宰相とのディナー
べラルド卿に連れて行かれたのは王都でも人気のレストランだった。
目抜き通りにあるそのレストランは予約を取るのも大変だと聞いている。
たしか普通に予約しても三ヶ月待ちとか。
それなのに、である。
煌びやかなシャンデリアに照らされた店内は光輝いている。
べラルド卿にエスコートされた先はお店の中でも主に上客が案内される席なのだろう。
人の視線が気にならないように観葉植物が程よく配置されているが、視線を上げれば見通しもよく、ピカピカに磨き上げられた店の窓の向こうにはイルミネーションが見えた。
常であれば多くの人のざわめきで満たされているであろう店内も、しかし今日は程よい生演奏の音楽が聞こえてくるだけで人の声はしない。
まさか……貸し切り?
内心かなり驚いたもののそんなことをあえて確認するほど野暮ではない。
食事はすでに予約してあったのか、特にメニューを見ることもなくオードブルがサーブされた。
「あの……」
なんと声をかけたものか悩みつつも話しかければ、べラルド卿が真っ直ぐにこちらを見つめてくる。
「急なお誘いですみません」
「いえ。それは大丈夫ですけれど……」
「せっかくなので食事を楽しみましょう。冷めないうちにどうぞ」
そう言われてしまっては断ることもはばかられ、べラルド卿の思惑がわからないことが気になりつつも食べ進める。
「……美味しい!」
「口にあったのなら良かったです」
もちろんべラルド公爵家で出される食事も専属のシェフが作ってくれていることもあってとても美味しい。
しかしここの料理はそれとはまた違った美味しさがあった。
べラルド家での食事は、それが卿の好みなのかレグルスくんの好みなのかはわからないけれど洗練されつつもどことなく家庭的な味だ。
対してこのレストランで出される食事はプロの矜持が感じられるような手の込んだ品ばかり。
これは……人気なのも頷けるよね。
元々日本で美食家だった訳ではないし、そもそもが食事にそれほどお金がかけられるほど裕福だった訳でもない。
そんな私でもわかるくらいなんだからこのレストランの凄さが理解できるというものだ。
そんな感じに思わず食事に舌鼓打っていたのだけど、途中でハタッと気づいた。
いやいや、まったりと食事を楽しんでいる場合ではないよね?
そう思ってべラルド卿を見ればサファイヤブルーの瞳がこちらを見つめている。
「あの、今日は何かお話があったのでは?」
コースの最後であろうデザートと紅茶が出てきたところで私は思い切って問いかけた。
このままではただ食事を一緒に楽しんだだけで終わってしまうと思ったからだ。
「そうですね……」
そう呟いたべラルド卿がディナージャケットの内ポケットから一通の封筒を取り出す。
見間違えるわけがない。
あれは私がべラルド卿へ宛てた手紙。
「この手紙のことについて、お話ししても?」
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