プロローグ 成長するダンジョン
この小説にはキングクリムゾンが住み着いているらしい。
とてつもなく時間の流れが速い件。
そしてやっと、やっとダンジョン探索の描写ができた!
嬉しくて軽く泣きそうになった。
なお、ちょっと活動報告にてアンケートを取ります。
主に無駄文章の添削についてです。
成長するダンジョン、活性化する町並み。
されど変わらないものもある、だが変わってしまうものも確かにあるのだ。
出会いと別れが過ぎ去りし日の輝きとなる。
その先にあるものは……。
さて、各店舗に素材の供給を始めて一週間が経過した。
色々あって町の外に家を建設したわけだが少し不思議な事に遭遇した。
野生の魔獣が俺の家を攻撃しているのだ。
正直あいつら程度に壊されるような軟な造りをしていないのでいくら攻撃しようが傷一つつかない。
飽きてどこかに行くモンスターもとい魔獣がチョコチョコいる中俺はガン無視されている。
なぜに家を優先で襲うの? 普通人間である俺を優先的に襲わない?
まったく意味が分からない。
とりあえず図書館で調べてみた。
よくモンスターと魔獣、魔物と別な呼び方をしているが個人の好みであり同一のものであるらしい。
紛らわしいから統一しないかな? まあいいんだけど。
モンスターは人間の生活圏、特に住居を優先して破壊する。
どうやらこれがどれだけ小さな村だろうが防壁を作っている理由らしい。
モンスターはダンジョンの入口から一定範囲で生活する。
外に生息するモンスターは大体三階層までの浅い階層のモンスターである。
モンスターは人間を無条件に襲う、ただしレベルが十倍以上離れている相手からは逃げる。
……あれ、逃げられた事ないよ? 初心者は別なんだろうか?
まあさっさとやめるものらしいし研究されてないんだな。
そして家を襲撃してたモンスターに冷気を扱うやつがいなくてよかった。
硬化剤って熱には恐ろしく強いのに冷気には不思議なほど弱いんだよね。
ああ、もちろん通常の気温の範囲であるマイナス五十度ぐらいまでは余裕で大丈夫なんだけどそれ以下だと脆くなっていく。
かなり断熱効果が高いのでたとえば冷気で脆くなり崩れるような温度にしても表面から砂が崩れるように壊れていく事になる。
つまり逆に冷気に強くて熱に弱い素材を作ってサンドイッチ構造にすればよくねぇ?
今更だが。
ところで仕入れだが順調とはいかなかった。
村の奪還や地上のモンスター狩りを依頼されたせいでもあるが素材のドロップ率が体感半分ぐらいに落ちている。
同じ冒険者に聞く所によると過去の事例から言ってもダンジョンの成長前にはよくある事らしい。
中に誰もいない状態で成長するため、一説には中に降りる事そのものをためらわせるためと言われているらしい。
さらにダンジョンのボス部屋にボスがおらずクリア特典も貰えず自力で歩いて地上に帰らなければならなくなっているとか。
まあそれは自分も確認した。
モンスターの発生速度も通常時の百分の一くらいか?
他にもモンスターが一時的に強くなるとかより凶暴になるとか色々あるらしい。
ぶっちゃけ現在休憩時間以外はフルタイムで動いているのにギリギリ注文量をさばく程度である。
自分用の材料とか調合とか一切できてません。
でもこんな感じで動いてると生前の仕事を思い出す。
休みなし、休憩なし、残業なしで(やり残しの)仕事なし。
それをこなせなければ首っていう恐ろしい職場だった。
さすがにそこは一週間ほどでやめたがサービス業怖いが合言葉になった気がする。
まあそんな生前はどうでもいい。
問題は在庫を吐かなければ処理できない注文がある事である。
薬草系や毒草系、鉱石系が元々のドロップ率の関係でほぼ取れず正直一時的に休業する店舗が出るほどだ。
まあ休業する店舗はちょうどいい骨休めだと笑っていたがいいのだろうか?
皆知っているから客離れも起きないと思っているのだろうか?
そもそも本当にそうなら笑っちまうんだが。
あれだね、生前の迷台詞を思い出す。
二十四時間働けますか? 三百六十五日不眠不休の企業戦士、サラリーマンとは日本の侍である。
前者はコンビニのバイトが言ったうたい文句だったかな? 後者は外国人が日本のサラリーマンを超誤解した台詞だったような。
そもそも三百六十五日不眠不休って生きてる方がおかしいがな!
