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[練習作]ダンジョン物  作者: 夜霧 時矢
再誕~駆け出しの頃~
6/11

第五話 別れは静かに

なんか予測していた方向と百八十度ほどずれてしまった感じである。

まあ一人で生活していれば好き勝手出来るから書きやすく……、なるといいなぁ。

とりあえず旧ダンジョン物でいう強制転職の乱はこれにて終了。

次回からは……、どうしようかな?

 裏切ったな僕の気持ちを裏切ったんだ皆皆裏切ったんだ!



 はい、絶賛防衛中のフィーでございます。

 現在情報戦を行っています。

 変装中です。

 見た目女の子になっています。

 どこどこで自分を見たという情報をちらっと流してちょっと離れたところのを流してあのお兄ちゃん見つかったの? って無垢な笑顔で聞いたりして疑われる要素をまず潰しました。

 髪の毛を黒く染め同じ色の付け耳で半獣(ワイルドハーフ)に化けております。

 いやぁ、自分結構雑貨とか材料とかの供給元として活動してたもんだから二月も引き籠ってると怖いお姉さんもとい各店舗の仕入れ担当さんが血眼になって探しているわけで、いつの間にか自分が逃げ出した原因にされていた神殿の関係者も草の根わけるように探し回っているわけで。

 いやね、出てきている事はどうやらおっちゃんが教えてしまったようなのですよ。

 しかも地下倉庫公開付きで。

 隣の空き地を買わされたとボヤいているのを変装した姿でこっそり聞いていたから間違いない。

 今はカツラも用意したし魔法で動く付け耳と尻尾を装備していて女の子の服を着て軽く化粧をし裏声で女の子として振る舞っているのでおやっさんすら気づきませんとも。

 正直困ったなぁ。

 見つかったら確実に大目玉食らうよね、俺が悪いわけじゃないのに。

 なぜこうなった?

 どうしてこうなった?


 そもそもなんで指名手配されてるの?


 意味が分からん。

 しかもこの金額何さ、十万エクだと? 日本円換算で一千万だぞおい!?

 この世界の物価って安いんだぞ! 馬鹿にするなよ一千万を!

 何さ何さ、俺が一体何をしたって言うのさ!

 いきなり自白剤嗅がせといて、しまいにはこれか。

 もうなんかね、さすがに裏切られた気持ちでいっぱいですよ。

 俺が悪いのか?

 俺が悪かったんだろうか?

 そんな事は無いはずだ、ノック無視したけど。

 傷心の自分は引きこもっても問題ないはずだ、突入されたらしいけど。

 もう誰も信用できないかもしれない。

 悪意は無くても情報は漏れるのだ、現代社会での生活経験のある俺が言うのだから間違いない。

 情報化社会なめるなよ!

 顔と住所がネットにバレルだけである種の祭りが起きるほど祭り好きなんだぞ!

 なんか違うとはこの際言わせない。

 それだけ情報は怖いのだ。

 何処に隠れるべきか? どう逃げ出すべきか? どこに逃げるべきか?

 簡単である。

 何のためにあんなに苦労して要塞を建設したと思ってるのさ。

 極小さな要塞、極大きな防御力、補給は地下道からこっそりダンジョンへ。

 なんだ、無敵じゃないか。


 フィフィルの技術はせかいいちいいいいいい!


 まあ異世界の職人様方が開発した技術なんだけどね。

 森のもっと奥に日本家屋でも作ってまったり暮らそうかな? できそうもないけど。

 とりあえず偵察偵察っと。

 なぬ。

 どうした事だ。

 神殿に、子供が、増えている、だと!?

 俺用済み!?

 いやいや、元々神殿は税金払ってないし特定個人が住んでいるわけじゃないからその考え方は間違いか。

 そんな理由で今まで一度も使った事のない望遠鏡を引っ張り出して町の外壁の上から孤児院を観察していたら吹いてしまった。

 無論壁と同じ汚れた白い色の布をかぶりカモフラージュしております。

 さて、もっと良く調べよう。

 ……おや、なんかけが人が多いし見た事もない顔がいっぱいいるじゃないか。

 外から傭兵でも呼び寄せたのか?

