照会 ――雛形が回る
端末が鳴る。
通知音は短い。業務音に沈む。
セレナは視線だけで件名を読む。
照会票。回付先:第参課。起票:第七課。
添付必須。回答期限:規定どおり。
規定どおり。今日も同じ。
照会票を開く。
本文は短い。欄が増える。参照範囲が固定される。
質問は一行。
「当該処理の判断根拠を提示せよ」
セレナは「回答作成」を押す。
画面が切り替わる。
回答書の雛形が立ち上がる。
最初に並ぶのは三つの区画。
モデル。観測。規定。
順序は固定。余白も固定。
固定だ。差分だけが残る。
モデル欄が先に光る。
入力値。参照優先順位。更新番号。
番号は短い。参照範囲が広い。
その下に算出条件が追記される。
一行。二行。
体裁が整う。
観測欄に移る。
観測ログ。抜粋。
抜粋は参照範囲の指定だ。
指定範囲のみが保存対象になる。
ログは淡々としている。
時刻。地点。変動幅。持続。回復。
基準値内。予測一致。根拠欄へ転記。
規定欄に移る。
条文番号。運用解釈。適用条件。
条文番号が優先される。
セレナは番号を置く。
引用枠が増える。
画面右端の「添付」欄が赤く点滅している。
必須。
セレナは添付を生成する。
モデル出力の控え。
観測ログの指定範囲。
規定抜粋。
抜粋量:最小。
参照制限欄が表示される。
第壱課。第参課。第七課。
閲覧は限定。複写は記録対象。転送は申請対象。
文末が統一されている。
確認欄を開く。
確認者:課長。
回付先:自動入力。
添付:確認済。
課長席へ回す。
回すことが手続きになる。
課長は画面を見て、短く言う。
「根拠は」
セレナは言い換えない。
「モデルが出しています」
「観測が一致しています」
「規定が接続しています」
課長は確認欄へ入力する。
承認。
画面の状態が切り替わる。
送信可能。
セレナは送信する。
送信ログが残る。
根拠が増える。添付が増える。書式が揃う。
画面に「送信済」が出る。
表示は淡い。効力は落ちない。
次の回覧で使われる。
その時、回答書はもう一度立ち上がる。
モデル。観測。規定。
順序は固定。
異議は後段へ回る。
セレナは端末を閉じる。
送信済は残る。回付ログに残る。
処理は終わっていない。だが、手続きは進んでいる。




