作戦開始
There is no enemy reaction in the course. We admit second corps departure
.
(進行方向に敵反応なし。二番隊発進を許可します。)
EXISTAから聞こえるオペレーターの声を聞き、EXISTAを前進させた。
VRシステムとは大きく違う。一つの行動をさせるごとに自分の体を揺らせ、自分の鼓動も連動し早くなっていた。
しかし、その感動を打ち消す声が聞こえた。
「Do its best: an elite!Ha ha ha!」(頑張ってくれよ、エリートさん!)
カール少尉の声だった。自分に対して言っているのだろう。
心の中で、こんなに人を馬鹿にするような言い方ができるのかと思いながらも、一応自分よりも高い立場の人間に逆らうこともできないため、自分の感情を抑えた。
「I understand it even if not said .」(言われなくてもわかっていますよ)
親しみをこめて返答してやった。
「ハッハッハ!流暢に英語も話せるのか?第四地区長の御子息様は」とまた自分に対し、返答が来た。
その言葉で自分は感情を抑えることができなくなった。
「父は関係ない!自分の実力だけでここまで来たんだ!」と声を荒げる。
「お前ら、私語を慎め!」という怒号が聞こえ、我に返った。
その声を発したのは二番隊隊長ビクター・カイゼルハルトであった。
「カール、新人いじりもほどほどにしておけ。新人、お前もそのくらいでいちいち怒るな。それと俺がお前に教えるのは一つだけだ。VRシステムと操作は同じだが、こっちにゲームオーバーはない。負けたら終わりそれだけだ。わかったなら、操作に集中しろ」
「わかりましたよ。隊長」とカール少尉が応えた。
「了解です・・・。すいませんでした」と自分も自分の情けなさを悔いながらEXISTAの操縦に専念した。
しばらく移動すると、再び、オペレーターの声が聞こえた。
It is 2000 meters until aim spot arrival. Shift to war preparation,
(目標地点到達まで2000m。 臨戦態勢に移行せよ)
「お前ら聞こえたな?隊列を崩すなよ。まず、到達したら、俺とカールで敵を陽動。新人とレイジが敵を仕留めてくれ。わかったな?」と隊長は一気に加速した。
「「「了解!」」」と自分も含め三人も加速を始めた。
目標地点間際に再び隊長の声が飛ぶ。
「カール!お前は右から行け!俺は直進する!後は左で待機。新型銃を持って俺の指示を待て!作戦開始!」
その声と共に二番隊のEXISTA四機は三方向に分かれ、作戦が始まった。
自分とレイジ軍曹は隊長の指示通り、左方に行き、そこにある森の中に潜むことになった。
敵の姿はそこにはなく、新しく実戦配備された対EXISTA専用レールガン RG-X129をかまえ、隊長の指示を待った。
辺りに銃撃の音も聞こえない。敵などいないのではないかと思えるほどであった。
しかし、その静けさを打ち砕くかのように爆音が聞こえた。呆気にとられていると、連絡回線がつながれ、雑音と共に声が聞こえ始めた。
「あ、アイツら、地雷をしかけている!気を付けろ!敵影発見!」と少尉は言い、回線が切れた。
「カール!待っていろ!そっちに行く。レイジ、新人はそのまま待機だ!無闇に動くなよ!」と隊長の声がその後に聞こえた。
300m離れたところぐらいからかレールガン独特の発射音が聞こえた。
自分の中の浮かれていた心が一気に緊張に色を変えた。
VRシステムとは違う感覚に動揺を隠せない。自分だけでなく小隊全員の命もかかっているという感覚が今になって湧いて出てきたのだ。
そこから、応答は無く、一人、焦りのせいか手に汗を溜めていた。気づけば、体が震えていた。恐怖で震えているとしたらなんて情けないんだと悔やみ、辺りを確認することに集中する。しかし、心の中では、こっちに来るなと連呼していた。
「レイジ、新人!そっちに行ったぞ!絶対に仕留めろ!敵は一体だけだ!」と隊長の声が聞こえた。一気に不安が自分を包む。しかし、自分に俺はやれると暗示をかけてレバーを握り直した。
段々と足音がこっちに近付いてくる。足音を聞く限り、まだこっちには気づいてないようだ。
自分が仕留める。それだけを考えて自分の目の前を凝視していた。
しかし、その時に目の前よりも軍曹を気にかけるべきであった。