 それにしては特に何もないはずなのに怪我人が多いな。

 何かあったんだろうか?

 ……ん? 今子供が長屋に入らなかったか?

 あそこって仮眠室って言っても対外的には孤児院だよな、そもそもなんで改築と増設がされたのか推測するべきか。

 まあ考えるまでもないか。

 あそこは孤児院で、子供が入って行って、かつ怪我人が多い。

 どこかの村が山賊にでも潰されたか?

 どちらかと言えばモンスターの襲撃の方を考えるべきか。

 とにかくあいつらは孤児で怪我人はよそ者と考えた方がよさそうだ。

 確か薬はおやっさんに結構分けたのがあるはずだから足りてるはず。

 なら単純に在庫が不足してきているから生産者(おれ)を呼び戻したいのか?

 いやそれだけなら人伝に伝えればいいだけだ、生産なら関わらなくてもできるからな。

 推測だけじゃ現状がつかめない。

 現状がわからないまま手遅れになったら目も当てられない。

 しかたない、話を聞きに行くか。

 とりあえず自宅だな。

 撤収!




~世界が激震し始めてからの巻~

 目指すのは商店の地下倉庫。

 実は塞ぐときに、内側からなら閂を外せば簡単に開けられるようにしておいたのさ!

 何やらいろいろ商品が置いてあるところ見るとちゃんと倉庫として使ってるみたいだな、関心関心。

 これなら待ってれば降りてくるか。

 さて、おっちゃんが降りてくるのを……、って奥さんが降りてきた。

 まあ奥さんでもいいか。


「ちょっとすみ」

「キャア!?」

「すみませんよ。逸れニートのフィーでございます」

「あ、うん。こんなところでどうしたのかしら? みんな探しているわよ?」


 彼の奥さん、すごくかわいい声でした。

 あのリア充め。


「なぜ自分が探されているのかと、今町で起こっている事をお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」

「そんなにかしこまらなくてもいいのに。えっとね、貴方を探しているのは薬が足りないからで」


 やはりか。


「町は今大変な事になっているの。ダンジョンに成長の兆しが見られるみたいで地上のモンスターが凶暴化してて」

「村が一つ襲われ壊滅したと。ついでに村人は戦うより逃げる事を優先したから全員無事だと」

「え? その通りなんだけど良く知ってるわね」


 そりゃなんとなく予測付けてましたから。

 見た感じ重傷者はいなかったし、疲れている人はいても誰か死んだような感じはなかったからそうじゃないかと思ったんだ。

 孤児もあんまり寂しがってないところを見るに孤児院は臨時の避難所になっているんだろう。

 地下にいたから改築しているのに全然気づかなかったんだぜ!

 まあすみません嘘です予想の斜め上でした。


「それで貴方に村を取り戻す事を依頼したかったみたいだけど貴方がちょうど雲隠れしちゃって皆困ってたの」

「そーなんですかー。俺が困ってる時にいきなり自白剤食らわせてくれる人たちが困ってるんですかー」


 きっと今自分の笑顔は黒い笑顔に違いない。


「そうなのよー。もう町の住人からも秘蔵っ子を出せってせっつかれてるみたいで皆疲れ切ってるわ」


 おっちゃんの奥さん、肝っ玉が太いというよりは天然だ。

 ド天然だ、たぶん神殿への嫌味なの気づいてないだろうねこれは。

 そういう意味ではどこかすっとぼけたおっちゃんと似た者夫婦でお似合いなのだろう。


「ああ、じゃあこの滋養強壮薬わたして馬車馬の如くはたらくがいいよって伝言してもらえますかね。ああこっちは旦那さんと使って下さい」

「ありがと。皆もそろそろしっかり反省したころだから頃合いを見て許してあげてね」

「!?」


 なん、だと?