まあそれに近い生活するサラリーマンもいるっちゃあいるが、あくまで近いだけで寝てるし休んでるよ!
まあそんなこんなで自分も寝る時間を惜しんで土地の奪還、防壁の修繕、地上の魔獣討伐、五時間耐久ソロ狩りダンジョン往復マラソンと色々な事をやっている。
まあこっちのダンジョンは飛ぶモンスターが浅い階層にいないだけ楽なんだろうな。
高々浅い階層のモンスターが俺にかなうと思うなよ!
言うまでもなく村を奪還したわけですが、これって勇者の仕事じゃね?
勇者仕事しろ!
まあ一般的に冒険者の仕事ではあるが……、安いんだよ、壊滅した村だけあって報酬が。
困ったものである。
さておき。
現在神殿との関係は保護者から通常の冒険者とギルドの関係に戻っている。
所在地は話しておらず基本的に連絡はこちらが向こうに行かなければつかない事になっている。
場所を提供してくれていた恩もあるのでかなり高額の寄付を行っておきました。
ちょこちょこ顔を出しているが未だ泊り込んだりすることは無い。
なぜかあの部屋は確保されているみたいだが、ドアの修復化不完全だよカッコ笑い閉じカッコ的な。
もう笑うしかない。
改築のため他の部屋は一度完全に解体されたみたいだが自分の部屋は魔法薬で固めてあるので壊せなかったのだろう。
自分の部屋の部分だけ正面に雨宿りスペースみたいな空間ができている。
その代り二階をささえるためのごっつい柱が二本むき出しで立っているが。
本当に戻る気ないんだけどなぁ。
なんか管理人室とか表札っぽくついてるし。
あれか、俺いつの間にか孤児院の院長にされているのか?
絶対にごめんである。
俺自身で引き取るならともかく押し付けられた子供なんて疎ましくて仕方ない。
そんな状態では俺も相手も幸せにはれないだろう。
というかあれだ、難民共。
村取り返してやったんだから帰れよ!
結論から言えば彼らはそのままこの町に移住しました。
あれだ、俺が取り返した意味ってあったんだろうか?
まあいいや、とりあえず成長したダンジョンを見に行こう。
ちなみに旧ダンジョンは町の中央にぽっかり地下へ向かって洞窟みたいのが開いていた。
そして現在。
「一体何があった」
「成長したんですよ? おめでとうございます一番乗りですね」
監視員の神官さんが答えてくれた。
いやいやいや、成長したからって立派な階段と屋根付きの入口になるの!?
階層が深くなるとかそういうのじゃなくて!?
とりあえず五層ぐらいまで潜ってみよう。
さて、第一層に降りてみたわけだが……。
「変わらんねぇ」
どこか愛嬌のあるモンスター、ゼリーが蹂躙跋扈する第一階層である。
何処を見てもゼリー、上を見てもゼリー、右を見ても左を見てもゼリーである。
基本的に弱いので瞬殺なのだが……、いつにもまして数が酷い。
まあ描写がないのはお察し下さい。
グチョ、とかビチャとか汚らしい水音を意識にも入れたくないしそんな擬音を表現したくない。
まあ手順としては半透明で核の位置が見えるので、角剣で突き殺すという所である。
ちなみに見た目は元の世界でいうやっすいブドウとかミカンとかの色つきゼリーの中に白い玉を入れ黒い玉二つで目を表現する。
そして口は無いが丸くして少し平たく潰して上にクリームの角のごとくチョコンと突起を作ったらゼリーの完成である。
なお、色で強さが変わるという事は無い。
食べた物の色が出るのだ。
そして、色のせいか美味しそうに見えるが味がなく触感もグチョっとしていて食べれた物ではないと言っておく。
ただこの感触が好きで捕獲を命令するゲテモノ好きの貴族がいるらしいが。
超雑食の野犬であるガルムという魔獣ですら食べさせようとしたら逃げ出すらしいのでお守り代わりに捕獲される事もあるとか。
ちなみに自分なら、暗い笑みを浮かべながらゼリーを持ってウフフ笑いでにじり寄る相手からは絶対逃げる。
先ほど目と表現した黒い玉は目ではなく感覚器官で、赤外線で物を見ているらしい。
死ぬと表面張力を失った水の如くペシャっと水っぽい何かになり広がってプニョ玉が残るのだ。
ちなみに攻撃力は極小だが集団で襲ってきて埋めて窒息死させる攻撃が凶悪である。
俺は瞬殺できるので向かってくてくれるのは一々走り回らなくていいので楽だが初心者が一番最初にやらかす失敗はこれらしい。
これで前提知識のない初心者の九割が死亡する。
なんでこんな弱いのにやられるかわからないが死ぬ時は死ぬという一例である。
そして第一階層の敵はゼリーだけだった、成長前と同じである。
やはりこのダンジョンは食べ物系が特産なのだろうか?
