣て、なくならないものだ。
「これ、はしたない。」
家の奥から窘める(たしなめる)声。
「ありがとうございましたっ!
ほんとにほんっとおにっ ありがとうございましたっ!
若様のおかげで私のようなものにも魔法が使えるようになりましたっ!
うれし・・うれ・・・う・・・」
うわぁあんと、泣き出す。
「あとは君の努力次第だ、がんばって!!」
我ながら最低なこと言ってる。
状況は把握できた、彼女は体内に魔力回路を作れ無いので、蜘蛛の糸で外付け魔力回路を作る事に成功したのだ。
確かに綾取り用の糸を用意したのは私だが、こんな事になるとは思って無かった。
奇跡ってあるんだ。
いやいや、私と息子という奇跡が有るのだから、何もおかしい事など無い、無い筈だ。
なのになぜだ、この背中に重くのしかかる罪悪感は・・・
訳のわからない内に、自分が解決したわけでも無いのに、客観的に見て、私が解決したとしか思えない状況が出来てしまった。
い~じゃね~かよ~ 誰のめ~わくにもなってね~んだから。
開き直るって、難しい。
もしも私が政治家だったら、国民の血税を平気で湯水のごとく使い、死んでゆく国民を無視して党利党略の方が、要するに利権の方が大事だと・・・さすがにそこまで落ちぶれたくはないな。
ゼロアもいずれは大公という責任ある立場になるのだ・・・ああっ!
私はあの子に道徳教育をしていない。
知識は与えたがそれだけのような気がする。
どうしよう・・・・・・
「お~そ~い~ 」
気が付くとエビルハンド家の敷地で、リノス嬢が怒っていました。
なぜだろう、彼女の怒り顔を見ていると癒やされるのは・・・
自分の精神状態に危機感を募らせながら、彼女の武器が私を貫いていった。