 まさか気づかないふりは演技だったというのか!

 この奥さん、できる!!


「まあ気が向いたら。薬は今日中にここに持ってきますけど、告げ口は禁止だよ?」

「夫の恩人だもの、告げ口なんてしないわ。これからも仲良くしてあげてね」


 できた奥さんだ。

 なんてできた奥さんだ。

 おやっさんにはもったいない、本当にもったいない!

 俺も奥さん貰うならこんな夫を立てるしっかりした人がいいなぁ。


「ではまた後で薬を持ってきますね。ここに置いておけばいいですかね?」

「そうしてくれると助かるわ、わざわざ女の子の恰好するぐらいだもの、まだ人前に出たくないんでしょ?」

「……あ」


 忘れてました。

 まあ体がまだ子供なんで女装してもほほえましいしカツラかぶれば完全に女の子に見えるから問題ないんだけどね。


「で、ではさようならー!」


 ピューっと音が鳴るほどの速度で逃げ出した。

 まあ、流石に恥ずかしいわけで、問題なくても恥ずかしい物は恥ずかしいのだ。

 まあとりあえず現状はわかった。

 薬はすぐにもっていったがやはり奥さんもおやっさんもいなかったところを見ると気を使ってもらったんだろう。

 隠し通路を元に戻しつつ考える。

 俺はどうしたらいいだろうか?

 よくわからない。

 それにさ、ぶっちゃけみんなが思っているほど俺は強くない。

 ゲームで言うAGI(すばやさ)特化型なので魔物をバンバンぶっ殺してるように見えるだろうが、核を外れれば手数は普通の冒険者よりもはるかに多くならざるをえないのだ。

 つまり、攻撃力が弱い。

 持っている武器も見ればわかると思う。


 ・精霊獣の角剣 丈夫さが取り柄で最上級初心者装備。

 ・十五代目スライム殺しの小槍 アイスピックの流用品です本当にありがとうございました。

 ・投擲用毒短剣 毎回回収する採算度外視装備で毒の追加効果付き。

 ・自宅用ブラッティシザーズ 草刈り用の大鎌です、本当にありがとうございました。


 全部初心者武器もとい低レベル武装です本当にありがとうございました。

 ちなみに最後のやつはもともと武器を草刈り鎌に改造したものなので名前が痛いのだ。

 文句は無駄に大きな刃をつけた武器の作成者に言ってくれ。

 そもそも最後のは武器ですらねえよ!

 まあ防具は死にたくないので魔具がずらーりずらりだけどね。


 ・幸運兎の耳(兜モドキ、ウサ耳ヘアバンドともいう・幸運効果)

 ・抗魔銀(ヴァルドラ)鉢金(はちがね)(鉢巻で額に当てる金属の防具・魔法ダメージ軽減効果)

 ・幸運兎の尻尾(首飾り・幸運効果)

 ・祝福の法衣・改(防御魔法式を織り込み済み・致命的攻撃に対し一度のみ発動)

 ・魔法銀(ミスリル)鎖帷子(くさりかたびら)(物理干渉型衝撃軽減効果)

 ・守護の手袋×2 両手のため二つ(上記と同様)

 ・守りの籠手×2 両手のため二つ(上記と同様)

 ・守護の腕輪×2 両手のため二つ(上記と同様)

 ・守護の足輪×2 両足のため二つ(上記と同様)

 ・風の草足袋(くさたび)靴下と同じ一セット(靴下モドキ・速度強化効果)

 ・瞬足の草踏(くさぶみ)靴と同じ一セット(この世界特有の草履モドキ・速度強化効果)


