第二話 生活に慣れた生活
今回から結構な数の名前付きキャラクターが参戦。
ダイブ物語らしくなってきたがなんというか、中途半端な一人称が凄くやっかい。
変な癖なので治したいがいかんせん無意識なので難しい。
誰か助けてたもれ。
なお、今回のタイトルが変なのはワザとである。
そろそろマジでダンジョン探索描写を入れたくなってきている。
ただ生活も書いていて楽しい、これは問題だ。
幼子は夜明けに笑う。
そんな伝説ができようとしていた。
「な、何だってー!?」
ただし棒読みである。
事の始まりはステータス閲覧魔法、まあコール系と呼ばれる魔法だがそれがレベルアップした事に端を発している。
もう何十何百とダンジョンを走破している。
そして基本的に時間のない俺は敵を瞬殺しなければ悲しいほどに時間が足りなかった。
結果、どこぞの武将の如く国士無双してやんよと言わんばかりにここ十年で瞬殺を極めたわけだが、それはどこぞのMMORPG(多人数参加型大規模ロールプレイングゲーム)の如くドバドバダバダバ湯水のごとく経験値を得られるという事であるわけだ。
実際には少し違うのだがまあそれは別の話である。
つまりは普通の人の百倍必要であっても普通のゲームに換算すればうん十倍、場合によっては百倍強の経験値を得るという事である。
そんなこんなで十年、まあモンスターのコアを狙った瞬殺を極めてからなので実質五年ほどだが毎日毎日レベルアップしてるような感じになってもおかしくない。
というかある程度そうなってたし、最初の頃は一日十とか二十とか上がる事があったし。
結論。
問題の部分までステータスを表示すればこういう事である。
名称:フィフィル・ファウ・フォリア 職名:フィー
職業:初心者
転職可能職業:職業訓練生
Lv.99/99 EXP.99.98% NEXT:13452
限界値寸前でした。
あと一回ダンジョンに潜ればカンストするね。
いやね、正直な話転職ってどうやるんだろー? とか疑問に思ってたんですよ。
でも、忙しいし後でいいよねーとか思っちゃったわけですよ。
つまり、[エターナルの人]=[自主的永遠の初心者モード]というわけだったのだ。
つまりニート。
そりゃ永遠って呼ばれるわ、マジで。
もちろん就職先がある方がおかしい。
でもでも、もしかしたらカンストしないと次の職業とか無理なのでは? という最後のあがきで公共図書館に調べに来たわけだが。
「ふむふむ」
初心者指南書なるものによると
・初心者はレベル十で職業訓練生に、職業訓練生はレベル十五までに各専門職につく事ができる。
・各専門職になって半人前。冒険者としてそれ以前の状態では、身体に障害を抱えるものと同等の存在として扱われる。
・初心者と職業訓練生はお金を払ってもさっさと抜け出すものでそれ専用の学校が存在する。
・なぜなら下位職と呼ばれるそれらは専門職ごとにある特殊な技能、魔法を一切覚えられないからである。
・さらに、下位職は転職するとレベルが一に戻るため受けていたレベルの恩恵を半分以上を失う。
・どの職業もレベル限界値に達してから転職すると祝福があるが、基本的に実践するのは歴戦の戦士ぐらいである。
・レベル限界値は職業ごとに違う。
・転職時、下位は全て、上位は半分のレベルを失う。ただし、下がったレベルに対し約半分の恩恵を転職ボーナスとして受ける事ができる。
・大抵上位職が上限にいたるまでに必要な年月は戦い続けて八年から十年と言われている。己の進路を決める参考にせよ。
まとめるとこんな感じであった。
正直、どっかの六法全書だか広辞苑みたいな厚さの子供向け教科書みたいな本を読むとか拷問だったが子供向けだけあって無駄に分かりやすかった。
あえて言おう。
普通の人が普通に狩りして八年から十年、酷いともっとかかるわけで、特殊な事が何もできない半人前以下の状態で上限到達は狂気の沙汰であるという事だ。
つまり、やっちまいました。
冒険者でも絶対やらない奇行に走っていたわけで、そりゃアンだけ素材回収しといて初心者とか狂気の沙汰で有名になるわほんと。
もうね、門番さんとか各公共施設の受付の人とかに顔パスなのも納得だわ。
問い合わせるまでもなく本人ですという完璧な証明がされてる。
何それ勇者とかより有名なんじゃね? ある意味。
まあ運が上がると(言われていると)はいえ馬鹿でかいウサ耳を常時つけてるのは兎人か俺くらいでしかも俺は明らかにつけ耳、かつ十年以上も子供やってる種族なんて長命種ぐらい。
しかも一般のために技術解放? おたく馬鹿なんじゃないのと言われても反論できません。
いやぁ、何度か暗殺未遂されたから何かと思ったら製造ギルドのガラス部門だったのね。
まあ効率的な材料の採取法とか俺が作った窓枠の製造法だとかお爺さんが気を利かせて色々ゆずったんだろう、ギルドが製造しているのを見るに。
そのせいでガラスの値段が暴落したがな! 陶器部門とは作るものによる住み分けでもしたんだろうガラス窓ばっか作ってるのを見るに。
とりあえず、さすがお爺ちゃんと言わざるをえない。
ナイスだお爺ちゃん!