さて、第一階層の階段まできた。
ちなみに第一階層は岩肌が露出する鍾乳洞のような見た目をしている。
各階層ごとに変わるので一切あてにならないが、その層の質によっては鉱石や薬草がとれたりするので馬鹿にできない。
一番貴重なのは光苔であるが、確認されたダンジョンは数千あるなかでわずか三つである。
今回の成長で発生していてくれればうれしいなぁ。
ちなみに利用法は幅広く風邪薬(抗生物質)や魔法薬(精神安定剤)、どういうわけか火薬、儀式魔法の触媒、光源などである。
意外な利用法に粉にして水に溶かす事によって毛生え薬になるらしい。
まあいいか、そんでもって第二層である。
嗚呼いつ見ても可愛い。
ただし、絶対に食事中の状態を見てはいけないのはお約束である。
第二層の主な敵は成長前のダンジョンと同じ角兎であった。
魔法術師の上位職である調教師が一番初めに捕獲す魔獣第一位の相手である。
第一層のゼリーも出現するようだが頻度は低くほとんどは角兎である。
そして量もまばらであり見回しても二三匹しか見つけられない。
ただし、その脅威はゼリーなど比較にならない。
その兎としては巨体な体とその体重、突進力、そして鋭い角で突き刺す攻撃は金属鎧ですら軽々と貫通する。
ただし、大きいだけあってそこまで速くないので避けるのは難しくない。
とは言っても、大体大きさが俺の二倍ぐらいの大きさなので突進が怖い事怖い事、慣れるまでは必死に逃げ回ってたのはいい思い出である。
ちなみに一度でも轢かれると間違いなくトラウマになるので本当に要注意である。
薙ぎ払いと言う攻撃手段もあるがこれは首の力がそこまで強くないためか痛いと思う程度であり突進と比べれば悪足掻きレベルでしかない。
ぜひペットにしたいのだが、魔獣捕獲用の首輪って一つが城と同じような値段でありかつ成功率も調教師でなければ低いので諦めている。
一応持ってはいるがさすがにこんなどこにでもいる魔獣に使うわけにはいかない。
ちなみに捕獲用の首輪の名称を隷属の首輪と言い戦闘奴隷というモンスターのレアドロップである。
なお、幸いな事に人型には効きづらく知性があればあるほど失敗の確率が上がるので人類に対し使用しても必ず失敗する。
ああそうそう、捕獲されたモンスターは基本的に捕獲者にしか従わないためモンスターの売り買いも存在しないし、ね。
そのため乱獲で全滅したりもしないのである。
本当に残念である。
ちなみに角兎のお肉は美味しいがダンジョン内では残らない。
殺すと同時にそのもっこもこの毛皮の内側は煙のように消えてしまうのだ。
結果、角と毛皮がコロンと転がる事になる。
核の位置は頭部、脳にあたる部分にある。
ちなみにダンジョンの外で調べた。
核は空気に触れるとゆっくり崩れてなくなってしまうが、位置の確認だけなら捕獲し外に持ち出して研究する事が出来る。
よって魔獣の捕獲そのものは冒険者の必須技能である。
なお、今回言っている薬などを使って行う捕獲と隷属の首輪でいう捕獲は別物なので勘違いしないように。
まあ核の位置は情報を買えばいいという話ではあるのだが、その場合初めて会う魔獣に対処できない駄目駄目冒険者の出来上がりと言うわけである。
冒険者は経験で語るのである。
弱点の解析は学者の仕事ではない、冒険者の仕事なのである。
そんなわけでばっさばっさと十連釘バットで毛皮をゲットするわけですが。
ん? どこぞのあれみたいに空中で多段ヒットして飛んでくような技じゃないよ? 本当に打ち上げて九連続で攻撃を叩きこむ技だよ?