 正直ここまで装備してたら相手がとんでもない人外でもない限り殺されないと思うんだ。

 ちなみに兎シリーズは効果が高い順に尻尾、耳、前足、後足だと言われている。

 ただし、幸運値とも言えるものに対し最も効果が高い物が適応されるのがこの世界のシステムである。

 まあ統計取って調べてみました、まあ二つだけだったので確実じゃないが七割がたそうだろうと思っている。

 なお、鉢金は作成者にあやかって三尾の狐を彫り込んでいる。

 鎖帷子は見えないし法衣も見た目にそれほどの違いは無い。

 腕輪と足環は透明だし普段は鉢金を外しているのでそれほどおかしな姿には見えない、はず。

 手袋も指が出るようになってるし籠手だって謎の肌色の金属なので目立たないはずである。

 指輪系の魔具がごてごてしいから一切付けてないし、まだファッションの域だと思うんだけどやっぱり変かなぁ?

 草足袋と草踏は結構誰でも使ってるし、こっちの世界だと靴の方が少なかったりするよななぜか。

 まあ全部歩きな関係上修繕しやすい物が流行った結果だろう。

 まあこんな装備なのでやたらめったら物理攻撃に強く俺の種族特性から魔法もあんまり効かないというチート装備である。

 結果、超機動要塞フィフィルが完成しているわけだ。

 まあ、さすがにお風呂とかでは脱ぐがお風呂に持って入って洗うぐらい念入りにそばから離さないようにしている。

 その関係上ウサ耳と服は結構ダメになるのが早いのが悩みだが、耳は結構ドロップするし服は買えばいいので問題ない。

 まあ買わずに修繕して使っているが。

 草足袋と草踏は足が速くなる薬草を編んで作ったものを魔具化したら出来上がったものだ。

 ただしこれが一番コストかかっていて、足が速くなる薬草一つ一つが高いせいか片方を一回取り換えるのに一千エク(約十万円)近くかかるので普段は普通のやつを使っている。

 まあ材料も自分で調達しているので何の問題もないがやはりもったいない物はもったいない。

 さて、気づいただろうか。

 装備の効果の中に回復力増強は存在しないのだ。

 つまりは元々瞬殺用の短期戦用装備なのである。

 やはり攻撃力増強は急務である。

 刀が欲しいなぁ。


 ちょっと無駄な話をしよう。


 ダマスカスかスプリング刀のどちらにするか悩むが、どっちも特性があるからな。

 ちなみに説明するとスプリング刀とは自動車で使われるリーフスプリングという板バネを刀の形にでっち上げたものである。

 元がバネなので剛性と切れ味を維持しながら折れず曲がらず柔軟な刀身を作る事が出来るのである。

 ただし刀の美しさがそれなりに失われており美術品としての刀とは別物の実戦刀となっている。

 また材料の入手性から言ってもコストが安いため、それが一番の特徴とも言え使い捨てにできなくもないのが魅力と言えば魅力か。

 西洋融合の鋼鉄木刀モドキとして作った場合凶悪な鈍器にもなるとだけ言っておく。

 スプリング刀の特徴として質が悪いと予想以上にしなる、かつその際刃を痛めるため防御にはあまり向いていない。

 また雑に扱っても刃は欠けるが元がバネなので結構壊れないという素人向きの刀と言える。

 まあ一度曲がると元が工業用のバネなため人力ではほぼ確実に戻せず戻せたとしてもその部分の強度が著しく低下するため廃棄するしかないという弱点を持つ。

 まさに俺のような素人向け使い捨て刀なのである。

 十本ぐらい作ったがならしで速駄目にしたのはいい思い出である。

 だがあえて言おう、瞬天殺は男のロマンである。

 逆にダマスカス刀とはダマスカス鉱、別名ウーツ鉱と呼ばれる多重三次元層構造を持つ合金で作られた刀の事で、樹木のような波紋を持ち美術品としても価値の高い刀である。

 そして美術性に比例するかのように製造コストが恐ろしく高く材料の入手難度も最高である。(※俺が製造した場合の話である)

 ただし現状の技術で製造できる刀としては最高のものがこれだ。(※現代技術がふんだんに使われているので俺が最先端である)