最高だぜお爺ちゃん!
ビューティフル……、はちょっと違うか。
まあそんな話は置いといて、この初心者指南書は親切で色々な事が書いてある。
たとえば初心者がやらかす失敗とか暗黙の了解とか色々だ。
本によると職人は食ってくために基本秘伝を外に漏らさないらしい。
まずここで俺アウト、一度目の暗殺はこれか?
本によると長命種は人里離れたところで暮らしており里から出てこず、非友好的で他種族には恐ろしく冷たい。
次にここでも俺アウト、二度目はこれだろうか? いや導入された人員を見るに三度目だろうきっと。
本によると神殿は神聖で不可侵、私的に使ってはならない。
さらにここでも俺アウト、実はこれが三度目とか? それだと推測が合わないな。
本によると神殿での争い事はご法度、したら冒険者による冒険者のための集団リンチ確実。
セーフなようでアウト、口うるさい神官さんと結構喧嘩した覚えがあるわ。
結論。
あれ、俺やばくない?
まあ後々調べてわかった結論だけ言うと孤児院も兼業してるので、俺はある意味では明らかに子供なので問題ないらしい。
普通孤児は知り合い程度でも知っていれば引き取るらしいので基本発生しないが、子持ちの旅人が死んだりするとたまに出るらしい。
そもそも子持ちは旅なんてしない、子供は世界の宝ですが暗黙の了解。
そんなわけで孤児は滅多に出ないので気づかなかったのだ。
つまり俺が作ったのは仮眠室兼孤児院モドキとなっていたわけで、道理で一般の方々も一切文句を言ってこないわけだ。
孤児が孤児院作るってどうなのよってのは言ってはいけない、気にしたら負けだ。
まあ、今度から技術公開する時は誰かに相談しよう、お爺ちゃんとかお爺ちゃんとかお爺ちゃんに。
井戸とポンプあるし、水道技術は便利なので是非普及してほしい物だ、主に公共施設に。
ああ、そういえば冒険者なのに税金払ってないなー催促来ないし、と思ってたら実は孤児と引き取り手含め免除らしい。
孤児を預かる家の家族も免除らしいのでみんな進んで引き取るわけだ、結構高いし。
子供のいる家にそれなりの支援が出てるし子供に対しての免除が多い。
それで税金高いんじゃねえの?
まあ閑話休題。
問題なのは何か?
