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旅の醍醐味

仕事が忙しかったので少し空きましたが、今回は完全に遊び回です

一行は、アイネスを人間にする方法を求めて新たな目的地へと進路を定めた。

その名は──魔術最古の都と呼ばれる「エルムパレス」。


「しかしエルムパレス……そんな場所があるんだな」

ワイアットが肩をすくめながら呟く。


「今では架空の都市だと言われてきました。でも、あの古代の魔導書が出版されたのは紛れもない実在の証拠です」

エトラは両手で魔導書を抱え、慎重に言葉を選ぶように続けた。


かつて伝承だけに語られた幻の都。

そこには「どんな願いも叶う」と噂されるほどの叡智と秘術が眠るという。

アイネスを人間にする手がかりがあるとすれば──確かにここしかない。


ワイアットたちは互いに視線を交わし合い、足を止めることなく、未知の旅路を歩き出した。


「でもアイネス? どんな願いも叶うなら、皆で“永遠”が欲しくない?」

カレンが悪戯っぽく笑いながら問いかける。


アイネスは小さく首を振り、静かに答えた。

「いえ……永遠なんて、もう要りません。私はただ、人として──皆さんと同じ時間を過ごしたいだけですから」


その声音には、三百年の孤独を歩んだ者にしか出せない重みと、ようやく掴んだ小さな希望が宿っていた。


「アイネス……」

ミレイナはそっと彼女の手を取り、柔らかな笑みを浮かべる。

「はい、ではこの旅も楽しく行きましょう。それが、ワイアットの方針ですから」


長き時を越えてもなお続く旅路。

だが、その目的地は確かに、アイネスの胸に刻まれていた──

「人として、愛する仲間と生きる」

ただそれだけの、何より尊い願いを。



その名も『ギャンブリア王国』。


そこは“合法カジノ大国”として知られ、国全体が煌びやかな歓楽街で形成されていた。


夜でも光が消えることのないネオンの都、

街頭には華やかなドレスを纏った美女と、派手なスーツの紳士。

賑わう音楽、舞い飛ぶ紙幣、そして一攫千金の夢──!