しかも釘バットとか言いながら普通の金属バットである。
ちなみにこの世界、野球が存在しないのでメイス扱いではあるが扱いやすいためか何人かのメイス使いがコピー品を持っている。
この世界には著作権とかない、コピーされたくなければクオリティと性能をコピーできないくらい上げろという話である。
世知辛い世の中だぜ。
そろそろ背中のリュックが膨らんできた。
さすが成長したてのダンジョンはモンスターの発生率が半端ない。
この階層も成長前のダンジョンと同じだなぁ。
さて三階層への階段へ到着した。
二階層は天井に謎の光源を持つ草原だった。
なお、謎の光源とは言いつつもダンジョン内によくある光り石というものである。
ただダンジョン内でしか光らないのでまったく価値は無い。
さて、そんなこんなで三階層である。
……あれ? モンスターいなくない?
ああ、ちなみに自分の場合は動物系を魔獣、それ以外を魔物、総合でモンスターと呼んでいる。
ここも二階層と同じ草原マップのようだが……、はて、モンスターがいない階層など普通は存在しないのだが。
まさか固有モンスターマップか、一番乗りって言ってたし。
ちなみに固有モンスターマップとは、マップ上にモンスターが一体しか発生せずその階層の強さとしては半端なく強い部類の敵が発生するマップの事である。
まあ一度限りで倒せば通常マップに戻るのだが、正直相手の強さは階層による判断があてにできないため非常に危険である。
とりあえず気配を消して歩こう。
さて、探索していたわけだが特に何もなかった。
おかしい、引き返そう。
……いた。
雪のように真っ白い、角兎より一回り小さな兎である。
角は無い、しかし俗に言う傷持ちである。
傷持ちとは通常のモンスターの三倍は手強いと言われる歴戦の戦士の事である。
特徴的なのは体に大きな傷を持っている事、そして場合によっては特殊な能力を持っている事である。
今回は額に十字の傷がある。
カッコイイ、ヤバいこれ欲しい。
さて、問題はあれが何かである。
最悪この階層で帰還しギルドに報告しなければならない。
そーっと近寄りこっそり調達していた隷属の首輪と捕獲用筋弛緩剤をスタンバイする。
ちなみにこれ一個で三カ月分のお給料が飛んでいる。
まず、可能な限りこっそり近づき筋弛緩剤の瓶に注射針を取り付け襲いかかってぶっ刺すのである。
「そい!」
「ピッ!?」
本当にごめんねー、これも仕事なのよー。
十秒ぐらい暴れたが痙攣し始めた。
理由は筋弛緩剤とは名ばかりの速効性痺れ薬だからである。
まあしばらくの間うまく力が入らないって意味では筋弛緩剤ではあるのだけれど納得いかない。
まあ痺れ薬の効果は大体三十秒ぐらいしか効果がないんだけどね。
さて、まずは種族の確認だ。
見た感じ角なしの角兎ベビーってところだが、角兎にしては異様に白いな。
角兎も白っぽいが薄い絵具で黄色く汚れた感じの体毛をしている。
実はあまり知られていないが、ダンジョン内でも年若いモンスターと年を経たモンスターの二種類が発生する。
どこかから転送されているという説もあるが実際のところはわかっていない。
そしてこの魔獣、一体何なのかちょっと判断がつかない。
まあとりあえず、薬が効いている間にさっさとロープでしっかり拘束する。
そして、ここで隷属の首輪を使うがここで失敗したら報告義務があるので可能な限り持って帰らないといけなくなる。
成功して、くれよ?
そっと隷属の首輪を兎の首にはめる。
さて、どうなるか?
隷属の首輪が光る、そして溶ける。
ここまでは共通のプロセスである。
そして広がり兎を覆っていく。
兎がピーピー鳴いて可哀そうだが、慈悲をかければこちらが殺されるのだから手は抜けない。
なにせ、今回はうまく不意を付けたが傷持ち相手なら熟練の冒険者も死ぬ覚悟をするほどである。
このまま卵のような形になればだいたい成功であるが、たとえ完全に動けない相手であってもそうでなくても隷属の首輪で捕獲できる確率は一定である。
さっきも言ったように相手の賢さに応じて失敗する確率も上がるので傷持ち相手に成功するのは今回の世に薬を使った直後で万に一つと言う所か。
まあ首輪をはめる関係上薬を使って行動不能にしないとはめる事自体が難しいが。
そして、最初の処理が終わった。
綺麗な卵形ではあるがここから一分間、殻を割られなければ成功である。
十秒がたった。
二十秒が立ち痺れが取れたらしく暴れ出した。
三十秒が立ち暴れ続けている。
四十秒、五十秒、五、四、三、二、一……、成功したのか?