いやね、今から転職するとなんか負けた気がするんだよね、後ゼロコンマゼロ二パーらしいし。
とりあえずギルドカードナンバーの下三桁が六百六十六なのもなんか嫌なのでさっさとレベル上げて転職してしまおうと思う。
ちなみにギルドカードナンバーはランダムで振られ、かつ職業別に管理されているらしい。
どこぞのデータベースみたいなシステムがあるみたいであるが、そういうシステム的な概念は無いみたいでどこかの天才が構築したのをそのまま使っているらしい。
夢が広がる憧れる? いいえ楽な暮らしがしたいだけです。
そしてそろそろまともな食生活がしたいなぁ。
ほとんどモンスターの肉と保存食ってどんだけーという話である。
ああそうそう、プニョ玉だが基本的に食材扱いだったのに笑った。
どうやら元の世界でいうゼラチンのような働きをするらしい。
しかも無駄に高濃度で一つのプニョ玉で一万人分近くゼリーが作れるとか。
……正直建材だと思ってました。
いやね? 熱を加えると柔らくなって最終的に液状になるんだけど、基本的に水弾くし固まると硬くなってとてつもない接着力があるので水道管つないだりするのに使ってました。
しかもそれ以降は熱を加えても変化しないし、鉄が溶けるレベルの熱じゃないと燃えないので絶対に建材だと思ってたんだ。
そして調べてみると実際に建材としても使われてたのに笑った。
ただし、プニョ玉に一切混ぜ物をしない場合の効果らしく建材として使う場合数をそろえなければならず非常に高価になるため貴族や王族しか使わないんだとか。
食材として使う場合はすり潰して粉っぽくしてから小指の先ほど少量を大なべにいっぱいまで入れた水に混ぜてから使うんだとか。
正直すり潰すのがメンドクサイので加工費払って作ってもらいました、十個分。
びっくりしたのが防腐剤の役割もするらしく作ったゼリーは大抵半年から一年持つらしい。
ただし味はさすがに劣化するので保証しないと商店のおやっさんは笑ってたが。
供給を増やしたせいかプニョ玉の研究が進んだらしく、コラーゲン風呂みたいな使い方をする馬鹿貴族が増えたんでもうけさせてもらってるとかも言ってたな。
それならコラーゲンパックとかもいいんじゃなかろうか? というか本当にプニョ玉って高濃度コラーゲンもとい高濃度ゼラチンなの?
正直予想外すぎる。
後植物系モンスターから片栗粉が作れるらしい。
モンスター=食材の理論は不思議な事に常識みたいだ。
ただしモンスターの死骸が残るのはダンジョンの外なので、一階層でそのモンスターが出現するダンジョンの近くでしか取れないんだとか。
香辛料系は素材として残るらしいのでダンジョン内でもとれるらしい。
まあ閑話休題もここら辺でいいだろう。
ダンジョンへ潜ったが残り必要経験値が後二桁なところで攻略完了してしまった。
正直忘れていたので悔しい。
いやね? 俺だって半分ぐらいまでは覚えてたんだよ? 今日は無駄にレア素材が出るのがいけないんだ、行く先々でレア素材が山のように出るのが悪い。
なにせ十年乱獲して初めて見るアイテムもあったし。
地上で遭遇してもレア素材って手に入らないんだよね、同じ部位をとっても鑑定かけると普通の素材だし。
まあ簡単に一覧にすると次のようなものが出たわけだ。
魔獣のコア:各魔獣から「魔獣名コア」形式で出る。武器防具作成時に混ぜて作ると特殊な効果がつくので非常に高価、下手したら家が買えるレベル。
魔獣の肉:各動物系魔獣からとれる「魔獣名の肉」形式で出る。結構おいしく非常に痛みにくいため長期保存が可能なので旅のお供として重宝されている。
兎の耳:アクセサリにして装備すると運が上がる。今使っているのがボロくなってきたので正直嬉しい。これも無駄に高いが、出現率がそれなりでかつデカいのであまり好まれない。
兎の尻尾:兎の耳と同様、しかし小さくまとまっているので人気がある。こっちは初めてお目にかかるほど珍しい上に目玉が飛び出るほど高価、城が買える。
設置型トラップ各種:素材ではないがダンジョン内のトラップを解除、回収したもの。正直作る技術がないので非常に便利に使っている。
緋色の骨:陶器の素材としてよく使われるもので、真っ白い下地に緋色の模様が入る非常にきれいな陶器になるが、ドロップ率が悪いためにあまり出回らない。
黄金の骨:金色の骨で実際には黄銅。高級な食器などの材料として重宝されている。ただし、あくまで冠婚葬祭や祭り等で使われるものがほとんどで嫁入り道具として有名。
マンドラゴラの根:魔法薬の材料になる魔力を多量に含む植物。ただし毒性が強く熱処理をしないまま食べると死ぬ。
ドリアードの葉:魔法薬の材料になる魔力を多量に含む植物。ただし幻覚作用が強く熱処理をしないと大変な事になる。
紫狼の爪:ボスドロップ。毒を持つ紫色の巨大な爪。加工するとトリカブトと同じ強心剤になる。見た目が綺麗なためかお守りとしても人気が高い。
紫狼の牙:ボスドロップ。毒を持つ紫色の牙。加工すると麻酔薬に化けるので重宝されている。男性用首飾りになる事もある。
クリア特典:今回は一角獣の角。脆いが非常に高価な薬の材料、しかし基本的に小さいので一つではそれほど価値もない。一つで大体一回分の量。
祝福された鉱物:「祝福された鉱物名」形式で出る原石ではなく製錬された塊。品質が非常に高く水道管の材料として活躍している。
兎の耳と設置型トラップ各種、黄金の骨、祝福された鉱物を除いて初めて見る素材だ。
もちろん普通のドロップ品はいつものようにかなりの数拾ったが全部捨てても問題ないレベルのドロップって一体なんなんだ?
