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どこかの異世界で

聖剣を入手しよう。手段は選ばずに。

作者: 浮月重月
掲載日:2026/09/22

王国の大噴水がある広場に、一本の剣が随分と昔から刺さっている。

大噴水を囲んで積み上げられた岩の一つに深々と刺さったその剣。


伝え聞くところによればこれは聖剣である、という話であり、

抜いた者には女神の祝福が与えられ、勇者となるとされていた。

すなわち聖剣は意思を持ち、認めた相手に使われるのだと。


しかしながら伝説とあって、人々が知る限り抜いた者はいない。

まあ抜かれているならここにあるはずもないのだけど。


今日もこの剣を抜かんと挑む者達が大噴水に押しかけている。

もっとも、今回挑む者達は過去のそれとはいささか違っていた。


どう違うかと言えば。

筋骨隆々、と表現するのがふさわしい、大男達が総勢十五名。

どうやら彼ら全員が力を合わせ、剣を引き抜こうという算段らしい。


なりふり構わぬその手段には呆れる見物人も多かったが、

まあ考えてみれば「一人で抜け」とは誰にも指定されてはいない。

剣の柄に太い縄を縛り付け、反対側を大男達が握りしめる。

気合十分の掛け声をかけて一斉に引っ張り出す大男達。


だが、抜けない。びくともしない。

大男達の顔色は赤く変色し、血管も浮き出て筋肉も張り詰めている。

間違いなく全力で綱を引いているにも拘らず、剣は動かない。

そのうち丈夫であろう結び付けていた綱が引き千切れてしまった。

見物人達からがっかりした声が上がる。

多少は期待していたのだろう。


次に現れたのは、まあ引き締まった体躯を持ってはいるが小柄な男。

何をするのかと思えば…剣が刺さっている岩をたがねで叩き出した。

どうやら、抜けないのなら掘り出してしまえと考えたらしい。


さすがにこの男は、気付いた見物人達から即座にやめさせられた。

無粋なだけではない、剣を取るために大噴水まで壊してどうする。

小柄な男は憲兵に連れていかれた。さもありなん。


今度は普通に力任せの男がやってきた。ただ強いようには見えない。

案の定、しばらくうんうん唸りながら剣を引っ張っていたものの、

結局諦めてこの場を去っていった。


他にも何名かやって来るものの、剣は小揺るぎもしていない。

こりゃあ今日も抜く瞬間は拝めないだろうと見物人が思った頃。


一人小柄な少女がやって来た。何か入った木桶を持っている。


正直誰もが抜けるとは微塵も考えていない。

しかし、この非力そうな少女がどうするのかは興味があった。


見物人が見守る中、彼女が剣に手を伸ばす。


木桶に入っていた液体を、柄杓ですくって剣にかけた。

どうやら石鹸水らしい。


いやいやそんなおばあちゃんの知恵みたいなもので、

それで抜けてるんなら今まで苦労してた連中バカみたいだろ、

と見物人は苦笑いをしていたが。


抜けた。

頷いた少女は驚く見物人をよそに、聖剣を持って去っていった。


この搦め手で剣を入手した少女に対してはモヤモヤが残ったが、

手段が決められている訳でもなく抜いたのは事実である。


後日、剣を振り回し大活躍する少女の噂が各地に出回る。

聖剣としては、あの方法でも合格だったらしい。

なんてこったい。

おばあちゃんの知恵は馬鹿に出来ない。


十五名で抜いてた場合、かわりばんこに使うのだろうか。

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