裏切り
後少し、後少し。そう考えるだけで、自分の中に緊張が走る。怖い。でも、やらなければならない。それだけを気に留め、神経を尖らせた。
だからこそ、気づかなかった。レイジ軍曹は俺の後ろで待機していると思いこんでいた。しかし、彼の行動は自分の考えとは違っていた。なぜなら軍曹から通信がきたからだ。
「EXISTAから降りろ」
一瞬、彼が何を言っているのか理解できなかった。ただ、彼の方を見ると、銃口をこちらに向けていた。
「さっさと降りろ」
彼の行動の意図が分からなかった。しかし、彼に従わなければならない。俺はEXISTAのコックピットから降り、軍曹のEXISTAを見上げた。彼は降りてくる気配は無いようだ。
すると、あの足音がもう近くから聞こえてくることを思い出した。EXISTA内で聞いていたモノとは違う、轟音が鳴り響いていた。
その音が鳴り響くのが止まると共に目の前に黒いEXISTAが立ちはだかっていた。
この禍々しい色はまさに敵である「ブラックモア」という象徴であった。
資料でしか見ていなかった機体を直に見上げた。なぜか、かっこいいと思っていた。
そんなことを考えていると、黒いそれからパイロットが降りてきた。
「お、女!?」とブラックモアのパイロットが明らかに女であったことに驚きを隠せなかった。ヘルメットをかぶっていたが、身長は明らかに低く、がっしりと筋肉がついているとも思えない。
彼女がこちらに近づいてくる。
「ごめんね」と彼女はつぶやき、自分の頭を彼女が持っていた拳銃で殴ってきた。
その攻撃で気絶した。
*****
「気絶させたよ」とレイジに通信を送る。
「そうか、こっちは小隊をなんとかする。お前は新型実装機をこれに乗せて本部に戻れ」と森の中に隠していた輸送用の車を引きずり出した。
「彼はどうする?一緒に本部に連れていく?」とのびている彼を指さした。
「ボスに報告したんだが、そいつも連れて来いとのことだ」
「ラジャー」と連絡を切り、EXISTAに乗り込む。レイジは伸びていた第四地区長の息子をEXISTAに乗せ、彼のEXISTAを車に乗せた。
輸送車をEXISTAと連結させ、もう一度レイジに通信を送る。
「それじゃ、行くよ」
「ああ、その前にこいつの足を打ってくれないか?」
「どうして?」と彼の意図が分からず、問い返した。
「俺が追えなかった口実になる」
「あぁ、ラジャー……」と正直やりたくないが、持っているマシンガンでレイジのEXISTAの右足関節部に弾を撃ち込んだ。そして、彼のEXISTAは右ひざから崩れていった。
「ジーナ、気を付けろよ」とだけ言い切り、レイジは通信を切った。
久しぶりに名前を呼んでもらった気がする。気を抜かずに頑張ろうと、私はGPS妨害装置を作動させ、本部に向けて出発した。