正直今まで稼いできた総額より稼いでしまった気がする。
あれ、もしかして俺今日死ぬの?
いやいやいやいや、普通にダンジョン脱出してるからそれはないな。
ちなみにダンジョンだが町の中央にあって常に監視されているのでモンスターがあふれたり出たところで襲われるなどの犯罪が発生したりは滅多にない。
まあ、大抵の冒険者は道具袋に入れ見えないようにして出るので高価なものを持っているかどうかも分からない相手を襲うほどの価値はあまりないせいでもあるが。
なによりこのダンジョン、生活用品が良く出るが基本的に低レベル系で固められているため正直稼ぎも少なくあまり人気がない。
まあ、噂によるとレアドロップの確率って波があって数十年に一度とてつもなく高確率で落ちるとか聞いた事がある。
きっと運よくそれにあたったんだろう。
ありがとう兎の耳もといつけ耳、きっと君のおかげだ。
しかし全部俺自身で使う素材ってどういう事ですか、正直全然稼いだ気がしません。
「おう坊主、今日も研究かい?」
「あ、ミノのおっちゃん。さすがに毎日研究してるわけじゃないよ。今日は首飾り用のヒモ二本と薬瓶四つ頂戴」
「なんだ、また薬の材料手に入れたのか? さすがは神殿の薬庫だな」
「いやそれ言ってるのおっちゃんだけだから」
ちなみに今のは商店のおっちゃんことミノタウロス系半獣で種族的には体力自慢の牛獣人である。
この無駄に巨大な商店を経営する敏腕経営者である。
基本的に素材はこの商店に流すので、この商店に並ぶ素材の七割が俺が供給する物とか笑いそうになる。
ちなみに、自力で疑似ウォーターベッドを作った猛者でもある。
さらに自力で室内に井戸も掘ってしまった。
俺が供給したものと言ったら煉瓦の作り方と手漕ぎポンプぐらいである。
夏は冷たい水を売って稼いだらしい。
冷却魔法で作る氷を使ったカキ氷を教えたら毎日くれたっけ。
かけるものが練乳で、供給元が胸の大きな嫁さんとかリア充爆発すればいいのに。
まあ、どう見ても嫁さん含めミノなのでそこまで羨ましくないが。
まあそんな話はどうでもいいだろう。
このおっちゃんも物作り大好きで俺の真似をして大抵のものを作ってしまう。
現在商品が並んでいる棚やら机やらは全部おっちゃんの手作りで、改装も増築も全部自分でやっているらしい。
しかも綺麗な嫁さんがいる勝ち組である。
未だ子供はいないがまだまだ若いので問題ないらしい。
「いやいやご謙遜を、神殿の薬師と言えば貴方様ですよ?」
「いや誰だよテメエ。というかそんな称号俺持ってないから」
「ワハハ、まあでもな、この町で一番薬もってるのはお前らしいぞ? 腐らないとはいえ一体どれだけため込んでんだよ」
「そりゃ何があるかわからないから作り置きぐらいするよ。正直そこらのヤブ医者は信用できないし、誰かから聞いたから薬なんて理論俺は認めない」
正直この世界の薬を使う医者は半分ぐらいが昔ながらの薬草系で全体として七割がヤブというか駆け出しである。
医学の門は非常に狭いのである。
俺だって薬学全集なる調合書がなければまともに薬作れないのに何も知らない駆け出しに同じことができるなんて思ってない。
なぜ図書館にある薬学全集を読んでないやつが医者なんてやってるんだと本気で思ったぐらいだ。
ちなみにこの薬学全集、昔いた狂人が数々の人体実験の末書き出した確かな実績と後ろ暗い過去を持つ禁書の一種で、しかしなぜか図書館に置いてあるというとんでも本だ。
ただし俺もある種ヤブ医者である。
正しい薬の知識は持っていても診察の技術も経験もないので実際にやると失敗するに違いない。
「さすがに子供に診察してもらおうなんて変な奴はいないと思うが気を付けろよ? 命に係わる以上かなり変な言いがかりつけられるからな」
「もちろんそこは気を付けるさ。というかため込んだ薬は自分用であって誰かに使うためのものじゃないよ」
