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境界監理局・第七課  作者: きなとろ
第五章 最適解という責務
47/54

照会 ――雛形が回る

端末が鳴る。

通知音は短い。業務音に沈む。


セレナは視線だけで件名を読む。

照会票。回付先:第参課。起票:第七課。

添付必須。回答期限:規定どおり。


規定どおり。今日も同じ。


照会票を開く。

本文は短い。欄が増える。参照範囲が固定される。


質問は一行。

「当該処理の判断根拠を提示せよ」


セレナは「回答作成」を押す。

画面が切り替わる。

回答書の雛形が立ち上がる。


最初に並ぶのは三つの区画。

モデル。観測。規定。

順序は固定。余白も固定。

固定だ。差分だけが残る。


モデル欄が先に光る。

入力値。参照優先順位。更新番号。

番号は短い。参照範囲が広い。


その下に算出条件が追記される。

一行。二行。

体裁が整う。


観測欄に移る。

観測ログ。抜粋。

抜粋は参照範囲の指定だ。

指定範囲のみが保存対象になる。


ログは淡々としている。

時刻。地点。変動幅。持続。回復。

基準値内。予測一致。根拠欄へ転記。


規定欄に移る。

条文番号。運用解釈。適用条件。

条文番号が優先される。


セレナは番号を置く。

引用枠が増える。


画面右端の「添付」欄が赤く点滅している。

必須。

セレナは添付を生成する。


モデル出力の控え。

観測ログの指定範囲。

規定抜粋。

抜粋量:最小。


参照制限欄が表示される。

第壱課。第参課。第七課。

閲覧は限定。複写は記録対象。転送は申請対象。

文末が統一されている。


確認欄を開く。

確認者:課長。

回付先:自動入力。

添付:確認済。


課長席へ回す。

回すことが手続きになる。


課長は画面を見て、短く言う。

「根拠は」


セレナは言い換えない。


「モデルが出しています」

「観測が一致しています」

「規定が接続しています」


課長は確認欄へ入力する。

承認。


画面の状態が切り替わる。

送信可能。


セレナは送信する。

送信ログが残る。


根拠が増える。添付が増える。書式が揃う。


画面に「送信済」が出る。

表示は淡い。効力は落ちない。


次の回覧で使われる。

その時、回答書はもう一度立ち上がる。

モデル。観測。規定。

順序は固定。

異議は後段へ回る。


セレナは端末を閉じる。

送信済は残る。回付ログに残る。


処理は終わっていない。だが、手続きは進んでいる。

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