 ダマスカス刀もスプリング刀と同じように剛性と柔軟性が同居した刀ではあるがある一方向からの圧力に対し弱いという特性がある。

 それはダマスカス特有の層構造を俺が作る際、材料の段階で技術力不足から二次元層構造で作るための技術上の問題で、層構造に対して平衡の圧力に弱い。

 技術が拙いため金属同士の接着が甘く、酷い時は剥がれるのだ。

 層構造を縦方向に向けて作り、縦方向から見た際の厚さで強度を補うため突きには向かなくなるのだ。

 そのためダマスカス二次元構造刀は質が悪いと突きを行った時、剥がれるようなおかしな割れ方をする。

 技量も低いくせに核を一突きにして破壊する関係上自分に向いていないと言えるだろう。

 かと言って本来の三次元層は必要な技術レベルが高すぎて自分では製造できないしできたとしても適切な加工が無理と言わざる負えない。

 材料をぶち込んで自然生成するダマスカス鉱は品質が不安定すぎるため再調達時に同質の刀を用意できないため断念したので存在しない。

 三次元構造刀の可能性としては、いきなり刀の形で構造と金属配分を意識して作り刃の部分を鍛え刃を付けるしかないわけで、もうその時点でムリゲーである。

 たとえるなら有効射程三百メートルのマシンガンに残弾一発の状態で一キロ先のリンゴに刺さった縫い針の穴を正確にねらえ、と言われているのと同義である。

 そしてそもそもダマスカス刀自体が玄人向きの刀で、この世界では刀術が存在しない以上作っても宝の持ち腐れになる可能性が非常に高い。

 更に言えばダマスカス鉱は二次元構造でも製造そのものが難しく、ダマスカス鉱自体も扱いが非常に難しい金属であり、使い方を間違えるとゴミに成り下がるのも特徴の一つである。

 最後だが、さすがのダマスカス刀も漫画のようにグニャグニャ曲がるほどの柔軟性はもっていない。

 仮にあったとしてもそれは絶対魔法か何かファンタジーの力を借りているのである。

 まあ両方共に生粋の平和ボケの国では触れる機会すらなかったので実際にどうなのかまではわからないが、まあ知識の面から研究した結果だしほとんど間違っていないだろう。

 ただし、ダマスカス刀はこちらで研究した結果が全てだ。

 生前の世界ではそろそろ再現できたのかな?

 まあ実戦刀として一番優秀なのはステンレス刀であるが……、あれは重さと切れ味がなぁという話である。

 ただしほぼ一切の手入れ不要というのはのどから手が出るほど欲しい効果ではあるが。

 まあステンレス材質の板バネ材を用意すればいいのだが硬く脆くなるんだよなぁ、まあそれで今度作ろう。

 魔導鉱物はここいらのダンジョンじゃ生成されてないから刀一本分で国が買えるほどの値段になりそうだし無理だ。

 まあ鋼材が一番奥深いがやはり元素の再配列加工で作る元素設計刀が最強だよなぁ、材料の入手難度考えなければ。

 材質の外から中央に向けて計画的変更と配置、それに加え原子配列そのものに干渉して原子配列レベルの三次元構造を持つ刀を作ればそれだけで斬鉄剣ができる。

 まあ自力でその域に手をかけるのが神業を持つ職人なんだが俺の能力と技術では不可能である。

 我が刀に切れぬものなし! とか言ってみたい。

 ちなみにだが、原子の再配列なんてできれば焼き入れや焼き戻しの状態すら再現できるのでそもそも鍛冶ではなく製造というなんとも味気ない物に成り下がる。

 しかしそんな微細な配置換え技術なんて魔法でも見た事ねぇよと言う話。


 そういえば何の話だっけか?