「ま、困ったら分けてもらいに行くからその時は頼むわな。ああ全部で十五エクな」
「ういよ。またなんかあったらお願いね」
「おうよ! 大切な業者様だからな。今後もしっかり納品頼むぜ」
「……あのねぇ。まあ業者なんて言葉教えたの俺だけどさ。ああそうだ、これちょっと粉にしてもらっていい?」
渡したのは紫狼の牙で、麻酔薬を作るための材料だ。
「おうよ。ゴーリゴリっと。にしてもこの鉄のすり鉢丈夫だな。どのすり鉢使っても壊れちまうから苦労してたんだ。粉は薬瓶の一つに入れればいいな?」
「そうしてくれると助かる。まあ助かってるならよかったよ。正直作ったはいいけどめんどくさくて使ってなかったんだよね。じゃあまた今度よらせてもらうよ」
「ああまたな」
「またねー」
とりあえず商品を受け取り帰るのだった。
~薬師フィフィルの日常~
さて今日の薬はえーと、麻酔薬と魔法約二種類か。
これができたら五十種類超えるな、結構たまったな。
材料はダンジョンでとれる素材の数々である。
まず麻酔薬だが、これは紫狼の牙を粉にして高濃度アルコールに付け込むと麻酔薬が出来上がる。
すでに粉になっているのでドロップ品の高濃度アルコールに付け込む。
比率は粉一に対しアルコール一万である。
牙一つで大樽一個分の麻酔薬が出来る。
後どういうわけか粉を入れて一週間ほどでアルコールが一定温度まで蒸発しなくなるが、そこらへんはファンタジーと割り切っている。
採算性を無視すれば液体燃料としても使えるが、本格的にもったいない使い方なので命がかかわらない限り普通の人はそんなことしない。
ちなみにこの高濃度アルコール、お酒としては不味いらしい。
味がしないとかなんとか。
俺はお酒飲まないのでわからないが、味がないなら付け込み系の果実酒を作ったら美味しいんじゃなかろうか?
まあそれはそうと、付け込んだものを一ヶ月ほど熟成? させると従来品より強力な麻酔薬になる。
基本的には霧吹きで患部に吹き付けて使うらしい。
従来品は塗って使うのだが、効果が出るまでにしばらくかかる。
効果がかなり強いので直接かけるのは絶対してはいけないらしい。
かつ、速効性なので分量を間違えると危険だと言われている。
なおこれを水で百倍に薄め、薬草の粉を一束分とプニョ玉をほんの少量入れて作られるのは応急薬と呼ばれる塗り薬で、戦場で良く使われるらしい。
兵士や冒険者の必須アイテムとか言われていて、まあ簡単に言うと痛み止め兼傷薬である。
本当に速効性なので致命傷を負ってしまった仲間に原液を飲ませ、最後の時間まで痛みを消し去ってやるのにも使うらしい。
飲むタイプの痛みどめにするには水で千倍で薄めるか、ぶっちゃけ危険なためほかの薬を使う。
さて次の薬だ。
えーと、紫狼の爪は穴開けて紐通して首飾りにするから魔法薬の類か。
まずマンドラゴラの根は一度どろどろになるまで煮込んで成分を抽出するがこの建物では台所にあたる部分がないので外でやるしかない。
そろそろ寒くなってきたのでちょうど良いっちゃちょうど良いんだが、まあこの前みたいに近所の女の子雇うか、安いしお菓子やってれば文句出ないし。
というわけで三軒隣の犬っ娘を訪ねる。
ちょうど外にその子の母親がいたので聞いてみる事にしよう。
「こんにちは、リアさんいますか?」
「おや、神殿の秘蔵っ子じゃないかい。また調合かい?」
「はい、ちょっと煮込まなければいけないものが出まして、ちょっとお手伝いをお願いしようかと」
「はいはい構わないよ。ただあれはちょっとお給金出しすぎじゃないかい? 子供のお小遣いを超えてると思うんだけどね」
「いえ、結構大変な作業ですし大人ですとこの三倍は出さないといけませんし妥当な額ですよ。問題であればお給料はもってきますので分割して渡してあげて下さい」
「まあ確かにそれがいいかね、じゃあ次からそうしておくれ。ちょっとリアー? 神殿の兎さんがきてるよー!」
……兎さん?
