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第零話 プロローグ


「これにて、第五十五回大合戦を終了します」


無機質なゲームのシステムメッセージが流れると共に辺りには様々な歓声が上がった。

無論、此方側の勝利故にである。


「不敗神話未だ破れず……ね……あやかりたいもんだ。」


そんな声を掛けてきたのは近くで指揮を取っていた、この合戦の総大将である。


「いつまで続くか分かりませんよ?」


「はっ!上杉謙信みたいに生涯不敗ってか、言うことがでかいねぇ」


すぐ途切れるだろうというニュアンスで言ったのだが、総大将は逆の意味に取ったようだった。


「謙信みたいになら軍も自分で率いてますって。」


「システム的に無理だろ」


私の返しに総大将は「がはは」と笑いながらそう言った。

まぁ実際このゲーム―――『大戦国ONLINE』の仕様上、総大将が軍師兼任なんて真似は出来ない様になっている。

大勢で遊ぶことが前提のVRMMOであるのでそれも当然だろう。


VRMMOとは、仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲームの事である。

最初こそ、しょぼいと揶揄されていた仮想現実だが、徐々にリアリティを出す事に成功し今では第二の現実とまで言われている。

結果、一部では引き篭もりの加速等、社会問題にもなっている様だが、私には関係無い。


ともあれ、私は今回、此方側の軍で軍師をやっていた。

今のところ軍師として参加した側の軍で負けを経験していない為に付いた二つ名が【不敗軍師】である。

そう呼ばれだした頃は負けたら返上だなーと気に留めていなかったのだが、それからまだ負け無しな為か、徐々に定着しつつあった。


「で、不敗軍師殿は、これからどうされるのかね?」


「いつも通り、貰うもの貰ったら去るだけですよ。」


今回の報酬は金二十万両と幾つかのレアアイテムである。

合戦の勝利には、それ以上の利益が見込める為に成り立っている様なものだが、これでも他の軍師より少し高い程度の報酬だったりする。


「いい加減、どっか仕えるつもりはねぇのか?出来れば、うちに来てくれりゃあ、言うこと無いんだがな。」


総大将が言うように、今のところ、私は特定の勢力に所属している訳では無かった。


「仕える気があったら、とっくに仕えてますよ。勢力に仕えると自由に出来る時間が減っちゃうじゃないですか。」


「そりゃあそうだがよぉー……」


それだけが理由ではないが、表向きの理由としてはそれで十分だった。

それは勢力に仕えると、その勢力内での地位に従って任務が与えられ、それをこなさなければならなくなる。

その為、勢力に仕えず自由に遊んでいる人は結構多いのだ。


ともあれ報酬は受け取ったし、これ以上勧誘話を受けたくも無いのでさっさと辞去する事にする。


「では、今回もお呼び頂き、ありがとうございました。またの機会には、よろしくお願い致しますね。」


「ん?あぁ、もう帰るのか。そうだな、こっちこそ礼を言うぜ。無事、勝利できた事だしな。」


別れの挨拶を終えた私は、さっさと陣幕を出て街へと向かうことにした。


「これで更にPK戦も負け無しだとか言うんだからなぁ……」


去り際に総大将がポツリとそう呟くのが聞こえたが無視しておく。


まぁ、これだけ稼いでたらPKプレイヤーに狙われるのはある意味当然かもしれない。


軍師系のキャラは、他の戦闘特化した職よりは弱い。

更に、私は方々で稼いでいるので、PK出来たら美味しい獲物なのである。


とは言え、そう簡単にやられる程、柔な育て方はしていない上、常に護衛役が居るのだ。

陣幕から十分に離れた辺りで、護衛へと声を掛ける。


「今日は、どう?」


端から見れば、独り言でも言ってる様に見えるだろう。


「いつも通りだよ!」


返事とともに背後から人影が飛び付いた。

完全に奇襲だったが、私は慌てる事無く、そのまま人影を投げ飛ばした。


「きゃー!?」


投げ飛ばされた人影が悲鳴を上げる。

まぁ、幾ら奇襲でもそれが予想出来る範囲であるならば、対処出来る。

この奇襲してきた人影が私の護衛である。


私が合戦に参加すると、敗軍のプレイヤーの中には私をPKしようと企むものが必ずと言って良い程現れる。

それらを私が出会う前に処理してくれているのが、この護衛の仕事だったりする。


さて、そろそろ私の自己紹介をしておくとしましょう。


私の名前は堀川香澄(ほりかわ かすみ)

戦国ONLINEでの名前は片倉かなえ(かたくら かなえ)。

性別はリアルもキャラも女。

職業は当然、軍師である。

キャラ名の名字は好きな戦国武将から取ってきている。


軍師には男が多い事もあって、私が有名になったのはある意味でアイドル的な一面もあるのかもしれないと考えたこともある。


大戦国ONLINEでは、まず出自を選び、そこから職業を選んでキャラを育成していく。

出自次第では選択不可能な職業なんかもあるが、大半の職業は条件次第で後から就く事が可能だったりする。

そんな中で一番人気なのが軍師であり、一番不人気なのが忍者だった。


軍師が人気なのは、対軍戦闘で必須の職だからであり、大戦国ONLINEの戦闘の大半は対軍戦闘なのである。

特に通常の小合戦なら問題無いのだが、大合戦クラスになると軍師がいないと勝利等ほぼ不可能だ。

軍師がいなければ、合戦時に戦闘の趨勢に多大な影響を及ぼす作戦行動が一切行えない(一部例外はあるが)という制限の為、大抵は軍師を据える。


忍者が不人気なのは、まず出自に忍者を選択した場合の自由度の低さと、他の出自からの転職難易度の高さが原因である。

出自が忍者の場合、幾つかある『里』の所属となり、里長から任務を受けて達成する事がほぼ全てになってしまう。

更に、所属する『里』を抜けようとすると追手が掛かるのだ。

無論、追手に負ければ抜けられず、重いペナルティが伸し掛かる。


他の出自からの転職の場合、まず『里』を見つけ、里の門番を倒し、里長へ自らを売り込むと言った手順を踏む必要がある。

この全てに一定の技能レベルを必要とする為、必然的に高レベルでなければ転職が難しくなる。

だが、それらをこなして忍者となっても恩恵は薄いのである。


そのせいもあって、忍者のプレイヤーは極端に人数が少なくなってしまっているのが現状だ。


そして、私の護衛をしてくれている子の職業は、この忍者なのだが、出自忍者で抜け忍とか言う猛者である。

名前は山科琴乃(やましな ことの)

戦国ONLINEでの名前は佐々木一葉(ささき ひとは)

性別は私同様、リアルもキャラも女である。

ついでに言うなら、リアルでの友人でもある。親友と言っても良いかもしれない。

問題は向こうが向けてくる感情が友情以上のモノな気がしている事だろうか。


「むー……ガード固過ぎー!」


「これでも、【不敗軍師】ですからね。」


「それとこれとは関係ないってばー」


事ある事に、抱き着いてきたりするのが無ければ、本当に良い友人である。


そうやって、いつものやりとりをしていたのだが、気が付けば見知らぬ森の中にいた。


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