「うおっ、なにここ!? 国の入り口からもう派手すぎだろ!」

ワイアットが思わず目を細める。


「見て見てワイアット〜♡ カジノ!ナイトショー!高級料理!これぞ楽園って感じ〜!」

カレンは両手を広げ、すでに目がキラキラしていた。


「人の欲が渦巻いていますね……。けれど、ここにも“エルムパレス”に関する情報があるのなら……」

アイネスはやや引き気味に周囲を見渡すが、その瞳には決意が宿っていた。


「そういう噂話こそ、カジノの裏で流れてるもんさ」

ワイアットはにやりと笑い、ポケットの中でコインを転がした。


──煌びやかな歓楽の都。

だが、その華やかさの裏には必ず“闇”がある。

エルムパレスへの手がかりは、きっとこの国の裏側に眠っているはずだった。


街へと一歩踏み込んだ瞬間──

空から豪華な花火が舞い、響き渡るアナウンスが冒険者たちを包み込む。


\ようこそ!夢と絶望の国、ギャンブリアへ!/

\本日大当たり確率アップ!初回のお客様は豪華ボーナス付き!/


通りの両脇では、露出度の高いバニーガール達が鈴のような声で客引きをしていた。

その光景に、ワイアットの瞳はまるで少年のように輝き──


「よし!1番デカいカジノ行くぞ!」


「我が君、顔がだらしないです」

「またよだれ垂れてるわよ」

「……でも、こういう街、緊張しますね」

「もう、皆さんったら……(くすっ)」


──と、ヒロイン達に一斉に突っ込まれる。



ギャンブリア王国最大の、カジノグランデ

しかし、そこで立ちはだかったのは屈強な警備員だった。

金色の制服に身を包み、鋭い眼光をこちらに向ける。


「悪いな旦那、ここは一見さんお断りなんでね。王家認可の会員証が必要だ」


一同、思わず足を止める。

煌びやかな光と音の国は、そう簡単には“夢”を見せてくれない。


翌朝、ギャンブリアの中央広場。

眩しいほどの光を浴びながら、小さな少年が大事そうにカジノチップを弄びながら歩いていた。

彼はカジノグランデの支配人の息子、エグゼル坊ちゃん。まだ九歳の小さな体だが、胸を張って歩く様子には妙な自信が漂っている。


──その時だった。


「ぬおっ!? おい、前見て歩けっつってんだろ!」


ガッ、と何かに足を引っかけて、エグゼルは派手に転んだ。

見上げると、そこには妙にヒゲの似合う謎の老人が立っている。


「うえぇぇん! なんだよぉ〜!」

「まったく最近のガキは……ブツブツ……」


老人は舌打ちしながら颯爽と立ち去ってしまった。


涙目のまま起き上がるエグゼル。

すると──


「キミ、大丈夫? どこかケガしてない?」


柔らかく響いた声に顔を上げれば、そこには若干露出の多いお姉さんモードのカレンがしゃがみ込んでいた。

彼女は心配そうに顔を覗き込み、そっと少年の頭を撫でる。


「ちょっとお姉ちゃんに見せてみて♡」

「う、うん……」


頬を赤らめてうなずくエグゼル。

彼の胸に、先ほどの嫌な出来事など一瞬で吹き飛んでしまうほどの“特別な感情”が芽生えていた。


──その様子を、路地の影からヒゲ老人が目を光らせて見ている。

ヒゲの下の口元がにやりと歪む。


(……よし。掛かったな。後は坊ちゃんの心を掴めば、VIPルートはこっちのもんだ)



カレンは宿泊している宿にエグゼルを誘導する

「じゃあちょっと、あそこの宿で見せてね♡

個室の方がいいかな〜」


「うん♡♡♡」


カレンの心の声

「あーあ、なにやってんだか。でも可愛い顔してるわね、この子……将来モテそう」


宿の個室


「ふふ、はい♡痛くない?膝のとこちょっと傷になってるかな?」


カレンがエグゼルの目の前にかがむ


「んっ……♡(お姉ちゃん……やさしい……いいにおい……♡)」


「ん?エグゼル君♡どこ見てるのかな〜?」

──

気づけば少年の脳内、完全に「お姉ちゃん=女神」認定。



十数分後⋯

「ねぇ、エグゼルくん♡ お願いがあるのぉ♡」


「うん……なに?」


「お姉ちゃんとそのお友達をね、VIPルームに通してもらいたいの♡

キミのお父さんに“特別ゲスト”としてお願いしてくれないかな?」


「うん……!お姉ちゃんの頼みなら……!」


「ありがと♡大好きよ♡」


こうして、1人の少年の初恋が終了した。



煌びやかなシャンデリアが吊るされたカジノグランデの応接室。

支配人は椅子に腰かけ、じっとワイアットたちを見据えていた。


「ふむ……エグゼルがここまで熱心に勧めるとは……。それにあの“件”もあったな」


「“件”?」


「昨日、エグゼルが倒れたところを君が助けたと……あれがよほど嬉しかったらしい」


ワイアットは思わず口の端を引きつらせた。

(……ってことになってるのか!? 完璧な連携じゃねぇか! カレンナイス!)


支配人は深くうなずき、厳しい顔を和らげる。

「わかった。君たちは“特別ゲスト”としてカジノグランデのVIPルームを自由に使ってくれたまえ!」


「ありがたく!」


ワイアットが勢いよく頭を下げると、背後でカレンが満足げにウィンク。

彼女の艶やかな微笑みに、支配人も思わず咳払いして視線を逸らす。


──こうして、カレンのお色気とワイアットの裏工作が見事に噛み合い、

作戦は“完全成功”を収めたのだった!