ちなみに調教師だとこの一分間が省略される。
噂によるとこの一分間で残り体力を使い抵抗されるらしい。
各職業に与えられる世界からの祝福って基本理不尽である。
どうやら大人しくなった様だ。
まあ捕獲に成功したからと言ってすぐにどうこうできるわけじゃない。
一ヶ月ほどして卵から出てくるまで一切干渉できない。
一説にはこの一ヶ月間で必要な知識と服従を刷り込まれるのだと言われている。
まあ、捕獲に成功したので卵をリュックに詰め込み四階層へ、いこ……?
気づけばすでに発生し始めていたモンスターに囲まれている。
一体の大きさは俺の三倍程度ではあるが、爪が鋭い。
これで大体成人男性とかぐらいの大きさか?
狼、だと?
なんとなく纏っている空気がおかしい。
兎の体臭がついていて兎の耳を付けている自分はさぞや美味しく見えるのだろう。
狼たちの目がギンギンギラギラ輝いて嬉しそうに詰め寄ってきている。
もうよだれダラダラで牙も剥き出し、口をあけ息は荒く非常に興奮してるっポイ。
うん、逃げよう。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい物理的に食われる!
即ダッシュで逃げ出したのだが俺の速度と狼の速度は大体一緒であったのが救いか。
四階層の階段に近かったため前の階層に逃げ込むには相当走らないといけない。
狼たちは四階層に逃げ込まれるのを防ごうとしたのか四階層側の階段付近からこちらを追い詰めていたのが逃げ切れた要因である。
しかしよかった、今日は加速セットを装備してきている。
なかったら追いつかれて強制的に戦闘になった事だろう。
そして俺はそのまま二階層へと逃げ帰った。
ちなみにモンスターはダンジョンの階層から出られないので入口で立ち往生する事になった。
そのまま突進してきた場合、モンスターだけ見えない壁にぶつかって痛い思いをする事になっただろう。
ここらへんはどうなってるのかわからないがファンタジーで片づける事にする。
さて、そのまま二階層も一階層も走り抜け外に出たわけだが、超笑顔で監視員の神官さんが待っていた。
いや、新しいダンジョンの情報が欲しいのはわかりますけど、そこまで綺麗で純粋で物欲しそうな笑顔だと引きますよ?
「今日も大量ですね。それでは報告の方をお願いします」
「あー、えっと。最終到達階層は三階層、二階層までは前ダンジョンと同様、三階層は固有階層で兎っぽいモンスターを撃破、しかしその後発生したモンスターに囲まれたため逃亡」
「ふむふむ、そのお相手は?」
「倒さなかったので不明ですが見た目から言って影踏み狼の可能性大、しかも三階層は影踏み狼のみのようでした」
「……元四十階層のモンスターですか。これはまた、難易度が一気に跳ね上がりましたね」
「報告は以上です」
「はい、ご協力感謝します」
ちなみにここで行われた報告は神殿で統合管理される。
情報は買う事によって閲覧できるが基本有料である。
ただし、たまにダンジョンからモンスターがあふれる現象があるので警戒のため報告は必須であり義務である。
まあ大抵要注意の階層があれば入る前に教えてくれるのでその恩返しみたいなものである。
神殿もといギルド側も冒険者が減るのは不利益なため基本的にそのようにしている。
さて、もう今日は帰ろう。
移住先の家は現在地上二階地下二階の四階建て? である。
地上一階が寝室兼調合室、二階が薬剤庫、地下が地下通路入口兼倉庫である。
とりあえずそんなこんなで生活しているわけだが、移住先は現状としては魔法でエアコン作らないと死ねるかもしれない。
いやぁ、作った当初は扉があきっぱなしだったから気づかなかったんだけどさ、硬化剤の断熱効果恐ろしい。
この部屋で熱を発するのって自分ぐらいな覚えがあるんだが気づけば真夏みたいな気温になってました。
この前開発した冷蔵魔法を改良するしかないか……。
しかし室温の感知部分って未実装なんだよなあれ、開発者がへまこいたのか元々そんな機能なかったのに誰かが後付しようとしたけっかあんなへんてこな式になってるのかわからんが。
ちなみに方式としては転移の魔具の応用で、熱だけを転送する方式である。
これ調べてみるとすごくぶっ飛んだ方式で理解するまで一年もかかった。
いやね、例えるなら空気中の静電気を集めて電化製品で使うってぐらいぶっ飛んでるのよ。
エネルギーを感知する方式と転送する方式は(常人には解読不能という意味で)最早芸術レベルの領域で、温度感知術式を組み込むための部分であろう所が空白になっているぐらいか。
予測するに空間座標上にあるエネルギー総量で温度をはかろうとしたが、術式を見る限り感知できるのは転送しているエネルギーの流れのみとなっている。
これって別の温度感知用の術式作ってそれの連携術式ぶち込むしかないよな。
速いところ開発しないと室内がサウナになってしまう。
ここ一週間は開発のために野宿ですよ家があるのに、泣くぞこんちくしょう。
とりあえず新しく作った熱量観測術式を温度計式とでも名付けるか。
それによると扉を閉めた状態では室温が一向に下がりません。
まあ、一応温度計式はできたがこれどうやって連携させるよ?
