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境界監理局・第七課  作者: きなとろ
境界事象の受理
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14/60

内部閲覧(第壱課)

第壱課の記録室は、朝でも暗い。


照明は稼働している。

照度は規定値を満たしている。

それでも、壁際の棚に落ちる影は消えない。


男は、入室記録を端末に残してから立ち止まった。

上着の内ポケットから識別票を取り出す。

端末にかざす。


認証音が一度鳴る。


一覧が表示される。


分類済。

処理済。

保留。


項目は多い。

更新日時は揃っている。


その中に、

一件だけ新しい時刻がある。


男は、その行を選択した。



記録番号:7-UC-031

分類:未分類(保留)

作成課:第七課


画面が切り替わる。


観測地点。

観測時刻。

体感異常。

直接被害:なし。


既存の書式だ。

結論も、既存の範囲に見える。


男はスクロールを続けた。


英雄登録:なし。

災厄判定:該当せず。

積極的介入:不要。


問題は見当たらない。

少なくとも、項目としては。


それでも、

男は読む速度を落とした。


数値の並び。

言葉の選び方。

報告文の長さ。


どれも、事実だけを残している。


次の項。


体感異常。


色が一段薄く見える。

音が、常に半拍遅れて聞こえる。


測定値なし。

計測機器の異常記録なし。


生活への影響:なし。


男は、一度画面から視線を外した。


記録室の棚には、

同じ厚みのファイルが並んでいる。


処理済。

完了。

分類確定。


それらの背表紙に、

未分類はない。


端末に視線を戻す。


補足記録。


世界の状態が変化している。


男の指が止まる。


その一文は、

他の行と同じ書式で表示されている。


強調も、警告もない。

ただ、そこにある。


男は画面を閉じなかった。

最初まで戻す。


観測地点A。

南方沿岸部。


観測地点B。

北方山間部。


距離。

気候。

生活圏。


一致点は少ない。


一致しているのは、

被害がないことだけだ。


そのため、

分類されていない。


男は端末の横に置かれた帳簿を開いた。


紙の音。

指に、わずかな抵抗。


該当ページ。


実行者欄。


空白。


帳簿上の空欄は、珍しくない。

だが、

空欄が理由になることもある。


男は帳簿を閉じ、

再び端末を見る。


追記(未承認)。


帳簿上の空欄が増えている。


閲覧ログを開く。


第七課。

第参課。


第壱課の閲覧記録は、少ない。


男は、文書を閉じた。


削除はしない。

分類もしない。


操作を追加する。


閲覧権限を、絞る。


理由は入力しない。

理由を書くと、

記録が動く。


男は端末を落とした。

画面が暗くなる。


記録室を出る前に、

一度だけ振り返る。


端末は沈黙している。

だが、

読んだ内容は残っている。


処理は終わっていない。

だが、

手続きは進んでいる。


男は扉を閉めた。


音は小さい。

反響もしない。


その音は、

帳簿には残らない。


だが、

次の指示を出すには十分だった。

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