第2話 どこかで見たような話。
カーテンを締切っているはずなのに眩しい。
寝起きのまだあたまがぼーっとしてる時に、
太陽の光がサンサンと降り注ぐ感覚は久しぶりだった。
お母さんがあけてくれたのかな...?
いや、部屋には鍵をかけていたはず。
じゃあ、どうして...
あたたかい太陽の光の心地良さに、
一瞬二度寝しそうになる。
ふと、誰かに手を握られていることに気付いた。
柔らかくてあたたかい手。
誰だろう、と思って目を開けると全く知らない男の子が
この世の幸せを全て集めたような優しい笑顔でわたしをみていた。
「お母さん、お父さん、エリィ起きたよ!」
男の子が言う。
エリィ...?お母さん?お父さん?
この子は誰?
わたしは絵里だ。
エリィというあだ名で呼ばれたことは今まで1度もない。
パタパタと2人分の足音が聞こえて、まだ若そうな2人の男女が、男の子とおなじ幸せと優しさが滲み出ているような笑顔でわたしを見つめる。
「起きたの〜可愛いなぁ!パパが抱っこしましょうね〜」
「あ!ずるい!ぼくもだっこしたい!」
「あらあら、レイもあなたも落ち着いて」
目の前で繰り広げられる光景の全部が意味わかんない。
男の子も、お母さん、お父さんと呼ばれている男女も
髪が銀色で耳が長く、ツンと尖っていた。
木の香り。差し込む陽の光。
私を見つめる6つの優しい目。
「ここはどこ?」「あなたたちは誰?」と聞きたくて声を出すけれど、「あー」だとか「うー」とか赤ちゃんのような声しか出ない。
だけどその度に3人ともものすごく喜び、可愛い可愛いと撫でられた。
赤ちゃん...?
わたしは転生したのだろうか。
だとしたら、ここは異世界で
この人達はエルフで、わたしはエルフの子どもだ。
耳が長く銀髪だし、直感でそう思った。
アニメや小説で見ていたような、
どこかで見たことあるような空想の話が、
こんなことが、現実に起こるだなんて思ってもいなかった。
でも夢なんかじゃない。
わたしは確かに、赤ちゃんになってしまっていた。
前世の記憶を抱えたまま――見知らぬ家族のもとで、
第二の人生が始まってしまったのだ。