あー、温度に応じて転送量をいじる方式も組まないといけないのか。
という事は最低でも三つも魔具製品組まないといけないって事か?
とりあえず温度計式に通知機能を付けて別の術式へ発動トリガー用のデータ転送機能をつける。
そして今度は受け取って判断する術式だ。
適温は二十五度ぐらいか?
いっその事この術式に手を加える事で温度調節できるようにするか。
ってことはあの芸術的な式を解体してエネルギー排出量を外部から受け取って作動するようにしないといけないわけか?
ヤバい死ねる。
プログラムは趣味でちょっといじってた程度だから本格的なコーティングっつったっけ? とにかくプログラム組むノウハウなんて持ってないよ。
どうしろってのさ。
とりあえず受け取った現在の室温と設定温度の差分をエネルギー排出量に変換して渡すようにしなければ。
更新タイミングは五分周期ぐらいか?
それだと室内の魔力が枯渇するか。
ただでさえ転送術式に限定空間内の魔力使うしな。
液体魔力をエネルギー源にするか?
それだと本格的な“装置”を作る事になるな。
ぶっちゃけオーバーテクノロジーってレベルじゃねえぞ。
もし王宮に献上したらそれだけで最高位の貴族に成れるぐらい革命的である。
それぐらい室温の管理にはいろいろな奴らが悩まされているのである。
なんで皆こんな術式を開発しなかったのかね?
もしかしてあの謎の空白部分は現在開発中なのか?
あの術式じゃどう見ても難しいと思うけどなぁ。
ちなみに術式を物体に対して焼き付け術式基盤という現代で言う精密機械を作る職業は付与術師と呼ばれる魔法術師の上位職が行える。
術式基盤はその周囲にある空間魔力と言うものを吸い上げて通常は常時、俺が開発した一部のものは任意で作動するようにできている。
ちなみにどれだけ微細な術式を焼きつけられるかは付与術師の技量によるわけで、どれだけ万能な術式を作っても複雑であればあるほど刻める術師はいなくなるわけだ。
自分が作ったオンオフ回路だけでも付与できるのは国宝クラスの付与術師が一年かけてやっとぐらいであろうと思う。
ただし何事にも裏技があって、基盤部分と術式回路部分を魔法やスキルではなく人力で作成した場合、付与術師の仕事は基盤への回路定着作業なので腕は関係ないのだ。
まあ自分がぽっと出の付与術師捕まえてその技術を一緒に開発したわけだが。
いやぁ、正直鍛冶の腕とかも必要なのでお爺さんの協力がなければ一切成功しない技術なんだけどね。
正直現代の精密基盤を知っている俺からしたらこの世界で使われている魔法陣? まあ術式基盤は糞みたいな集積度、子供の工作レベルに見えるわけで。
まあ実際スキル代行という技術を利用して作ってみたが糞難しくまともに術式組むこともできなかったが。
あれだね、子供のおもちゃって馬鹿にしたものに馬鹿にされると本当に腹が立つ。
ああちなみにスキル代行ってのは、その魔法やスキルを覚えている相手から魔法やスキルを借り受ける技術である。
ただし使用にはとてつもなくたくさんの制限があり、特定の場所、特定の時間、特定の触媒、特定の手順を踏まなければならないと厄介極まりない技術だ。
まあ相手の脳味噌を自由に使うような超技術なので理解不能で解析不能でとりあえずつかえたからいいやと言う技術である。
開発に戻るか。
冷蔵術式も既存の術式を組み合わせて俺が作ったとは言え、術式そのものは論文やらなんやらにあった術式のごっちゃ煮である。
それも全部理解しないと作れそうもないなぁ。
そんでもって作らなければいけない術式が。
・受け取った排熱エネルギー量に応じて熱エネルギー転送量を変更し上空百メートルへ転送する術式。
これが完成系のエアコン術式である。
現在冷蔵術式から解析できている式が次のものだ。
・熱エネルギーのみを転送対象にする術式。(解析中変更不可能)
・ターゲット範囲の指定術式。
・ターゲット範囲と外部の空気の層形成による区別用術式。
・指定対象を上空百メートルへ常時転送する術式。(解析中変更不可能)
うわぁ、重要部分丸々流用じゃないか、絶望的。
まず熱エネルギーのみを転送対象にする術式の解析からである。
んー、複雑な術式って安易にコピーされないように暗号化もされてるから、例えるならピカソの絵なんだよなぁ。
まず暗号化を解除っと……、また複雑な術式が。
頭痛ぇ。
えーと、対象選択の記載がこれで、熱エネルギーが……、内部術式だと?