 そうだ、今後の事だっけ。

 まあ刀の材料はあるし後でって、また話がそれている。

 今問題なのはこれからどうするかである。

 しかたない、俺自身混乱してるみたいだし一度家に帰って寝てから考えよう。




~呼びかけられてからの巻~

 目が覚めるとそこは生前の世界だった。

 誰もいません。

 恐怖。

 そしてばっと目が覚める。

 はい、夢落ちです、分かっててもああいうのは怖いですね。

 ガクブルものです、誰か助けてー。

 ……しかし不思議だ。

 あんな夢を見るほど心にダメージ受けてないはずだけどなぁ。

 何よりもこの世界でやってる物作りが楽しいし、別に提供する相手がいなくても一人で作ればいいんじゃねと思えるほどにはこの世界を気に入っている。

 ホームシックではないから安心できる場所に帰りたかったのだろう。

 まあ自宅は一人に馴れる場所だったからなぁ。

 今だから思うが、本とパソコン以外は何もない部屋だなぁと。

 エロ本の一冊でもあればまだ可愛げがあったのかもしれないが、あったのは一昔前の小説やらレンタルしてきたDVD(アニメ)ぐらいである。

 後は知識欲を満たすためにネットが繋がった旧式PCぐらいだ。

 さすがにDVDは借り物だったので愛着は無いが、他の物は本当に大切にしていた。

 PCなんてわざわざ基盤のダメになった部品を交換して使っていたほどだ。

 昔の基盤は集積率が低いので交換しやすかったってのもあるが。

 もちろん買い替えるお金がなかったというのもあるが。

 でも少ないから、長く使ったからこそどれにも不思議と愛着があったしとても大事にしていた。


 だからだろうか。


 遺志を残され年を経た器物には意思が宿ると言われている。

 所謂(いわゆる)付喪神(つくもがみ)である。

 なんとなく近くに感じる。

 決して届かない、薄皮一枚の向こう側に。

 これが哀愁なのかオカルトなのかは判断できないが、意思のようなものを感じた。

 お前らは今を思い返せって言うのか?

 確かに生前に比べたら生活は充実しているし現代知識のおかげで優越感にも浸れる。

 周りのみんなの役にも立てるし一人で生活できるほどにもなった。

 仲直りしろとでも言うのか?

 確かに、一方的に引き籠ったのは事実だけど仲たがいなんてした覚えはない。

 むしろ向こうが犯罪者みたいに賞金かけるなんてことをしたのだ。

 ……生前合わせればすでに六十近く、大抵の相手に年上な自分が譲歩しろって事か。

 まあこの変な感じだけど核心みたいのに従って仲直り……、仲直りなのか?

 たとえ頼まれたってもうあそこで生活はしないけどね。

 とりあえず尋ねてみる事にしよう。

 しかしどう会えばいいものか。

 きっと今俺の歩く姿を見ればとぼとぼという擬音が恐ろしく似合う事だろう。

 まあそんなこんなで神殿前まで来ました。

 ああ、もちろん着替えてますよ? ちゃんと男の子ですよ?


「おい大変だ! 問題児が帰ってきたぞ!」

「問題児?」

「大神官を呼び出せ! 神殿が崩壊する前に!!」

「崩壊?」

「嗚呼、今度は何が壊れるんだ。水の次は火か? 食べ物か!?」

「一体俺が何をした!」


 切れてもいいよね、切れてもいいはず。

 あれか、たぶんポンプが凍ってるのに無理して動かして壊したんだな。

 もう帰ろう、きっと場違いだったんだ。

 あれだね、オーバーテクノロジーを導入しすぎたんだね、便利だけど。

 きっとあれに馴れてるくせに保全保守の概念が理解できなかったんだが、便利だけど。

 管理できないやつは使う権利ないよな、便利だけど。

 しかも壊したのが俺になってる件。

 あれか、これがかの有名な「いじめカッコ悪い」ってやつか。


「帰ろう、帰って寝よう」

「ワーワーワー! ちょっと待って、待って下さい!」


 腰をがっしりつかまれた。

 誰かと思えば猫神官さんではないか。

 いや、子供で小っちゃい俺の腰に抱き着くとかほぼ寝そべらないといけないわけで飛び込んできたわけですか。

 そして会話が途切れる。

 正直気まずい。


「離してもらえませんかね?」

「あ、ごめんなさい」

「じゃあさよなら」

「だから待って下さい!」


 まだ何か用事があるんだろうか?