VIPルームに向かう道中

ワイアットはカレンに尋ねる

「で、どうだったよ?エグゼル君9才は?」


カレンは満足気に答える、

「うん♡エグゼル君可愛かった〜♡恥ずかしがって小声で“お姉ちゃん…好き”とか言っちゃってた♡」


その会話を聞いたミレイナは呆れながらも申し訳なさそうに

「可哀想に…」


煌びやかな光と音が渦巻くスロットゾーン。

次々と客が一喜一憂しながらチップを飲まれていく──その中に、銀髪の女騎士がひとり。


「……このレバーを引けばいいのですね」


ミレイナは席に座り、レバーをカチリと倒す。

瞬間、リールが高速で回転を始めるが──彼女の眼は全てを捉えていた。


「……揃えるだけでいいんですか?」


トン、と軽くボタンを叩く。

──カシャン。

三列の“7”が揃い、派手な大音響と光が炸裂した。


観客「な、なんだと!? 一発でジャックポットだと!?」

スタッフ「ま、まぐれだ! 次を回せ!」


しかし次の回転も、また次の回転も──

彼女は目でリールの動きを追い、完璧なタイミングで止めていく。


「……揃いました」


──カシャン。

再び三列ストレート。

誰もが信じられないという表情で見守る中、チップが雪崩のように吐き出された。


ミレイナは静かに息を整え、淡々と呟く。


ワイアットも驚愕する

「おいおいミレイナ、マジで目押しで全部揃えてんのかよ……!?」


「ギャンブルなど不真面目だと思っていましたが……“見切れる”以上は、ただの単純作業ですねですね」


観客は総立ちになり、もはやスロットコーナーは彼女の独壇場となった。


煌びやかなカジノホールの中央。

男たちが目を光らせる中、一際派手なドレスで登場したのは赤髪の少女──カレン。

隣には支配人の息子、すっかり飼い慣らされたエグゼル坊ちゃんの姿があった。


「ねぇ〜♡エグゼル君♡」

甘い声とともに腰をかがめ、カレンは小さな少年の耳元に囁く。


「お姉ちゃん、今の人の手札……気になっちゃうなぁ♡」


エグゼルの目がきらりと光る。

「うん! ちょっと見てくるね!」


──まさかの「カンニング小悪魔連携作戦」発動。


数分後、テーブルに戻ってきたエグゼルが、見事に情報を伝え終えると同時に──

カレンは一切迷わずカードを切り、華麗に勝利を収める。


「勝者、カレン様!」

ディーラーの声が響き、観客から驚きと羨望のため息が漏れた。


カレンは余裕の笑みで髪を払うと、隣のエグゼルを振り返る。

「ふふ♡ありがと〜♡ 今日もエグゼル君、頼りになるぅ〜♡」


耳まで真っ赤に染め上げられた少年は、しどろもどろに呟く。

「……あぅ……おねえちゃん、好き……」


その言葉を聞いたカレンは、悪戯っぽく笑って──

「はい♡ ご褒美♡」

と、ちゅっと頬に口づけを落とした。


エグゼルは顔を真っ赤にして固まり、観客席からは喝采と嫉妬の声が同時に上がる。


こうして、カレンは“小悪魔お姉ちゃん戦法”でまたもや大勝利を掴んだのだった。



煌びやかなシャンデリアが光るVIPルーム。

そこには高額を動かす貴族や大商人、軍の高官たちが集い、グラスを傾けていた。


その中を、白銀の髪を揺らして現れたアイネス。

人の域を越えた美貌に、場の空気が一瞬止まる。


「……まぁ……」

「お、お嬢さん、ぜひこちらへ……!」

普段は強面の男たちですら、目を奪われて立ち上がる。


アイネスは微笑み、何気なく腰を下ろすと、薄い声で問いかけた。

「この国を越えた先に……“エルムパレス”という幻の都市があると、聞いたことはありませんか?」


一瞬の沈黙の後、酔いに任せた貴族のひとりが口を開く。

「エルムパレスだと? はは、夢物語さ……だが、地図なら扱っていると聞いたな。どこかの町の古物屋だ」