さらに暗号化解除っと。
うわぁ……、なんでこんな術式でできるんだ。
出てきた術式は通常の転移術式の中途半端に作った物体。
かりにこんな術式で転移しようとしたら体の一部とかこま切れになってとかになるぞおい。
これは魔力効率も悪いし一から作るしかない。
確か火炎弾の魔法に熱を作れっていう術式があったからそこから熱の部分を流用して、たしかコール魔法の解析術式に魔力量を調べる術式があったはずだからえーと?
まあ開発なんて楽しいものではない。
結論に行ってしまおう。
他の魔法から解析して出てきた術式文字が次のものである。
・火炎弾から熱発生術式(熱の術式文字を流用)
・解析から魔力量計算術式(量を計算する術式)
・範囲爆撃から範囲指定、使用魔力計算術式(範囲指定する術式)
組み合わせる事によってやっと範囲内の熱量を計測する術式ができた。
総熱量を計算しないと対象にできないとか聞いてない。
まあ使用魔力は半分ぐらいになったけど。
さて次である。
転送術式は暗号化合戦と言ってもいい。
正直ポピュラーで最も多く使われており最も多く危険をはらむ術式である。
なにせ、攻撃魔法として使えば相手の腕や足を瞬時に奪ったり触れる事も近づく事もなく首を飛ばす事もできる。
そりゃあ解析が禁止された挙句研究も王立の専門機関でしか許可されないわけだ。
なるほど、それで暗黙の了解[転送は攻撃に使用しない]があるわけね。
ちなみにだが、魔法と術式は同一の技術体系上にある別物で、魔法は「体系付けられた変更不可能で個人でも習得可能」であるもの。
魔法から発展し「個人での使用は不可能であるが誰でも使用できる機能特化魔具」にした基礎部分が術式である。
なお、プログラム部分である術式を作動可能な物理面に書き込んだものを術式基盤という。
まあ転送術式解析中。
一ヶ月かかってもまだ解析できていない。
どんだけー。
まあいろいろ忙しいってのもあるけど。
現在全体からみた一割程度しか解析できていない。
王立の暗号化技術スゲー。
正直ブラックボックステスト(内容を知らず作動させて動作を見るテスト)でリバースエンジニアリング(逆算のようなもの、隠された中身を暴き出す事)すれば早かったか?
しかし理解せずにやって腕とか足とか命とか無くなっちゃいましたーなんて言えないしな。
頑張って解析するしかない。
ああ、後兎が帰ってきた。
基本外で草食べている。
残念な事に時間がないのでかまってやれない。
とりあえずはフィフィル家の警備員みたいなことをしてもらっている。
さらに一ヶ月がたった。
なんで解析してるんだっけ?
商品の入荷もしながらだからなかなか進まない。
とりあえず法則性を見つけ半分ぐらいまで解析できた。
全体が見えなければどうともいえないが、空間をつなぐ術式と入れ替える術式があるように見える。
一体全体どうやってこれが転送になるのさ?
一方的に押し出して送るのか?
さらに一ヶ月がたった。
やばい解析面白すぎ。
商品の入荷もしながらだが、ストレス解消にちょうど良すぎる件。
ヤバいわこれ、クロスワードにハマるみたいにハマるわこれほんと。
九割まで解析できたが最後の転送の始動式ともいえる基礎部分が本当に凝固に暗号化されている。
絶対攻略して見せるぜ!
さらに一ヶ月がたった。
商店の方には入荷を一ヶ月休む旨を伝え本格的に解析した。
結果、解析には成功したが高度すぎて意味不明である。
ただ何となく流れはわかるし、付け足された部分は判断できるので流用はできそうである。
えーと、そうか開発か。
えーと?