まあ確かにいつもウサ耳つけてるけどさ、運が悪いから。
後兎人は基本森から出てこないのでその言い方はどうかと思うんですが、言いませんが。
「はいはーい。ああフィーちゃん、今日もお料理作るの?」
「いやお料理じゃなくてお薬だからね?」
「だって人参煮込んでたじゃない」
「あれは蓬莱人参って言って立派な滋養強壮剤の材料だよ?」
「でも美味しかったよ?」
「そりゃ甘いからね。飲んだの遅かったし眠れなかったんじゃない?」
「あー、確かに遅くまで寝つけなかったかなー?」
「とりあえず今日は二つあるんでお給料は一回半分出すよ」
「やった!」
リアのお母さんの目が光った気がした。
リアはまだ直接もらえない事を知らない。
「では手伝ってくれるようなので今回のお給料です」
「ありがとうね、じゃんじゃん使ってくれていいからね?」
「……え? あれ?」
リアってこういう突発的な事態に対処できないんだよね、なぜか。
まあ貰えないわけじゃないからいいだろう。
「ほら、行くよ?」
「う? あ、うん」
とりあえず孤児院の自宅に帰還。
鍛冶のついでに作ったデコボコ鍋を二つ出す。
ちなみに外にではあるが簡易的な竈が三つある。
ただし出来損ないで俺以外は誰も使わない。
なにせ小さい。
どう見ても子供用である。
ちなみに燃料は植物系ドロップ品で油をいっぱいに吸っている薪と燃え出しようのスポンジっぽい何かである。
ちなみにこのスポンジっぽい何か、物凄いよく燃える。
火力も不思議なほど強いので薪や炭の着火剤として普及している。
さて、とりあえずマンドラゴラの根を刻んで水を入れ、もう片方にはドリアードの葉をすり潰して水を入れる。
「じゃあ火をつけて色が変わるたびにこれを入れてね」
「うんわかった」
「俺は薬棚の整理やってるから何かあったら呼んでね」
「りょうかーい」
ちなみに今渡した瓶は液化魔力と呼ばれる魔法薬の一種でドロップ品である。
単体ではほとんど使い道がないが魔法薬の調合には必ずと言っていいほど使用する液体だ。
そして俺は小屋の中に戻ったわけだが薬棚を見てやはりそろそろ分類分けするべきだと思いなおす。
正直適当に突っ込んであるだけなので何がどこにあるかあまりわかっていない。
ただし、何があるかはリストにしてあるので問題ない。
一時期瓶に薬の名前を彫り込もうと躍起になっていたのだが正直無理でした。
まあ金属のふたに文字を刻み込む方はどうにかなったので問題ないが。
そしてびっくりしたのがこの方法がある意味画期的で、誰もこの方法をとっていなかったのが笑える話。
やり方としては文字の形をした出っ張りのある金属棒をハンマーでたたきつけて文字をつけるのである。
今までは棚ごとに分類しておいていたらしく、空っぽなら作らなきゃなとなんともアナログで実用的な使い方をしていたんだとか。
それってスペース無駄じゃね? という言葉で目から鱗だったとか。
正直整理がメンドクサイという話をちらほら聞くが薬を間違えるという話は聞かなくなった。
ヤブ医者はこれすらしないので未だに薬を間違えると聞いた事があるが、この町では表記のない薬瓶の使用を禁止しているのでそんな事は発生しない。
さて、未だに全容を理解できない薬棚だが、意外と日常で使う薬が多い。
分類としては次のようなものだ。
・傷薬(塗り薬)強さに応じて五種類
・痛み止め(原液ただし大樽のため薬棚外にて保管)
・痛み止め(塗り薬)強さに応じて十種
・痛み止め(飲み薬)強さに応じて十種
・風邪薬(滋養強壮剤)強さに応じて十種類
・胃腸薬(漢方薬っぽい何か)整腸剤と保護剤と抑制剤の三種
・興奮剤(魔法薬)疑似惚れ薬、疑似排卵剤、精力剤強さに応じて三種