 いや、引き止められてるから有るのはわかってるんだけどね、この状況っつかこんな状態で頼みごととか正気を疑うよ?


「何なのさ」

「……その、すみませんでした」

「何の事?」

「帰ってきて、もらえませんか?」

「嫌だよ、四六時中身の危険を感じるところで生活できるわけないだろ。しかもあの手配書は何さ? 俺いつから犯罪者になったの?」

「申し訳ありません、連絡の過程で行き違いがありまして、いつの間にか捜索願が手配書に変わっていたのです」


 間違いでしたすみませんでなんでも済ませられると思わないでほしい。

 手配書って全世界の神殿で発行されるからもう自分どこ行っても犯罪者扱いですよ?

 たとえそれが間違いだったとしても最早手遅れ、世間一般に「一千万円の元賞金首」として認識されるわけですよ。

 一千万とかそれこそ邪神の復活とか世界の滅亡とか神殿への連続爆破テロ行為とかしないとかからないレベルの賞金ですよ?

 可能な限り考えないようにしてたけどさ、いくら何でも酷いんじゃなかろうか。


「何を言われようと戻る気はないからね、もちろんわかってるよね?」

「本当に申し訳ありませんでした。どうすれば許していただけるでしょうか」

「状況はわからんけどそうせざるを得なかったんだろうから、許す許さないで言えばすでに許してるよ。ただもう戻る気はないだけだよ」

「どうしても、だめですか」


 あれだね、(こと)ある(ごと)に自白剤モドキ嗅がせたり家に突入されちゃ気の休まる時がないよ。

 流石に怖くて住み続けるとか無理でしょ。


「もう一度言いますがもう戻る気は欠片もありません。怖くてもう街中じゃすめないですよ。取り下げたって元賞金首なのは変わりませんしね」

「……その、全ての神殿で間違いだったむねを掲示してもらったのですが、ダメですか」

「余計勘ぐる人が出るだろうね。もしかしたら神殿の弱みを握ったんじゃないかって。そう言ういわれなき理由で狙われるわけですよ」

「本当に申し訳ありません」


 いや、土下座されても困るだけなんですが、なんでわからないんだろうね。

 そもそも技術力で言えばこの世界の誰よりも広い知識があるわけで、それが全国的にばれれば狙われるのはどうしようと必然なわけですよ。

 今回の事でいろいろ調べられるだろうから勘のいい奴とかは察してしまうわけなのですよ? わかれよ馬鹿共が。

 なんかイライラしてきたな、本当に帰ってしまおうか。

 あ、大神官が走ってきた。

 相変わらず連絡が遅いなぁ、連絡経路どうなってるんだろうか?


「戻ってきて、くれますね?」

「嫌です」


 いきなりそれか。


「戻ってきて、くれますよね?」

「嫌です」


 あれか、ループとかインフィニティなのか。


「住む所はどうするのですか?」

「すでに建てました」


 トップだから軽々しく謝罪できないのはわかるけど、そんな泣きそうな顔されながら言われても困るんだけどな。


「生活は、どうするのですか?」

「ダンジョン潜ってればどうにでもなります」

「一人暮らしをすると税金も払わなければいけませんよ?」

「貯金があるので人頭税程度余裕です」


 ちなみに税金はその人の職種によって変わる。

 冒険者は人頭税、年齢に応じた税金を頭数に応じて払わなければならない。

 これで大嫌いな中央政府にも顔を出さなければいけなくなったが、まあその程度は白霧使えば問題ない。

 中央政府って処理がとにかく遅いんだよな。

 もしかしたら連絡は行ってても手配書の取り下げまだなんじゃなかろうか。


「どこに、住むのですか?」

「答えると思います? 本気で?」

「病気なわけではなかったんですね」

「今までだって引き籠って研究した事の一度や二度あったでしょう」

「そうですか、出ていくんですね」

「ええ、出ていきます。今までお世話になりました」

「たまには、遊びに来て下さいね」

「転職時にはお世話になると思います、ではさようなら」


 いや猫神官さん、口パクパクさせながら俺と大神官の顔を交互に見ても可愛くないですよ?