とりあえず転送術式の基礎は洗練されすぎていじれない、高度すぎる。
変な部分を排除するとこんな形になる。
・起動用基礎術式(流用)
・情報受信術式(流用)
・対象選別術式(流用)
・転送指定術式(流用・百メートル上空固定)
・転送開始術式(流用)
百メートル上空固定なのは元々そういう転送術式だからだろう。
たぶん通常の転送術式はここに転送先情報の受取術式と組み込み術式があるはずである。
さらにこれに熱感知術式を組み込み、排熱量受信術式を組み込み、情報受信術式と合わせる。
えーと、これが基礎術式になるわけで。
・起動用基礎術式(流用)
・新型・転送対象総熱量観測術式(新規)
・新型・排熱量受信術式(情報受信を改造)
・新型・指定熱量対象化術式(対象選別術式を改造)
・転送指定術式(流用・百メートル上空固定)
・転送開始術式(流用)
・終了及び事後待機術式(新規・オンオフスイッチ術式)
並べると縦三十センチ横一メートル三十センチぐらいか。
次にえーと、温度設定術式か。
・数値化温度受信術式(新規)
・数値化温度設定術式(新規・基礎を二十五度に設定)
・転送術式への送信術式(新規)
ちなみに温度設定は情報せって用端末、通称リモコンで行う予定である。
後は温度計術式が、えーと?
ふむ、不備のある術式があるな、ここをこうしてっと。
・熱総量観測術式・改(新規)
・数値化基準設定術式(新規)
・設定術式への送信術式(新規)
完成、これを術式基盤にすると……、箱ができるな。
大体縦三十センチ横三十センチ高さ一メートル三十センチになる。
材料は糞高い抗魔銀と魔法銀、内部保護用ステンレス板材、外部包装用のダマスカス板材、燃料もとい液体魔力投入口のガラス容器部分。
糞たけぇ、たぶん材料だけで城が買えるぞおい。
まあお狐様に物々交換頼めば薬と交換で一番高いのはどうにかなるが、術式基盤の作成に一年以上かかるんじゃないの?
課題は尽きない。
第一章プロローグ終了時点での主人公ステータス。
スキルでない自力での物作りは生産スキルには含まれません。
なお、祝福は無条件に詳細閲覧可能。
名称:フィフィル・ファウ・フォリア 職名:フィー
職業:職業訓練生
転職可能職業:商人[15]、調合師[15]、鍛冶師[15]、術式使い[99]
Lv. 46/99 EXP.31.44% NEXT:92534
称号一覧
[@*者]$級#’:システム権限により詳細閲覧不可
[限界突破体現者]特級称号:システム権限により詳細閲覧不可
[先を歩む者]特級称号:システム権限により詳細閲覧不可
>>特殊技能一覧
>魔法:ステータス閲覧
・Lv.1 名前、職業、称号、本スキル詳細と技能一覧を閲覧可能
・Lv.2 状態、称号元、技能詳細、転職可能職業を閲覧可能
・Lv.3 レベル、現在経験値量、必要経験値量を閲覧可能
・Next-count 42350
>魔法:生命力回復補助
・Lv20 活力を回復可能、ただしカロリーを大幅に消費する。
効果一、一定時間生命力の上昇により傷の治りが早くなる。
効果二、一定時間気力などで動けなくなっても動けるようになる。
>魔法:肉体活性化
・Lv40 新陳代謝を向上させるがカロリーを大幅に消費する。
効果一、身体能力の上昇、傷を治す速度の上昇。
効果二、免疫力向上にともなう解毒速度の上昇。
>魔法:終わりの裁き
・Lv1 =身及び|手の罪・重+によってダメ_ジが変わる対’魔法。
効果一、自身より相手の罪が重ければ二倍のダメージを与える。
効果二、自身が相手の罪より重ければ自身もダメージを受ける。
効果三、自身と相手の罪の重さが同じであれば三倍のダメージを与える。
>>祝福一覧
>長命種の宿命
>第一次限界突破者
>自分殺しの宿命
>呪い:シャドウハンド
・レベルアップ時ステータス追加上昇
・転職制限[基本職の転職不可]
・転職干渉[特殊職業解放]
・特殊干渉[レアドロップ率上昇]
・特殊干渉[固有モンスター遭遇率上昇]
・特殊干渉[固有スキル獲得]
・特殊干渉[肉体成長停止:十年]
・特殊干渉[再度ドッペルゲンガーを殺した時反射ダメージ二倍または二分の一]
・特殊干渉[次の転職までステータスの大部分を見れなくなる]