・魔力回復薬(魔法薬)強さに応じて五種
・体力回復薬(魔法薬)強さに応じて五種
ちなみにほとんどは濃度の違いで薬の強さをわけている。
何せ必要な強さから離れすぎると毒になったり効かなかったりするのだ。
ただ胃腸薬系は漢方薬系統なので飲みすぎない限り大丈夫である。
興奮剤は俺自身で使う予定はないが、おやっさん当たりに差し入れようと思って作ったがいらないと言われてしまったために保管してあるだけだ。
興奮剤を二種類飲ませて自分も興奮剤飲めば子供ぐらいできると思うんだけどなぁ。
まあ二種類がどれでどれを自身が飲めばいいかは察して下さい。
まあ奥さんもおやっさんに好きな事やらせてるみたいだし、もう少し自由でいたいんだろう。
ちなみに今作っている三種類は一番強い薬で、牙が痛み止め原液の上位薬剤で効果的には今ある痛み止めを濃縮したようなものだ。
ただし今ある痛み止めに比べ効果時間が長く副作用も小さい高級薬である。
マンドラゴラは興奮剤の魔法薬版で混乱剤とか呼ばれることもあるほど強力な惚れ薬の一種だ。
ただし従来品のような飲ませるタイプではなく体に塗るタイプで、例えるならフェロモンのような効果があるらしい。
使うつもりはない、手に入ったので何となく作ってみただけだ。
ドリアードが滋養強壮剤の魔法薬版である。
非常に強力で死にかけてる相手とか衰弱してる場合とかにしか使えないだろうと思うが非常に強力であることに変わりはない。
少量で通常の滋養強壮剤と同じ効果があるので旅のお供として有名な薬でもある。
まあ今ある薬を棚ごと、強さごとに並べたがやはり結構な量ができている。
一回に使う量を考えれば軽く一年は医者をできそうな量だな。
今更だがなんでこんなに作ったんだろうか?
まあきっと趣味だ。
意味なんてない。
え? 強心剤は作らないのかって?
正直心臓病なんて見てわかる物じゃないから作っても無駄だと思う。
普通毒として以外は使わない薬だしね。
さて、そろそろ魔法薬の方もできてるだろう、薬瓶もって外に出た。
「あ、お兄ちゃん。ちょうど今呼ぼうと思ってたの」
「ん? どうした?」
「お薬が真っ白になっちゃったの」
ちなみに今作っている薬は両方とも最初は緑、煮ていると黄色になり液化魔力を加えると緑に戻り、完成すると白くなる。
なので問題なく完成したようだ。
分量? 水と材料は最初に用意した量でいいし液化魔力は基本的にほっといても全部蒸発するので何の問題もない。
「よし、完成したみたいだね。今日はありがとうね、はいべっこう飴」
「わーい!」
最初は金平糖を作ったのだが、予想以上にめんどくさく難しかったので最初の一回以外は全部べっこう飴だ。
ちなみに砂糖はドロップ品なので高級品である。
まあ俺は乱獲する関係上、氷砂糖のような砂糖の結晶が大樽一杯分あるわけで特に気にせず使っているが、実は結構リッチな生活しているのかもしれない。
とりあえず出来上がった魔法薬を薬瓶に詰めてふたには仮のラベルをはっておく。
大抵の場合、蓋には後から刻印するのだ。
まあそんなこんなで今日の調合も終わり一息ついた。
気づけば真っ赤な夕日が綺麗な時間帯になっていた。
紫色になるまでには残りの作業を終わらせてしまおう。
ところで兎シリーズだが、大抵は金属で固定し輪を作りそこに紐を通して首からかける首飾り方式が主流である。
まあその場合耳はデカいので不評なのもわからないでもない。
ちなみに兎シリーズには耳、尻尾、腕、足、皮があるが皮だけは別物扱いであるらしい。
というのも巨大兎の一枚毛皮は子供用の対呪魔具になるのでアクセサリーにはしないからだとか。