 むしろ間抜けです。

 もしかして大神官が引き止めるとでも思ったんだろうか?

 神殿の弱点になりえる自分を?

 ありえないのをなぜ気づかないんでしょうか。

 一度教育しなおすべきだと思います。


 そうして俺は独り立ちしたのだった。

神殿の攻撃。

主人公は人付き合いに馴れていない、主人公の心に120のダメージ、効果は抜群だ。

主人公は勘違いをしている。

ミリィ夫人の攻撃。

主人公は優しさに馴れていない、主人公の心に80のダメージ、効果は抜群だ。

ミリィさんの高感度が20上がった。


主人公は刀好き(知識のみ)

刀は日本人の魂である。


今住んでいる地方は水脈が豊富で結構どこを掘っても水が出る。

代わりに雨が降ると鉄砲水が多く川が簡単に氾濫する。

また地層に砂の層が多い事も特徴と言えば特徴。


五話終了時点での主人公ステータス。

スキルでない自力での物作りは生産スキルには含まれません。

なお、祝福は無条件に詳細閲覧可能。


名称:フィフィル・ファウ・フォリア 職名:フィー

職業:職業訓練生

転職可能職業:商人[15]、調合師[15]、鍛冶師[15]、術式使い[99]

Lv. 45/99 EXP.22.01% NEXT:85367

称号一覧

[@*者]$級#’:システム権限により詳細閲覧不可

[限界突破体現者]特級称号:システム権限により詳細閲覧不可

[先を歩む者]特級称号:システム権限により詳細閲覧不可

>>特殊技能一覧

>魔法:ステータス閲覧

・Lv.1 名前、職業、称号、本スキル詳細と技能一覧を閲覧可能

・Lv.2 状態、称号元、技能詳細、転職可能職業を閲覧可能

・Lv.3 レベル、現在経験値量、必要経験値量を閲覧可能

・Next-count 42350

>魔法:生命力回復補助

・Lv20 活力を回復可能、ただしカロリーを大幅に消費する。

 効果一、一定時間生命力の上昇により傷の治りが早くなる。

 効果二、一定時間気力などで動けなくなっても動けるようになる。

>魔法:肉体活性化

・Lv40 新陳代謝を向上させるがカロリーを大幅に消費する。

 効果一、身体能力の上昇、傷を治す速度の上昇。

 効果二、免疫力向上にともなう解毒速度の上昇。

>魔法:終わりの裁き

・Lv1 =身及び|手の罪・重+によってダメ_ジが変わる対’魔法。

 効果一、自身より相手の罪が重ければ二倍のダメージを与える。

 効果二、自身が相手の罪より重ければ自身もダメージを受ける。

 効果三、自身と相手の罪の重さが同じであれば三倍のダメージを与える。

>>祝福一覧

>長命種の宿命

>第一次限界突破者

>自分殺しの宿命

>呪い:シャドウハンド

・レベルアップ時ステータス追加上昇

・転職制限[基本職の転職不可]

・転職干渉[特殊職業解放]

・特殊干渉[レアドロップ率上昇]

・特殊干渉[固有モンスター遭遇率上昇]

・特殊干渉[固有スキル獲得]

・特殊干渉[肉体成長停止:十年]

・特殊干渉[再度ドッペルゲンガーを殺した時反射ダメージ二倍または二分の一]

・特殊干渉[次の転職までステータスの大部分を見れなくなる]

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