「まぁ……ありがとうございます」

アイネスは優雅に微笑み、グラスをそっと置いた。


その瞬間、周囲の男たちはまるで報酬を与えられたかのように恍惚とした顔を浮かべた。

誰もが彼女にもっと話しかけたいと願い、己の知る限りの情報を差し出してしまう。


こうして、アイネスは一切の博打をせずに──

“エルムパレス”へ繋がる新たな情報を引き出すことに成功したのであった。



そして

最も高額な賭けが動くテーブル。客たちが群がる中──そこに現れたのは、黒髪を艶やかに揺らす美少女。

大胆に胸元の開いたドレスは、彼女のスタイルの良さを隠すことなく強調していた。


「おっと……これはまた目を引くカップルのご登場ですね」

ディーラーが笑みを浮かべる。


ワイアットはにやりと笑って肩を抱く。

「今日はこの子の誕生日なんでね、勝って祝ってやりたい」


耳元でエトラが小さく囁く。

「……嘘、ですよね?」

「嘘だけど、勝ちは本気で取りに行くぞ」


──一点賭け、13番・黒。

場に緊張が走る。


「ボール、回転!」

ルーレットが唸りを上げ、白い鉄球が跳ね回る。

その瞬間、エトラは胸元に手を添え、瞳を閉じた。


(……《磁律操引》──13、来てください)


わずかに軌道が揺らぎ、弾かれた鉄球は別のポケットへと吸い寄せられる……かに見えた次の瞬間、力に引き戻されるように──


コトン、と「13・黒」に落ちた。


「っ……!?」

ざわつく客席。

「一発で!?」「インチキじゃ……いや、美人だから許すか」


ディーラーは冷や汗をかきながら、必死に笑顔を作った。

「……お、おめでとうございます! 配当、24倍!」


ワイアットは勝ち誇ったようにチップをかき集め、隣でエトラは頬を染めつつ、そっと胸元の手を下ろした。

「……こ、こんなの……反則です……」

「はは、これが俺たちの勝ち方だ!」


──スタッフは頭を抱えたが、チップの山だけは正真正銘、彼らのものだった。


ルーレットの勝利で積み上げられたチップの山を前に、ワイアットは勝ち誇ったように高笑いした。

「これで数ヶ月は安泰だな!」


隣でぴょんと飛び跳ねるカレン。

「今日はホテルのスイートルームだね!」


──その夜。

煌びやかなシャンデリアの光が降り注ぐ豪奢なスイートルーム。

皆がくつろぐ中、大画面に映し出されるのは──


【記録映像:カレンお姉ちゃんに完全に転がされる9歳の支配人の息子・エグゼル坊ちゃん】


「ねぇ〜♡エグゼル君♡」

「うん……♡」

(ほっぺにチュッ♡)


──小悪魔スマイル全開のカレンお姉ちゃんに、坊ちゃんは見事にノックアウト。


「お、おねえちゃん……す、すき……♡」

「ふふ♡ありがと〜♡」


その姿に、部屋中は爆笑とため息に包まれた。


ワイアットはワイングラスを傾けながら呟く。

「……最高の相棒だな、うちの小悪魔は」


「う〜ん♡エグゼル君可愛かった♡ また会いたいな〜♡」

髪くるくるしながら余裕の笑み


ミレイナは手で顔を覆って

「……あの少年、もう普通の恋は出来ないでしょう……」

大きく溜息


「あんな小さな男の子が……//////!!!」

顔面真っ赤、もはや火を吹きそうなエトラ


アイネス「ふふ──やっぱり私達の旅はこうですよね……」



──ふざけて、イカサマをして、遊びと欲望に彩られた一日は幕を下ろし、彼らは次の目的地へと歩みを進めるのだった。




ちょっと初期原稿のネタのストックが少なくなってきたので次から新規で作る事が増える為、若干投稿遅れるかもしれません

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