まあ、ここらには元となる巨大兎がいないので手に入らないそうだ。
まあそんなこんな兎の尻尾のアクセサリを作る。
そういえば俺のように耳をつけ耳にした例は見た事がないが。
後で聞いた話だが、つけ耳というのは一般的に義手や義足等と一緒で戦闘などで欠損した獣耳の代用品という扱いらしい。
つまり、一般的に見た俺は兎人になりたかった長命種に見えるのだろう。
どちらにしても里から出てこない一族なので変わり物には違いないが。
とりあえず尻尾の方は従来の方式でいいだろう。
ちなみにだが、兎シリーズは全てが明るい黄色をしている。
兎人は耳から尻尾、体毛に至るまで真っ白なで間違えられる事は絶対ない事をここに明記しておく。
そんなわけで詐欺とかもできない、もはや常識である。
爪の方は安全祈願のお守りになるらしいがよくしらない。
どうやら液体魔力に付け込むことによって魔具にするらしい。
対毒の魔具になるらしいので俺も一応付け込んでおくことにする。
ここで重要なのは、牙だけでなく紐も同時に付け込まなければいけないらしい。
そうする事によって首から下げるというアクションで対象を認識させているため紐も魔具の一部という扱いになるらしい。
魔具としては結構ポピュラーな部類なので目立つこともないだろう。
まあさすがにジャラジャラとアクセサリを付けたりしたくないが、まあ場合によっては仕方ない、準備できるものは準備しておくのが自分のやり方である。
よし、外も暗くなったし今日は寝よう。
・大樽
普通のデカい樽だが、主人公の背よりもでかく主人公が丸まれば軽々三人はいるほどでかい。
・金平糖
砂糖菓子の一種で、大きな鍋に砂糖を敷き砂糖水をかけながら乾燥させころがしデコボコな球体にしたお菓子。綺麗に作るのは職人の技である。
・べっこう飴
水と砂糖で作るシンプルな飴。結構おいしいがほぼ百パーセント砂糖なので食べ過ぎると太るし体によくない。型にはめると色々な形にできる。
二話終了時点での主人公ステータス。
スキルでない自力での物作りは生産スキルには含まれません。
なお、祝福は無条件に詳細閲覧可能。
名称:フィフィル・ファウ・フォリア 職名:フィー
職業:初心者
転職可能職業:職業訓練生
Lv.99/99 EXP.99.99% NEXT:27
称号一覧
[転生者]特級称号:システム権限により詳細閲覧不可
[神殿の隠れマスコット]民間称号:冒険者ギルド関係者からの称号
[技術屋]民間称号:一般民家からの称号
[ダンジョンの主]民間称号:冒険者からの称号
[エターナルの人]民間称号:冒険者からの称号
>>特殊技能一覧
>魔法:ステータス閲覧
・Lv.1 名前、職業、称号、本スキル詳細と技能一覧を閲覧可能
・Lv.2 状態、称号元、技能詳細、転職可能職業を閲覧可能
・Lv.3 レベル、現在経験値量、必要経験値量を閲覧可能
・Next-count 42355
>魔法:生命力回復補助
・Lv18 活力を回復可能、ただしカロリーを大幅に消費する。
効果一、一定時間生命力の上昇により傷の治りが早くなる。
効果二、一定時間気力などで動けなくなっても動けるようになる。
>魔法:肉体活性化
・Lv37 新陳代謝を向上させるがカロリーを大幅に消費する。
効果一、身体能力の上昇、傷を治す速度の上昇。
効果二、免疫力向上にともなう解毒速度の上昇。
>>祝福一覧
>長命種の宿命
・成長速度干渉[低下補正]
・特殊技能干渉[成功率低下補正]
・生産スキル干渉[成功率低下補正]
・レベルアップ速度干渉[低下補正]
・レベルアップ時ステータス追加上昇
・転職制限[基本職の転職不可]